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日帝強制動員被害者支援財団 翻訳叢書  6   口述記録集

聞こえてる？ 
日本軍「慰安婦」１２人の少女の物語 

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初版 1刷 発行

韓国語版編著
韓国語版発行

日本語版発行人
日本語版発行処

翻訳

最終監修

発刊登録番号 

デザイン・編集 

2020年 12月 21日
2020年 12月 21日

対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会
2013年 2月 28日

金容德

日帝強制動員被害者支援財団
ソウル特別市鐘路区鐘路ギル42利馬ビル6階
http://www.ilje.or.kr

日本語翻訳協力委員会
口述・附録: 李洋秀, 図表: 竹内康人

翻訳にあたり、訂正した個所がある。訳注は〔 　〕で示した。

玄明喆(韓日関係史学会 会長)

11-B553448-000032-01

Design21

本書の全部または一部を無断で複写複製(コピー)することは、
著作権法上での例外を除き、禁じられています。

凡例

・意味を把握しにくい地方語と口述者に特有な表現は、[　 ]に標準語を記載した。 
・日本語、漢字、動作の描写、編集者の説明は、(　 )の中に記載した。 
・外国語、対話や引用文は、「　　」の中に記載した。 
・口述者の個人情報、粗野な語は〇〇で表示した。 
・動員経路地図で色が塗られた部分は、アジア太平洋戦争当時、日本が占領して

いた最大領域を示す。

・翻訳にあたり、表題では慰安婦の語を「　｣で括ったが、本文中では「　」を略

した。

※ 訳注は〔　〕で示した。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

004 

目次

発刊の辞(日本語版) ··················································································································006

発刊の辞(韓国語版) ···················································································································008

解題 ···················································································································································011

日本軍慰安婦の定義 ·················································································································020

主な用語の説明 ···························································································································026

日本軍占領地全域の慰安所分布図 ····················································································028

日本軍｢慰安婦｣被害者 口述資料｜031

姜道牙    想像したって心の病になるだけ、水に流してさっぱりだ。 ················032

A○○      いっそ死んだ方が楽だった。 ············································································062

B○○      お前らだけで戦争して来たのか、お前らのせいで大病にかかった ······082

C○○      哀れさは言い尽くせない、利用されただけだ。 ·······································120

D○○      日本人のせいで行ったんだ。 ············································································138
E○○      母が祈ってくれたおかげで、死なずに生きて帰れた。 ·························158

F○○      誰にも訴えられず、泣き通した。 ····································································180

G○○     就職して、工場に行くものと思っていた。 ··················································204

日本軍「慰安婦」 口述記録集

005 

H○○      こんな話、誰にもせずに死のうと思った。 ·················································230

I ○○       再び女に生まれて、恨を晴らしたい。 ··························································268

J ○○      姉ちゃんが工場で働いて、牛買ってあげるね。 ·······································296

K○○      死んだも同然だ。 ····································································································330

日本軍慰安婦被害女性人権運動家口述資料｜355

金文淑 会長  ハルモニの名誉を回復させ、私たち女性が戦争を 
                          防がなくてはなりません ·············································································357

付録｜383

付録1 日本軍慰安婦、委員会被害認定の現状・検討結果 ·····································385

付録2 日本軍慰安婦被害者に対する韓国政府の支援の現状·······························395

付録3 日本軍慰安婦関係年表 ·····························································································398

付録4 日本軍隊慰安婦関連、委員会所蔵資料目録 ···················································406

聞こえてる？ 12人の少女の物語

006 

財団法人日帝強制動員被害者支援財団は、国

内外から多くのご関心とご声援をいただき、今
年も5冊の強制動員関連の本を翻訳・発行する
ことになりました。2019年に引き続き、2年目の

今年も進めている出版事業は、日本現地の「強
制動員真相究明ネットワーク-日本語翻訳協力委
員会」の関係者の方々と国内関連分野の研究者
の方々の惜しみないご尽力、愛情によって編み

出された成果だと言えるでしょう。

2020年に発行される5冊の本は、旧委員会(日帝強占下強制動員被害真

相糾明委員会・対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等
支援委員会)から出された強制動員被害調査報告書と口述記録集、そして
遺物図録の日本語版です。日本語訳は去年から本財団と協力してきた日本
現地の「日本語翻訳協力委員会」の関係者の方々のご協力を得て作業が行
われ、以降国内学界の研究グループの方々の監修で貴重な原稿が整いまし
た。日本と韓国で長い間活動して来られた研究者の方々、活動家、翻訳家
の方々の惜しみないご尽力に心より感謝申し上げます。

今回、発行される旧委員会報告書2冊は、中西南太平洋地域強制動員被

害真相調査報告書である「南洋群島への朝鮮人労務者強制動員実態調査 

1939∼1941」(2009)と長崎所在の海底炭鉱被害実態調査報告書である「端
島炭鉱での強制動員朝鮮人死亡者実態調査」(2012)です。また、広島・長

発刊の辞(日本語版) 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

007 

崎地域の強制動員と原爆被害者の口述を載せた「我が身に刻まれた八月」
(2008)と旧委員会の唯一の日本軍「慰安婦」の口述記録集である「聞こえ
てる？ 日本軍「慰安婦」１２人の少女の物語」(2013)の日本語版も長い議
論と陣痛の末、発行の運びとなりました。最後に、日本の北海道地域の強
制動員被害者の寄贈遺物と資料などを載せた「写真で見る強制動員の話
-日本・北海道編」(2009)の発行を通じて、財団が委託・運営している「国
立日帝強制動員歴史館」(釜山広域市南区所在)の所蔵資料の一部を皆さん
にご紹介できることは一層有意なことだと思います。

旧委員会の解散後中断していた事業が、このように財団を通じて事業

として引き継がれ、そのうえ、強制動員分野の国内外の研究に多少なりと
も役立つことができれば、より一層嬉しいことです。財団のこれらの事業
に今後も多くのご関心とご声援をお願い申し上げるとともに、財団として
も、今後、強制動員の分野の様々な研究報告書や学術資料、テキストの編

集に努力を惜しまないことを約束いたします。また、強制動員関連の研究
成果が、韓国と日本を越えてアジア全域とアメリカ、欧州など世界中に拡
大できるよう、引き続き、ご関心とご支援をお願いいたします。

ありがとうございます。

2020年12月21日

財団法人 日帝強制動員被害者支援財団

理事長  金 容 德 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

008 

今回、国外強制動員犠牲者等支援委員会(以

下、「わが委員会」)では、日本軍慰安婦として
強制動員された後、劇的に生還された被害者ハ
ルモニ(韓国語で「おばあさん」の意)たち12名

と、関連市民団体の活動家1名の生々しい証言を

載せた口述記録集、『聞こえてる？日本軍｢慰安
婦｣　12人の少女の物語』を発刊することとなり
ました。

わが委員会は2004年11月の委員会発足以来、日帝時代の軍人・軍属

等、様々な分野に強制動員された被害者たちの証言を収録した口述記録
集を14冊発行しました。しかし、日本軍慰安婦被害者ハルモニたちの生
々しい声を、口述記録集としてまとめたのは、今回が初めてです。日本軍
慰安婦に関する韓国政府の公式的な口述記録集としても、初めてといえま
す。

日本軍慰安婦問題、すなわち「戦時日本軍性奴隷」問題に対しては、

1993年に日本の河野官房長官が、日本軍当局の主導で軍慰安所が設置さ

れ、慰安婦が強圧的に動員されたという事実を認め、これに対するお詫
びの内容の談話を発表したことがあります。その後日本政府は何度も、こ
の談話が政府の公式的な立場であると明らかにしてきました。ところが最
近、日本では上記「河野談話」を否認する一部の政治家が現われ、日本軍
慰安婦が強制連行された証拠はないと言います。さらに、慰安婦の強制動
員について、「韓国に証拠を出してほしい」とまで、極端な発言をするケ

発刊の辞(韓国語版)

日本軍「慰安婦」 口述記録集

009 

ースもあります。

ご存じのように、私たちがいう「強制動員」の「強制性」というのは、必

ずしも被害者の体をつかまえて縛り上げ、無理やり連行する行為のみを意
味するのではありません。その他に脅迫や誘引、欺罔等、違法な方法で被
害者を募集し、常に監視または監禁状態を維持しながら働かせ、被害者か

ら仕事の選択と拒否する自由を剥奪する状態を含むものです。その意味か
らも本書は、日本軍慰安婦強制動員に関する直接的な証拠と言えるでしょ
う。

本書で証言してくれた12名の被害者ハルモニたちは皆、幼い少女の歳で

騙され、またはどこに連れて行かれるのかさえ判らないまま、強制連行さ
れた人たちです。当時、幼かった少女たちは、中国、満州、東南アジアをは

じめ、太平洋の名の知らない島まで連れていかれ、あらゆる苦難を強いら

れました。この機会にわが委員会は、ハルモニたちに強いられた日本軍慰
安婦としての具体的な被害の実像を、漏らさず込めて整理しようと努力し
ました。

情報化時代の昨今、日本軍慰安婦被害者に関する知識や情報を断片的

に接することは、それほど難しくないでしょう。書店の店先やインターネッ

トを検索すれば、日本軍慰安婦に関する様々な書籍と映像物を見つけられ

ます。今も毎週水曜日、日本大使館前で日本政府の態度に抗議する、慰安
婦被害者ハルモニたちの「水曜集会」が開かれています。また韓国と日本
のマスコミでは、随時に日本軍慰安婦に関する多様なニュースを報道して
います。

当然のことですがわが委員会では当初から、日本軍慰安婦問題の解決が

最も重大な課題の一つとして認識し、取り組んできました。日本軍慰安婦
強制動員の規模、実態に関して真相を究明し、少なくない被害事例を調査

しながら、被害者ハルモニたちの具体的な証言にも耳を傾けてきました。

その結果、日本軍慰安婦の強制動員とその実態の概要については、3件の

聞こえてる？ 12人の少女の物語

010 

真相調査報告書を発行しています。

しかし残念なことに、被害者ハルモニたちの貴重な証言が、口述記録集

としてはまとめられていなかったのです。しかし今、ようやく証言を集めて

本書を発行することになりました。遅過ぎた感はありますが、初めて政府

レベルで日本軍慰安婦被害者の口述記録が公開されたという点に、本書が

発行された意義があります。しかも、日本軍慰安婦問題の解決をめぐる韓

日の関係がいつになく厳しいこの時期に、今回の発行の持つ意味はなおさ
ら大きいといえるでしょう。

思い出すことさえ苦しい悲惨な経験を思い起こし、生々しく証言してく

ださった12名の被害者ハルモニたちに、心から感謝を申し上げます。ハル
モニたちの勇気ある証言によって、被害者個人の苦痛として消え去られて

しまう真実の記憶を、歴史の証拠として永遠に残すことができました。ま

た、資料集の発行に励んできたわが委員会のスタッフにも感謝します。

今回の資料集を契機に、日本軍慰安婦の強制動員について広く知ってい

ただくとともに、被害者自身の苦痛が少しでも安らぐことを願います。最
後に、軍隊慰安婦の強制動員を認めて真なる謝罪と損害賠償を促す国際
社会の要請に従って、日本政府が人類の普遍的な良心と正義をもって誠実
に応える日が、一日も早く訪れることを願うものです。

対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会

委員長 

朴 仁 煥

日本軍「慰安婦」 口述記録集

011 

本の構成

本書は、日本軍によって日本軍慰安婦生活を強いられた被害者12人の話

の口述資料を収録したものである。 

被害者については、比較的鮮明な記憶を持ち、本人の被害内容を直接

話すことができるハルモニたちを選定した。被害ハルモニ12人のうち11人
は、本委員会に本人か家族が直接被害を申告した方々である。11人の被害
者は皆2005年に委員会に被害を申告し、被害事実を初めて話した。口述
聴取は2005年∼2006年の間に実施した。 

残る1人の被害者は2012年になって自分の被害事実を話した。2012年は

委員会の強制動員被害申告の受付を締め切った後だったので、この被害者
は〔韓国政府〕女性家族部に被害者登録を申請した。女性家族部はわが委
員会に被害調査を依頼し、委員会の調査を経て2012年、日本軍慰安婦被
害者に登録された。90歳の高齢にも関わらず、自分の被害事実を詳しく口
述したので、収録対象者に選定した。

編集方針

本書では、被害者の個人情報を除き、動員当時から帰国までの状況、帰

国してからの生活苦と身体・精神的後遺症等、「日本軍慰安婦被害」に関
する内容を伝えることにとした。そのため、口述者の年齢(出生年度)以外の

解題

聞こえてる？ 12人の少女の物語

012 

身元に関する詳しい事項は公開しないという原則の下で編集した。真相調
査報告書『インドネシア動員女性名簿に関する真相調査』の発刊の際、す
でに実名公開を承諾した姜道牙(カンドア)ハルモニを除き、他の口述者の
名前はアルファベットにした。被害者が動員される際の居住地及び動員地
域は市・道までを記載した。 

口述は短くても一時間半、長いときには数回にわたる5時間以上のもの

であり、分量はとても長い。面談現場の雰囲気によって同じ内容を繰り返

したり、口述の時系列が順序通りにならないことも多い。

こういう口述資料を時系列に編集し、反復する内容は削除し、読み易く

して、適度な分量に編集した。口述者の地方語や特有の表現はそのまま伝
えようとしたが、その意味がわかりにくい表現については［　］の中に説明

を入れた。面談当時の雰囲気を表現するために、口述者と面談者の感情状
態については、（　　）の中に説明を記した。声を文字にして伝えること
になったが、面談現場の雰囲気をそのまま伝えるには限界がある。それが
残念である。 

口述資料の紹介

• 委員会に申告した被害者11名の口述

姜道牙(カンドア)ハルモニの口述資料は『インドネシア動員女性名簿に

関する真相調査』(2009)に全体が収録されている。この口述から時系列
に、主な内容を整えて収録した。姜道牙ハルモニは「長女だった私が、金
を稼いで、家計の助けにならないと」という思いから、見知らぬ募集係に
ついて出かけた。しかし、台湾やインドネシアのバリクパパンで日本軍慰
安婦の生活を強いられた。業者は「家に金を送ってあげる」と言っていた
が、家族は金を受け取ってないという。初めて被害を受けたときの衝撃が

とても大きかったせいで、台湾での生活はあまり覚えていない。インドネ

日本軍「慰安婦」 口述記録集

013 

シアでの生活については、現地の言葉まで憶えていて、たくさん話をして

くれた。ハルモニは終戦直前にバリクパパンで臨時看護婦に編入された特

別な経験についても、詳しく話した。 

A○○ハルモニは、この資料集の被害者のうち、一番幼い歳で動員され

た被害者だ。ハルモニは14歳で就業詐欺によって動員され、中国の延吉で
2年間日本軍慰安婦生活をした。歳が幼くて「客を受け入れられない」と
いう理由で、ひどく殴られたことが一番辛かったとみられ、それを何回も
繰り返して陳述した。「満州の話をするだけで息が詰まる」と言って、話し
ているうちに思い出すのがつらい様子が、何度も登場する。両親に会いた
いという一念で男装をして、二ヶ月間歩いて帰国した経験も、読む者の心
を痛くさせる。 

B○○ハルモニは「処女供出」を避けようと親戚の家に逃げたのに、親

戚の家近くの道端で見知らぬ男につかまり、ハルビンに動員された。ハル

ビンの寒い天気と荒れた環境に、特に苦労したという。乱暴な軍人に大声
で抵抗した経験、休日に「勤労奉仕」という名目で軍人たちの衣服を繕う

仕事の経験と共に、日本軍慰安婦に動員された彼女たちの生活や環境につ
いて詳細に話してくれた。 

C○○ハルモニも、就業詐欺で動員された。動員地まで行く途中に買っ

て貰った服や食事代が、後に全部、借金になった。一緒に生活した同僚
が薬を飲んで自殺した話をしながら、「あの時、むしろ死んだ方が楽だっ
た」と回想した。人影のないティモール島の浜辺で泣いた体験、親しい友
人が爆撃で死亡して心を痛めた経験を話しながら、ハルモニは日本軍に

「利用だけされた」と言う。 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

014 

Ｄ○○ハルモニも「お金を稼げる」という言葉に騙され、シンガポール

やミャンマーに動員された。先に船に乗った友だちの爆撃での死亡、妊娠
中絶の手術を受けた同僚、子どもを出産した同僚、麻薬中毒になった同僚
など、不幸だった同僚に対する記憶が特に多い。ハルモニの話は日本軍慰
安婦被害者が経験した色々な苦痛を伝えてくれる。自分も病気にかかっ
て、一時苦しんだが、「病気にかかったおかげで軍人を相手にしなくて良
かった」と回想した。 

Ｅ○○ハルモニは「日本に行くと良いことがある」という罠に騙され、パ

ラオやラバウルへ動員された。ラバウルで妊娠すると、「前線では出産で
きない」と言われてパラオに送られた。出産前まで掃除や洗濯等の雑役を
しながら、パラオで赤ちゃんを生んだ。帰国する時、幼児と一緒だったの
で母親がびっくりしたという。ハルモニは「母親が毎日お水を神様に上げ
ながら祈った」おかげで、自分が戦場から生きて戻れたと話してくれた。 

Ｆ○○ハルモニは涙とため息を交えて、体や心に残った傷を聞かせてく

れた。中国の漢口(現在の武漢)や海南島に動員されたハルモニは、帰国し
てから家族に会うにも苦労した。中国では日本軍慰安婦生活によるひどい
腹痛や下血症状で、病院の治療を受けなければならなかった。治療後もず
っと腹痛に苦しみ、帰国後は卵巣にこぶができて、大きな手術をした。苦
労の末に故郷に帰ってきたが、「慰安婦に動員された」という噂が出て、
結婚ができず、独りで寂しく暮すしかなかった。 

Ｇ○○ハルモニは職業紹介所で騙され、インドネシアのスマトラ島のパ

レンバンに動員された。インドネシアに到着すると移動費用と服などが全

部借金となった。生活費を前借りすると、さらに負債がたまったという。ハ

日本軍「慰安婦」 口述記録集

015 

ルモニは終戦後、シンガポールの朝鮮人臨時収容所で一ヶ月間生活した
経験も詳しく聞かせてくれた。 

Ｈ○○ハルモニは少し特異な被害事例である。最初に動員された日本の

長崎県の工場では、働きながら日にちを決めて軍人の相手をさせられ、満
州に移動してからは、工場の仕事はせずに軍人だけ相手にしたという。日
本と満州での生活についても詳細に話してくれたし、病気に掛って手術を
受けた記憶、軍人たちに暴行された記憶も聞かせてくれた。 

Ｉ○○ハルモニは家にやってきた見知らぬ者に無理やり連行された。連

れられて行く自分を引き留める母親の様子、船に乗りながら母親を思って
泣いた事などを切なく陳述した。台湾で5年間苦労をし、顔がひどく傷つ
いて帰国したので、母親が自分を見ても判らなかったという。他の女性の
ように結婚して子どもを産み、幸せに暮らせなかったことが恨（ハン）とな

り、「再び女として生まれて、恨を解きたい」というハルモニの話は、被害

の数えられない大きさを感じさせる。

Ｊ○○ハルモニは両親が亡くなり、幼い弟と親戚の家に身を寄せに行く

途中、お金を稼げると誘う男性たちに道端で会った。弟に「お姉ちゃんが
稼いで牛を買ってあげるから」と言うので、男たちについて行ったところ、

日本軍慰安婦に動員された。幼い弟を残して行く場面は、特に胸が痛い。

頻繁な爆撃により、命の脅威を感じる戦場で、ただ弟に会いに帰る一念で
生き残って帰国した。ハルモニは自分が動員された場所の正確な地名を覚
えていないが、陳述内容から見て、南太平洋の小さな島「ナウル」(ナウル
共和国)で日本軍慰安婦生活をしたと推定される。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

016 

• 女性家族部調査依頼被害者１名の口述 

Ｋ○○ハルモニは委員会が2005年から2008年にかけて3回にわたり申

告を受付けたが、被害申告をしなかった。長い間沈黙していたが、2012年
になってから女性家族部に被害者登録を申し込んだ。本書に収録したＫ○
○ハルモニの口述は、委員会が女性家族部の調査依頼を受けて、ハルモ
ニを訪ねた時に、打ち明けた話だ。ハルモニはいとこと共に海岸で貝を取

っていたが、拉致されて日本軍慰安婦に動員された。満州で軍人に反抗し
たが、殴られて、一ヶ月間入院するほどの大けがをした。一緒にいたいと
こは終戦の頃、いっそう乱暴になった軍人に銃で撃たれて死亡するという
おぞましい出来事もあった。帰国した後は周りの視線が怖くて、故郷を離
れ、黙って暮した。2012年になって打ち明けたハルモニの話は、隠し通し
た歳月ほどに切ないものだった。 

• 日本軍慰安婦被害女性人権運動の歴史‐金文淑会長口述

1990年代から日本軍慰安婦被害女性のために活発な活動をしてきた「挺

身隊問題対策釜山協議会」金文淑会長の口述である。金文淑会長は日本軍
慰安婦被害の申告用電話を開通し、被害生存者を捜し出し、政府支援の政策
樹立に大きな役割を果たし、日本政府を相手にした被害ハルモニたちの裁判
をも支援した。2004年からは「慰安婦ハルモニのための民族と女性歴史館」
を運営しながら日本軍慰安婦の被害実状を知らせ、歴史教育に先駆けてい

る。金文淑会長の口述は日本軍慰安婦の問題解決のための運動の流れを明ら
かにしながら、これからの課題を考えることのできる内容となっている。

被害者12人が性奴隷の生活を強いられた地域を地図に表すと次の図の

ようになる。動員地は日本、中国、東南アジア、南太平洋に至るまで広範
囲にわたる。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

017 

• 口述記録集収録、被害者12人が動員された地域

出版経緯

2005～2006年、委員会に申告した被害者11人の口述聴取を実施した

時、被害者本人から口述資料を作成することと、口述資料の利用に対する
同意をもらった。口述資料集の発刊計画が立てられた2012年後半、陳述し
てから6～7年の時間が過ぎていたので、口述記録集の出版趣旨を伝えな
がら、出版同意をもらうため、もう一度ハルモニたちを伺った。 

D〇〇、K〇〇ハルモニはご本人が現在も生存されていて、意志疎通が

可能な健康状態だったので、直接出版の趣旨を説明して出版同意をもらえ
た。 A〇〇、B〇〇、C〇〇、E〇〇の4人のハルモニは亡くなっていた。4人
の場合は、被害内容を知っている遺族がいて、代わりに彼らに出版趣旨を
話し、同意をもらえた。この６人の口述資料の終わりには2012年末に本人

聞こえてる？ 12人の少女の物語

018 

や家族を再び訪ねたときの感想を短く書いた。 

F〇〇、G〇〇、H〇〇、I〇〇、J〇〇ハルモニは、被害内容を本人以外

は知らない方たちである。委員会の被害申告の当時、家族や知り合いの中
で、ただの一人も被害事実を知っている人がいなかった。こういう場合、
被害者は被害調査の過程で、自分の被害事実が家族や回りの人たちに知ら
れるのを、とても警戒し、恐れていた。調査も、自宅を訪問できず、本人が
直接、委員会を訪ねた際に行ったり、食堂の個室やホテルの部屋等で行っ
たこともあった。調査を行うときも徹底した秘密の保証を何回も要求し、
被害事実が知られないかと、とても不安な様子を見せたこともあった。 

しかし、５人のハルモニも被害内容を陳述する時、口述資料を残すこと

に同意した。個人情報の保護を前提に、「自分の話が歴史資料になって、
後世に役立つなら使え」と話されることもあった。しかしこの５人のハル
モニは口述記録集の出版を前にして、再び訪ねることはできなかった。す
でに死亡していたり、生存していても健康状態がとても良くないという状
況だった。家族や知り合いが被害内容を知らないまま申告した方たちなの
で、下手に当事者や家族に連絡をとる事もできなかった。被害者本人が望
む「秘密の保証」が一番重要だったからだ。そのため、５人の口述は出版
の趣旨を説明し、同意を得る手続きがないまま、口述を収録することにな
った。被害内容を話す際に個人情報の保護を前提に口述資料の作成に同
意した経緯から、個人情報に関する内容は除いて、口述を収録した。

日本軍慰安婦の被害は1990年代から申告窓口が設置され、1990年代に

200人余の被害者が、女性家族部に被害者として登録され、2013年2月の
時点で、236人の被害者が日本軍慰安婦に登録されていた。女性家族部に

日本軍慰安婦被害者として登録されると、生活安定支援金、精神的な安定

及び看病など、政府の支援をもらうようになる。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

019 

しかし、政府の支援政策について知っていても、「回りから指さされる

のが怖い」、「自分の被害事実が家族や親戚の将来に害になるかも」と申
告しないケースが多い。被害者本人は申告をしたくても、家族が反対する
場合もあり、家族や周りに知らせないために、わざと居住地から離れたと
ころでこっそり申告する場合もある。申告を決心しても被害者とその家族
は、周りに被害事実がさらされて社会生活がしにくくなるかもしれないと
いう不安に苦しむこともある。

一方、申告する動機について被害者は「死ぬときまで話さないつもりだ

ったが、余りにも悔しくて」、「死ぬ前に恨を解くために」と言うケースが
多い。このような理由で、申告窓口が開いた1990年代から現在まで、新た
な被害者が見つかっている状況である。まだ、被害事実を誰にも明かせな
いまま死亡したり、生存している被害者の数は、女性家族部に登録された

被害者の数を大きく上回ると思われる。 

この12編の口述資料は長い歳月の沈黙を経て、やっと聴き出すことがで

きた話である。この点をふまえて本書を読めば、日本軍慰安婦の被害につ
いて深く理解ができるものと考える。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

020 

 • 定義

日本が満州事変(1931.9.18)を起こした後、太平洋戦争で敗戦する 1945

年までの間、戦争を効率的に遂行するという名目で設置した「慰安所」に
強制動員され、日本軍の性奴隷生活を強要された女性を指す。文献や証言
の中では、慰安婦は、酌婦、特殊婦女、醜業婦、芸妓、娼妓、女給等の呼
称で現われ、慰安所は、陸軍娯楽所、倶楽部、軍人会館、朝鮮料理屋など
の呼称で呼ばれた。

・日本軍慰安所の形成と動員の規模

日本は満州事変の後、侵略戦争の戦線を拡大した。日本軍は①現地女性

に対する強姦防止②売春による性病予防③兵士たちの性的慰労を名目に
慰安所を設置した。1932年1月、中国上海に日本軍慰安所の初期的なもの
が設置された記録がある。1937年、中日戦争を契機に日本軍の慰安所は
急速に増え、日本軍の占領地拡大にともない、日本軍慰安婦の動員地域も
拡大した。 

中日戦争以後、慰安所の設置、経営、慰安婦の募集、輸送に至る全過程

は、軍が主導した。内務省や外務省など日本の政府機関と朝鮮総督府、台
湾総督府も積極的に協力する体制を備えた。 

現在、日本軍慰安婦に動員された女性の総数は正確には分からない。慰

安婦動員の人数を知ることのできる体系的な資料が発見されてないから
だ。一部の学者は日本軍の「兵士何人当たり慰安婦何人」という計画が示

日本軍慰安婦の定義

日本軍「慰安婦」 口述記録集

021 

された資料や、様々な証言資料により、日本軍慰安婦被害者の総数を推測
している。日本軍慰安婦の総数は、最小3万人から最大40万人まで、多様
な意見が提示され、研究者ごとに大きな差異がある。 

慰安所の設置初期には、日本軍は女性たちを、日本と日本の植民地であ

る朝鮮、台湾から主に動員した。戦争が長期化して戦線が拡大するにした
がって日本の占領地である中国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、ミ
ャンマー、インドネシアからも動員され、インドネシア居住のオランダ人

女性も、日本軍慰安婦に強制動員された。日本軍慰安婦問題を永らく研究

した研究者吉見義明は研究報告で、日本軍慰安婦の数は最小8万人から20

万人と推算し、そのうち朝鮮人女性の比率が半分を越えるとみている。

・動員の方法と輸送

朝鮮人女性が日本軍慰安婦に動員された方法は、就業詐欺、脅迫や暴力

による動員、人身売買、誘拐等だ。「工場に就職させてあげる」、「たくさ
ん金を儲けられる」と騙して、女性たちを日本軍慰安婦に動員した。慰安
婦を募集する新聞広告が出されたが、勤務内容はきちんと告知されなかっ
た。また当時、新聞の購読状態や女性の文字解読率などを考慮すると、女
性に直接、募集広告が伝えられた事例はほとんどなかったとみられる。 

日本軍当局が慰安所を経営する業者を選定し、また、日本軍と警察が動

員で協力した。業者は募集人を利用したり、自ら直接出向いて女性たちに
接近した。就職や金儲けをエサに女性をかき集めたり、脅迫や暴力を利用

して動員したり、さらに拉致もした。日本軍は総動員体制により戦争を遂

行するには慰安婦が必要とみなしたが、それがこのような物理的暴力を許

したのである。 

太平洋戦争勃発(1941年)前は「渡航証明書」を得て、国外の慰安所に移

動した。輸送に必要な手続きは募集人が公権力の協力を得て進めた。この

聞こえてる？ 12人の少女の物語

022 

過程で戸籍が偽造されることもあった。太平洋戦争勃発以後は、「軍証明
書」で国外の慰安所に移動した。「軍証明書」は募集人や引率者が所持し
て、日本軍は移動に必要な各種の便宜を提供した。

・被害者らの生活

慰安所の形態、設置時期、地域により、被害者の生活状態は多様だっ

た。動員された女性たちは軍人直営や民間業者が経営する慰安所で生活

した。民間業者が経営する場合でも、軍が慰安所の許可と経営を統制した

ため、事実上、軍の管理下に置かれていた。直営の慰安所や日本軍が新し

く占領した地域では、戦争末になるほど日本軍の統制が強化された。

被害者のほとんどが慰安所で日本式に名前を改名させられた。外出は許

諾されず、一定の時間、範囲内だけ外出ができた。小さい島に動員された
場合には脱出が不可能だったので、外出は特に制限されなかった。 

日本軍慰安婦被害女性たちが直接金を受け取るケースはほとんどなかっ

た。代わりに兵士何人を相手にしたのかを証明できるように、伝票と似た
軍票や金券を貰った。後で票をお金に変えてくれるという言葉を聞いたり

したが、事業主が管理をしたので実際には、対価を貰えなかったケースが

多い。 逆に動員当時の移動費、衣服費、食費等、慰安所の生活費等が代
価として控除され、借金を抱え込むこともあった。 

日本軍慰安婦に動員された女性たちは、性病予防のためにコンドームを

使い、定期的に性病検査を受けなければならなかった。コンドームは軍人
が部隊や事業主に支給したり、事業主が女性たちに支給したりした。性病
検査は1週間か2週間に一度受けるのだが、施設が劣悪なところでは、ひと
月に一度くらいだった。この外に性病予防のために軟こうを塗ったり、消
毒水を使ったりした。慰安婦が性病にかかると隔離措置させたが、事業主
が軍人をずっと相手にさせ続け、病気が悪化することも多かった。 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

023 

日本軍が制定した「軍慰安所利用規則」では、慰安婦に対する虐待行為

を禁止しているが、事業主や軍人による暴力が日常的に、頻繁に起きた。

自殺や殺害事件が起きると、遺体は遺棄されることが多かった。激戦地に

動員された慰安婦は、日本軍と生死を共にするしかなかった。戦場で爆撃
により死んだり、輸送途中に輸送船が沈没して死亡したりした。 

日本軍慰安婦に動員され生き残った女性たちは、帰国するのも大変だっ

た。連合軍の捕虜になり、捕虜収容所に収容されてから帰国するケースも
あったが、相当数は現地で捨てられた。日本軍が敗戦後、慰安婦を殺害す
ることもあったし、多くの事業主は被害女性たちを見捨て、帰国の途につ
いた。被害女性たちは日本の敗戦後、一人の力で生き残り、故郷に戻る方
法を探さなければならなかった。「戻る方法を見つけられず」、「故郷に
戻る面目がなくて」等の理由で、動員された他国に置き去りにされること
も多かった。

生き残った被害者は帰国後、深刻な肉体的・精神的後遺症に絶え間なく

苦しんだ。殴打や苛酷な行為による外傷、不妊、性病等、日本軍慰安婦被害

による直接的な後遺症は、長い間、被害者たちを苦しめた。肉体的苦痛は鎮

痛剤などの薬を服用させ続け、薬害もつきまとった。また自身の体に自己決
定権を持てなかった屈辱感、被害事実によって韓国社会で受ける不利益と
烙印への恐れ、人生の敗北感、鬱病や不眠症などの心理的外傷(トラウマ)な

どから、辛い人生が続いた。被害事実のために積極的な社会活動ができず、

家族を作れなかった被害者は、貧困の悪循環に追い込まれた。

・名称と用語の規定

1990年代の初め、日本軍慰安婦問題が本格的に浮上した時は、「挺身

隊」という用語が広く使われた。挺身隊とは「日本国家(天皇)のために率
先して献身する部隊」という意で、日帝が労働力動員のために作ったもの

聞こえてる？ 12人の少女の物語

024 

だった。挺身隊(労務動員)と慰安婦(性動員)は本質的に性格が違ったが、
女子勤労挺身隊に動員された女性が、慰安婦にされた事例があり、意味
が混同され、誤って使用された。その後の研究により、〔「挺身隊」ではな

く、〕当時使われた用語に近い「軍隊慰安婦」という用語が定着した。 

1990年代、日本では「従軍慰安婦」という用語が使われた。しかし「従軍」

という言葉は「従軍記者」、「従軍看護士」のように、自発的に軍について行く
という意味を含んでいる。強制的に日本軍慰安婦を動員したという、日本の歴

史責任を隠蔽させると面があることから、使用には注意すべき用語だ。 

国際社会で「日本軍慰安婦」に関する問題を初めて提起した際には、「慰安

婦」という単語を直訳して‘comfort women’という用語を使ったりした。現在、

国際連合など国際社会では、主に「軍隊性奴隷(military sex slave)」と「軍隊性

奴隷制度(military sexual slavery)」という用語を使う。1996年国連人権委員会

に提出されたラディカ・クマラスワミ(Radhika Coomaraswamy)報告書は、こ
の問題を明確に「戦時下軍隊性奴隷制(military sexual slavery in wartime)」と

規定した。 

国際社会で「軍隊性奴隷制」という用語を採択したのは日本軍慰安婦問

題が、私的な領域で発生する契約によって成り立つ売春の性格や、国家の
ための国民の自発的な犠牲として説明されるものではないという事実が、
広く認識されたからだ。すなわち日本軍慰安婦は、国家が女性を強圧的
に動員し、集団的な性暴行を加えたものであり、被害女性の生きる条件は

「奴隷」のような状態だった。「慰安婦」という用語は、まさに加害者中心

の用語であり、暴力性と強制性を隠す否定的効果を持っている。日本軍慰
安婦の募集動機、募集過程、暴力性を考慮するなら、日本軍「性奴隷」と
いう名称が適合する。 

現在、私たち韓国社会では日本軍「性奴隷」という用語より、「日本軍慰安

婦」という用語を広く使っている。「慰安婦」という用語は、問題の本質をすべ

日本軍「慰安婦」 口述記録集

025 

て示すものではないが、日帝が慰安婦の用語で制度化をすすめた当時の独特
な雰囲気を伝える。また、生存者自身が「性奴隷」と呼ばれることで、精神的
な傷を負うことがある点も考慮されるべきである。被害者の支援のために韓
国政府が制定した法でも「日本軍慰安婦」という用語を使っている。研究者の
中には、日本軍が使った「慰安婦」という単語に同意しないという意味から、カ
ギ括弧を付けて、「日本軍「慰安婦」」と表記する者もいる。

〈

参考文献〉

韓国挺身隊問題対策協議会編、『日本軍「慰安婦」問題の真相』、歴史批

評社、 1997

高麗大学民族文化研究院崔徳洙他、『「慰安婦」問題を理解のための基礎

入門』、韓国女性家族部、2002

韓国挺身隊問題対策協議会、2000年日本軍性奴隷戦犯女性国際法廷編、

『日本軍「慰安婦」問題の責任を問う』、プルビト、2001

韓日女性共同歴史教材編纂委員会編、『女性の目から見た韓日近現代

史』、韓ウルアカデミー、2005

李ヘミ、『日本軍「慰安婦」制度の歴史的普遍性と特殊性：朝鮮人「慰

安婦」動員を中心に』西江大学大学院政治外交学科修士学位論文、
2007

韓国近現代史学会•北東アジア歴史財団、『日帝植民地支配の暴力性と日

本軍「慰安婦」』、日本軍「慰安婦」問題国際学術大会資料集、2007

対日抗争期強制動員被害調査及国外強制動員犠牲者等支援委員会、『対

日抗争期強制動員被害真相究明業務処理マニュアル』、2010 

日本軍慰安婦被害者e -歴史館（http://www.hermuseum.go.kr/）

聞こえてる？ 12人の少女の物語

026 

 • 606号注射
アルスペナミン(Arsphenamine)注射の別称である。アルスペナミンはドイツの医者
パウル・エーリッヒ(Paul Ehrlich、1854～1915)が606番目に合成したヒ素化合物で、
梅毒治療に特効を見せた物質であり、「サルバルサン(salvarsan)」という商標名で商
用化された。梅毒、回帰熱等の特効薬として知られ、広く使われたが、不妊の原因

になる等、副作用が激しく、現在では使われない。被害者の証言によれば、性病に
かかった「慰安婦」には606号注射をしたという。この注射を打った被害者は、「熱
くて非常に痛かった」、「臭いがきつくて、長い間苦労した」と述べた。 

 • サック 
サックは男性用避妊具、あるいは性病予防器具のコンドームを称する言葉で、コン

ドームのフランス語のサック(sac)から由来したと推定される。大多数の被害者はコ

ンドームを当時、日本軍が公然と使った「サック」という単語と記憶している。日本
軍は性行為を攻撃的で軍事的な行動に比喩して、コンドームを「突撃1番」、「ヘル
メット」、「防毒マスク」等と呼んだりした。 

 • 並び
列を意味する日本語。被害ハルモニたちは、軍人が長く列をつくり、立っている姿
を「並び立った」と表現する。 

 • チョセンピー

日本軍慰安婦として動員された朝鮮人女性を卑下して呼んだ言葉。「チョセンピ

ー」の「ピー」というのは、中国語で女性の性器を意味するものという。〔 Ｐは英
語の「Prostitute」（娼婦）の略という説もある。〕

主な用語の説明

日本軍「慰安婦」 口述記録集

027 

 • 箱部屋
箱を意味する日本語の「箱」と朝鮮語の「パン(部屋)」の合成語で、板張りの粗末な
家を、俗っぽく言う言葉。 

 • 帳場
帳簿を記入して会計をする所、または、そういう仕事をする人。 

 • バイドク

「梅毒」の日本語

 • 月経、生理、メンス
成熟した女性の子宮から周期的に出血する生理現象。「生理」は一般的に使う月経
の別の名称。メンスは月経を意味する英語「menstruation」の略語

 • 挺身隊
挺身隊は「日本国家(天皇)のために率先して身体を捧げる部隊」という意で、日帝
が労働力動員のために作ったものである。本来、挺身隊動員は男女皆に適用される
ものだったが、1943年「女子勤労挺身隊」が組織され、女性動員の重要な方法と認
識された。女子勤労挺身隊制度は戦争の長期化によって不足した男性労働力に代
える目的から、女性たちを軍需工場に動員するために作った制度であり、慰安婦動
員とは関係がない。しかし勤労挺身隊に動員されて軍隊慰安婦になった事例があ

り、女子勤労挺身隊と日本軍慰安婦はともに、女性を動員対象とするものであるこ
とから、永らく「挺身隊」=「慰安婦」と間違って認識されて来た。挺身隊は労務動

員であり、慰安婦は性動員であり、きちんと区分され、使用されるべきである。 

 • 処女供出　

日帝時代を経験した人たちは、

「処女供出」という言葉で、慰安婦被害を説明したりす

る。慰安婦動員の対象が主に未婚女性であり、当時の人々はそれが性動員であったこ
とを意識していた事実を語る。結婚は「処女供出」を避けることができる方法とされ、

徴兵・徴用で若い男性が動員される状況とかみ合って、早婚が盛んに行われた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

028 

VAWW-NET Japan 地域別慰安所分布図(作成者:朴潤南、補充:池田恵理子)を再編集(『「慰安婦」・戦
時性暴力の実態Ⅰ-日本・台湾・朝鮮編』、『「慰安婦」・戦時性暴力の実態Ⅱ-中国・東南アジア・太
平洋編』、VAWW-NET Japan、緑風出版、2000年所収)。　 

▲ 被害者の証言によって確認された「慰安所」の設置地域
●  公文書によって確認された「慰安所」の設置地域
□  部隊誌・過去の日本軍の証言によって確認された「慰安所」の設置地域

<<< 

日本軍占領地全域の慰安所分布図

日本軍「慰安婦」 口述記録集

029 

日本軍｢慰安婦｣被害者

口述資料

姜道牙    想像したって心の病になるだけ、水に流してさっぱりだ。
A○○      いっそ死んだ方が楽だった。
B○○      お前らだけで戦争して来たのか、お前らのせいで大病にかかった
C○○      哀れさは言い尽くせない、利用されただけだ。
D○○      日本人のせいで行ったんだ。
E○○      母が祈ってくれたおかげで、死なずに生きて帰れた。
F○○      誰にも訴えられず、泣き通した。
G○○     就職して、工場に行くものと思っていた。
H○○      こんな話、誰にもせずに死のうと思った。
I ○○       再び女に生まれて、恨を晴らしたい。
J ○○      姉ちゃんが工場で働いて、牛買ってあげるね。
K○○      死んだも同然だ。

姜道牙(カンドア)  1923年生れ

1940年頃、 慶尚南道(キョンサンナムド)河東郡(ハドングン)から動員される 

日本を経由して台湾に移動。台湾で3年間、日本軍慰安婦生活

1943年頃、 オランダ領ボルネオ島(現インドネシア)バリクパパンに移動

 バリクパパンで2年間、日本軍慰安婦生活
 バリクパパンから日本を経由して、

1946年頃、 帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

033 

私さえ行けば、親兄弟が楽に暮らせると思い…

ハルモニのつらい体験をお話しください。
私のつらい話は口では言い表せない。兄弟が十人で私が長女だから、弟をお
ぶって食事の仕度をする。おぶったまま家の掃除をして、なので外に出られ
ない。そんな暮しをしていたある日、人が来て「道牙(トア)! 言われた所に行け
ば、金持ちになれる」、「楽に食べて暮せる」と言われた。それで私も「私さえ

姜道牙(カンドア)  1923年生れ

1940年頃、 慶尚南道(キョンサンナムド)河東郡(ハドングン)から動員される 

日本を経由して台湾に移動。台湾で3年間、日本軍慰安婦生活

1943年頃、 オランダ領ボルネオ島(現インドネシア)バリクパパンに移動

 バリクパパンで2年間、日本軍慰安婦生活
 バリクパパンから日本を経由して、

1946年頃、 帰国

第１話

想像したって心の病になるだけ、
水に流してさっぱりだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

034 

行けば、食べて着るにも不自由がなく、親兄弟が良い暮らしできるのなら、そ

うしてみよう」と考えてついて行った。 

どこへ行ったのですか？ 

台湾を経由して、インドネシアに行った。そこの名前はバリクパパン。誰もが
行けるのではない。石油が出るから、偉い人の許可を貰わないと入れない所。
そこでの生活は、口では言えない。毎日、客が来て、ずっと「並んで」立ってい
る。「ちっこいの(姜道牙ハルモニの呼び名) だけ出て来い」と呼ばれる。「大き
いの出て来い」とは言わない。毎日来ては、「ちっこいのだけ出て来い」言う。

幼い子だけを探すのですか？ 
分からない。毎日「ちっこいの」と、私だけ探す。いつも手ぶりで「こういうの
連れて来い」と言う。私が幼く見えたようだ。解放になった時は21歳なのに、
米軍からも「15歳にしか見えない。ちっちゃい。」と言われ。

ハルモニが一番幼かったですか？ 
私がそこで最も幼かった。みな私より年上のようで、大きくて、体も太い。私よ

り年齢が下の人はいない。一日に30人も相手にすると、空が黄色く見える。朝

起きて、顔を洗う余裕もない。何も考えられない。私はそんな世の中を生きて
来た。この頃の子なら、14歳にでもなったら解るでしょう。昔は純粋にバカだ

った。その頃、私たちが育った時代はまったくバカな暮しをした。暮しなんて
ものじゃない。「もうこんなこともできない。」と断ろうとすると、殴られる。
限りなく叩かれた。客を「少ししか取らない」と言って殴る。男がずらりと並ん
で、やたら入って来る。終わると出て行って、また次のが、入って来る。今出て

行ったのに「ちっこいの出て来い」と。そんな奴ら、どこにいる。私がいた所は
そう、人ではない。誰が見ても、人間ではない。殺してやりたかった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

035 

そんな境遇に追い込んだ奴は、人ではありません。
アイゴー、私も人間じゃなかった。そんな経験した私は、人間ではない。最近
は年齢5、6歳でも、以前の大人よりはまし。バカは私だけ。いくら考えても天
下の大バカ。

ハルモニが行く時、どんな仕事をする所なのか知っていましたか？ 
知らなかった。

ご両親も、ですか？ 
ああ。知らなかった。お金をたくさん送ってくれるとだけ思っていた。

ご両親は、どんな仕事をしていましたか？ 

畑で働いていた、野良仕事。 他人から土地借りて耕す、小作人暮し。

誰が「金を儲けられる」と言ったのですか？ 
面(役場)でそう言われた。

面の職員が出て来て言ったのですか？ 
分からない。面の職員なのか、業者なのか。私はそれも知らずに行った。見当

もつかない話なのに。

大坪面(テピョンミョン)（晋陽郡、現在は晋州市(チンジュシ)）からは、お婆
さん一人でしたか？ 
村からは私一人だけ。多くの人が集められたが、別の村の人。私のいた大坪面
からは私一人だけ。晋州に十何人集まった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

036 

河東から晋州までは何に乗って良かれましたか？ 
晋州までトラックみたいな車に乗った。

晋州まで一人で行ったのですか？ 
連れて行かれる時は、業者と私だけ。

晋州から、どこに行きましたか？ 
釜山。時刻に合わせて来る路線バスに乗った。釜山から大きい船に乗り下関ま
で行った。下関で業者が交代した。一緒に行った業者でなく、そこにいた女た
ちも加わった。台湾に３年いた。どういうことなのか分からなった。最近は年齢
5、6歳でも、以前の大人よりはまし。天下のバカは私だけ。いくら考えてもバ
カだった。

連れて行った業者は、どんな人でした？ 
業者のことはよく分からない。台湾へ行くと、また別の業者がいた。日本
人だ。

年齢はどれくらいでしたか？ 
何歳なのか分からない。

ハルモニを連れていった人は、台湾で一緒に暮らしたのですか？ 
ええ。

その人は業者ですか？ 
ええ。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

037 

台湾のどこですか？ 

どこなのか知らない。台湾とだけ聞いた。

部隊の名前や、日本軍人の名前、友人の名前、思い出しますか？ 
憶えてない。

台湾に行ってどんな仕事をすると思っていましたか？ 
ただ家政婦のように、ご飯作って、洗濯して、掃除でもすると思っていた。そ
んな事をさせられるとは夢にも思わなかった。思っていたら、ついて行くかい? 

>>> 

台湾の女性たちが日本軍慰安婦被害に遭った日本軍の倉庫。伊藤孝司撮影。 

釜山日本軍慰安婦ハルモニのための民族と女性歴史館展示物。同歴史館提供。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

038 

水に溺れて死んだら死ぬまでだった。(遺体を)家にも送らなかっただろう。家
族がとても多くて食べ物もなかった。だからそこに行けば「お金をたくさん送
れる」からと、私を送り出したんだよ。

台湾に初めて行った時どうでしたか？
台湾での記憶は、…。齢も幼かったし、何がなにで、どうなったのか分からな
かった。あいつらの言われるままにしないと殴り殺される、仕方なくてするん
だよ、したくてするかい。

台湾でハルモニのところに、初めて軍人が来たのはいつでしたか？
そこでご飯も作り、洗濯もして、町角を掃除して、お手伝いのような仕事と思

っていた。なのに、突然、一ヶ月位過ぎた頃。

どこへ逃げられるの、
どこに逃げたら、あんなことしないで生きられるの

突然仕事が変わったのですか？ 

うん。一ヶ月位過ぎ。初めてのことなので、下部が裂けてしまった。三つや四

つに裂けて、下を押さえないと歩くこともできない。嫌がったら、死ぬ程、殴ら
れた。飯にも飢えて、三日間横になっていた。小さいのががっしりした大男に
捕まって殴られるのは、耐えられなかった。他人には話せなかったが、今はも

う死ぬ歳だから、恥ずかしくても言える。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

039 

痛かったでしょう。

とても。話にならないよ。(涙声で) バリバリに裂けて。あんなことを、あの齢で。

話にならない。よっぽどでなければ、こんな話、私が若い人たちにしないよ。

医者には行きましたか？ 
医者にも行かず。消毒液で洗い出しただけ。ああ、恥ずかしい。

軍人を受け入れる前に検査などはしませんでしたか？

しなかった。

ハルモニに初めに来た人は少し偉い人でした？ 
知らない。それも分からない。記憶もないし、どいつが来たのか。どうやったら
逃げられるか。避けることだけ考えて、他に何も考えなかった。でもどこに逃
げたら良いのか、台湾であれを受けないで生きられるのか、それしか考えなか

った。どこへ行ったら、あの醜いのを夜も昼も長々と、見ずに生きられか。親兄

弟にお金を送ってあげる、そんな気持ちもなくなって。夜寝つく前、それだけ
考えた。

初めは、一人だけ来たのですか？ 

こいつも入って来て、あいつも入って来た。私が大声で叫んだら口を塞がれ
て、みなで殴りかかって来た。

はじめから何人も来たのですか？ 
初日から何人も来た。よくわからない。気絶したのか、どうなったのか分からな
い。どんな奴が入って来て、どうしたのかもよくわからない。 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

040 

台湾で来た人は、主にどんな人でしたか？ 
分からない。その時は肝っ玉がひっくり返って、台湾では何がどうなったの
か。私はしきりに自分の体だけは隠そうとした。人の顔も見ようとしなかった。
何も見えない、記憶もない。

一緒にいた女たちも、何をするのか知らずに来たのですか？ 
一緒にいた女たちが騒ぐのを聞いたから、私だけじゃなくて、他の人たちも知

らずに来たようだ。

台湾で、ご飯はどうでしたか？ 
色々変なもの、あれこれ混ぜて。一日三食食べることは夢の空。客のせいで、
食べる時間もくれない。

お客さんが来るとご飯を食べられないのですか？ 
夕食くらいは、何とか食べられるが。お匙を置いてでも迎えに行かないと、殴

り殺される。

誰がそんなにハルモニを殴るんですか？ 
主人だよ。「言うこと、聞かない」と殴る。ここで死のうと、あそこで死のうと、死ぬの

は同じ。ここにいて大変なら、いっそ薬飲んで死ねば楽になると思って、薬も探した。

こんな暮しをして、何になるかと思った。でもここでは、誰もそんな薬はくれない。

河東からハルモニを連れていった男が主人ですか？その人が10人をみな連
れて行ったのですか？
その人が連れて回って、また別の人も連れて来る。また他の所に移したりする。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

041 

移ると、主人が変わるのですか？ 
他の家に送られた。「お前はあの家に行け」と言われた。「そこで金儲けすれば、
朝鮮にお金たくさん送れて良い」と。

先の主人も新しい主人も日本人ですか？ 

うん。

軍人が偉いのです？そこの主人の方が偉いのですか？ 
軍人が偉いよ。

初めての所も、二番目の所も皆、軍人が来たのですか？ 
ああ、軍人だった。 民間人はいない。

台湾で過ごした所は、どんな造りでしたか？ 

１階があって、2階もあって。 部屋一間あれば、そこで客を取る。

ハルモニは1階にいましたか、2階にいましたか？ 
2階にいた。向いや隣りに、客を取る部屋がある。

そこでは他の仕事はしなかったのですか？ 

うん。そこで一週間に一度検査する。

どこか行くのですか？ 

病院に行く。何の病院かも分からない。乗り物で行って、脚を上にあげて検査

して来る。 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

042 

台湾でお金貰ったこと、ありますか？ 
いいや。お金は一銭も見たことがない。

近くに部隊がありましたか？ 
台湾では記憶がない。そこがどこなのか、それも分からない。台湾に行って、
あの凶悪なやつらのせいで。何がどうなったのか、死ぬよりひどいと言っても
言い過ぎじゃない。台湾では毎日、「ちっちゃいの、ちっちゃいの、出て来い」

って言われて、本当に死にそうだった。私は幼くて、よりひどかった。

台湾にはどれくらい居ましたか？ 
およそ3年いた。

台湾に3年いて、その後バリクパパンに移られたのですか？ 

うん。バリクパパンでのことは、大体憶えている。話せるし記憶もある。人が多
くて、道にも慣れた。人が入って来て、出て行くのもわかる、だから台湾より、

少しはマシだった。しかしバリクパパンでも毎日、軍人が並んだ。

どこへ行くのか分からずに、行くと言われた通り、

ついて行く

バリクパパンに一緒に行った女は、何人でしたか？ 

10人余り。私よりみな歳上だった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

043 

バリクパパンへは、どうやって行きましたか？どこで降りましたか？ 
軍艦に乗って行った。海が四方にあって、どこを経て、どこへ行くのか、どこで
降りたのかも分からない。どこへ行くのかも分からず、ただ言われた通り、「行

くぞ」と言うから、ついて行くだけ。ついて行かなければ、殴り殺される。

軍艦なら軍人も乗っていましたか？ 

うん。

バリクパパンの家は、どんな風でしたか？ 
家は…、下はなく、上にだけ壁がある。台湾では壁があったが、階段のない平
屋建て。だから一階だけで、2階や3階はない。軍人が門の前に、ずらっと並ん
で立っていて、門が開くと入って来る。
　
炊事や洗濯をする人もいましたか？ 
ええ、食事の仕度をする人がいて、掃除もした。ご飯貰いに行くと、一さじず
つくれる。ご飯とは言えない。草や葉を煮たおかゆのようなもの。この頃は犬
でも、あんなもの、食べない。洗濯は自分でする。インドネシア人が主に手伝

っていた。

軍人はハルモニに何をくれるのですか？ 
軍票の紙片を貰って、みな終わると主人に持って行く。

終わる時間は、何時頃ですか？ 
終わる時間は、7時か8時くらいで終わったり、10時を越す時もある。入って来る

と、時間制で寝て行く。朝まで寝る奴はいない。そこは朝まで眠る所じゃない。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

044 

ハルモニが票を持って行くと主人が記録するのですか？ 
ああ、後でお金をくれると言った。「票を出さないと、家にお金送れない」と言

う。「お金送ったのか」聞くと、「送った」と答える。

普通ひとりで、どれくらいの時間過ごしますか？ 
早く行く奴もいて。長くもつ奴もいる。朝までいる奴はいなかった。

酒飲んで暴れる人はいなかった？ 
なぜ居ない？いるよ。酒飲んで暴れる。それこそ、口では言い尽くせない。そ
れでも受け入れないといけない。他にどうする。

止める人はいないのですか？ 
そんな人いない。それで喧嘩して、一週間、留置場生活もした。

留置場に閉じ込められたのですか？ 
留置場生活も同じよ。閉じ込めて外に出られないから。ご飯もくれず、部屋に
閉じ込められた。

どれくらい入れられたのですか？ 
喧嘩して3～4日座っていた。飢えてもそっちの方が、何日か休めるから、ずっ
とマシだったよ。アイゴ。

誰と喧嘩したのですか？ 
そこにいた女と喧嘩した。時なぜ、喧嘩になったのかわからない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

045 

なぜ喧嘩したのですか？ 
なぜ喧嘩したのか憶えてない。とにかく互いに罵声を浴びせて、外に出た。私
は文字も知らない、何も分からないバカだが、口だけは人に負けない、達者だ
った。私が捕まえて、ぱっと噛みついて、ワンピースとか言うのか、女の服を
破いてしまった。口で噛んで、引っ張ったら破けちゃった。破いて捨てた。

その人は留置場に入れられなかったのですか？ 

うん。

喧嘩した女も軍人を相手にする女でしたか？ 
軍人を相手にする女だよ。

朝鮮の人？ 
ああ。朝鮮の女だけいて、他の国の女はいない。

逃げるつもりはなかったですか？ 
脱出は夢でも無理。逃げても島だから、行くところがない。山へ行くと「スェバ
イ」(現地人のこと?)がいて、人が人を食べるとか。「スェバイ」は、髪の毛が
足のつま先まで垂れて、こんなところにも毛が生えていて。だから怖くて出る

こともできなかった。

そんな人を見たのですか？ 
そう。そんなことがあって、私だけでなく誰もが、外には出られない。バリクパ
パンはまわりがみな海なのに、どこへ行く。四方が海で、海が石油で真っ黒だ
よ。タバコ吸って、マッチ投げたら、即死。ドラム缶に油が入っている。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

046 

ハルモニ、病気かかったことはなかったですか？

もちろん、かかったよ。その後遺症で、出てからも病気持ちだった。

病気にかかってどうしました？ 
病気にかかると、その間は客を取れない。

誰がかかったと判定するのですか？ 

>>> 

ボルネオ(現インドネシア、カリマンタン)の石油産出の様子。

『アジア・太平洋戦争』ポプラ社、99頁収録の写真。バリクパパンは1890年代から

石油が開発され、現在もインドネシア、カリマンタン最大の石油基地。バリクパパ
ンには当時、日本海軍所属部隊の102燃料廠が配置されていた。 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

047 

医者が判定する。両足をのせて検査をする。「サック」(コンドーム)といって、
男たちがはめるのがある。それをはめても、病気にかかる人はかかる。ひどい
人は入院して、薬も貰ってあらゆる手当をする。私は長くはなかったが、一度
だけかかった。他の人はみな子どもを産んで暮すのに、なぜ私だけこの有様な
のか…。

検査は何時するのですか？ 
一週間ごと。病院に一週間に一度ずつ、検査しに行く。車を降りると、ずらっと
並んでいる。その病院には、一般の人はいない。女の看護婦がいて、仰向けにな

って足を広げた姿勢でいると、婦人科の検診器具を入れて検査する。病気で引
っかかるとその病院に入院する。

病院には、一緒にいる女たち皆で行ったのですか？ 
ああ。そうだ。 

主人が連れて行くのですか？ 

うん。 

検査しに行って、他のところから来た女性に会いましたか？ 
分からない。入院でもして病院に長くいれば、他所からの人と会って話をするだろ

う。でも、いつも合格するから会わなかった。齢も幼くて、とても辛かった。

検査の日は、軍人は来ないのですか？ 
帰って来たら受け入れる。男たちには昼も夜もない。朝も、夕方も、昼間も来

る、時間などないよ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

048 

入院しませんでしたか？ 
入院はしなかった。気候のせいか、そこではよくマラリアにかかる。マラリアに
かからない人はあまりいない。私は2回かかり、病院に行き、薬を飲んだ。一度
かかるとすぐには治らない。長引くよ。

そういう時は客を取らなくてもよいのでしょう？ 
なぜ取らない。それでも、取らないといけない。「マラリアにかかった」と言っ
ても、病院で聞いてくれない。下の病なら重病で扱ってくれるが、その他は重
病とみなさない。

「梅毒」にかかりませんでしたか？ 

それはかからなかった。そういう凶悪なのに、かかった人もいた。でもかかりた

くないから、「サック」をはめる。軍人も「サック」を、ポケットにいつも入れ

ている。自分たちも、病気かかると大変だからね。

洗う水などはなかったのですか？ 

白い色の消毒液があった。台湾にもあった。いくらあいつらが「サック」はめて
も、その時洗わないと、自分がそれだけ損する。やつらから病気を移されるか
ら。人のことはわからないから、消毒液で洗わないといけない。自分の体のた
めに、面倒でも必ず洗わないと。いつまでも寝ているのではなく、客を送り出
したら洗いに行く。でもまたあの「並んで」いるのが、入って来る。 

洗う場所はどこにありましたか？ 
洗う場所は浴場。

浴場も2階にあったのですか？ 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

049 

ああ、浴場で洗う。

ハルモニの過ごす部屋はどんなでしたか？ 
床は畳だよ。部屋も大きくない。小さな部屋だけ。

ベッドはありましたか？ 
ベッドなんてない。そんなのあっても駄目。酒に酔った奴が来て、殴って暴れる。
行儀の良い人もいたが、酒飲んで暴れる人が多い。

荷物はどこに置くのですか？ 
小さい荷物はカバンに入れて置く。ひどい世の中。

そこで酒を飲めるのですか？ 
酒をどこで飲む？飲んでから、来るんだよ。その家で飲むのは見たことない。
他で飲んで来る。

ハルモニ、メンスはいつからありましたか？ 

19歳(1941年頃)過ぎてからあった。

メンスだと軍人取らなくて良いのですか？ 
そんなの関係ない。何の意味もない。「サック」嵌めたら、やつらには関係な
いから。

「サック」は戦争終るまで不足がなかったですか？ 

不足しなかった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

050 

妊娠した人はいなかったですか？ 
そういう人はいなかった。

バリクパパンで外の見物を少しはしましたか？
外の事は分からない。外には出て行けない。出る暇もない。

休みの日はないのですか？ 
そんなのない。軍人が来ない時は、横になって寝るだけ。空襲が来ると、上も
下もみな脱いだまま、パンツ一つ穿いただけで、終日草むらに隠れた。その
頃、大東亜戦争になって、空から爆撃受ける。パンツだけ穿いてうつ伏せにな

り、這って行き、草むらに隠れる。

防空壕はなかったのですか？ 
ああ、本当に皆、大騒ぎだった。

家の外に出て見物したことはないのですか？ 
家から出られない。客が行ったら、少し掃いて拭いたり、顔も少し洗ったりす
る。色々やることがあって、出て行く余裕なんてない。人が行ったら。

ケガしたことないですか？ 
やたら殴るから、逃げてころんで、腕が折れた。捕まって縛りつけて、殴られた。
そんなの普通で。今考えたら、逃げるところもないのに、本当にバカだったよ。

ハルモニ、日本語はできますか？ 

日本語は結構上手かったが、ほとんど忘れた。「こんにちは」、「いらっしゃい

日本軍「慰安婦」 口述記録集

051 

ませ」は分かる。客が来ると「いらっしゃいませ」と挨拶する。誰でも皆、でき
ないといけない。私はインドネシア語も少しできたが、それもほとんど忘れて
しまった。インドネシアでは女を指して「クルムパ」と言う。「ヨニャヨニャ」
とか。

「ヨニャ」というのはどういう意味ですか？ 

女という意味。女を「ヨニャヨニャ」。「サマツスカリ」というのは、何なのか
わからないが、お使いに行っておしゃべりするのを聞いて習った。「チョセン

ピー」。これは賤しい言葉だが。

「チョセンピー」1) という言葉は、どこで聞きましたか？ 

ああ、そこで、インドネシアで聞いたよ。

誰がそんな言葉を使うのですか？ 
軍人たちが使う。「チョセンピーがどうした、こうした」って。

朝鮮人が使うのは見たことはないですか？ 
ああ。

軍人は大体、何歳くらいですか？ 
若いのもいて、年寄りもいる。大体若いよ。

1)「チョセンピー」の「ピー」は中国語で、女性の性器を意味する言葉。 日本軍は「慰安

婦」を民族別に「日本ピー」、「朝鮮ピー」、「支那ピー」と呼んだ。余舜珠(ヨスンジュ)

「日本軍『慰安婦』生活に関する研究」、『日本軍「慰安婦」問題の真相』、歴史批評

社、1997、121頁。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

052 

化粧はしませんでしたか？ パーマをする人いたそうですが？ 
化粧品なんてどこにある。顔も洗えないで暮しているのに。パーマなんてしな
かったよ。

その時、どんな服を着ていましたか？ 
主にワンピース。主人が持って来る。

ハルモニが主人のことを、何と呼びましたか？ 

「アジュモニ(おばさん)」

ハルモニはそこで何と呼ばれましたか？ 

「トミコ」

若しかして「松子」ではありませんでしたか？2) 
憶えてない。想像してみたって心の病になるだけさ、皆水に流してさっぱりだ

よ。

管理人の名前は思い出せませんか？ 
名前なんて呼ぶことなかった。呼ぶ暇もなく、票を貰ったらそれを数える。お
金は十円も一円もくれたことはない。他の所は知らないが、でもここでは、お
やつをくれた。船もたくさん行き来して、港ではないが、谷間に行くと石油も

2) 姜道牙ハルモニは、自身が「トミコ」という名前で呼ばれたと記憶しているが、戦後バリ

クパパンに残っていた朝鮮人を記録した名簿「南方朝鮮出身者名簿」には、「松子」とい
う名前で記録されていた。日帝強制占領下強制動員被害真相糾明委員会、『インドネシ
ア動員女性名簿に関する真相調査』、2009年、42～45頁。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

053 

出た。およそ二十里入ると石油も見物できる。地面が真っ黒だ。マッチ捨てた
ら駄目、四方が石油で。(暑くて)服もそんなに必要ないところだった。

お金送ると言ったのに、死んだのか生きたのか痕跡も
分からないと

大東亜戦争が終る頃、「看護服を着ろ」と言われた。帽子かぶって、白い服着せ

られた。どこからそんなものを持ってきたのか分からないが、生きるのに必死だ
った。解放された翌年、大東亜戦争が終わった翌年に出て来た。

誰が「看護服を着ろ」と言ったのですか？ 
主人たち。敵の兵隊に、私たちがそこにいたことが知られると、大変だからと。
証拠が残っていては駄目。それで看護服を着た。

看護服を着て何をしましたか？ 
何もしない。米軍が見ているから着ただけ。を着て何かするのではなく、急い
で着せただけのようだ。

看護服着て、病院で働かなかったのですか？ 

うん。何も知らないし。

なぜ「看護服を着ろ」と言ったのでしょうか？ 
主人たちが「これを着ろ」と言った。私たちがそこにいることを、「知られては

聞こえてる？ 12人の少女の物語

054 

ならない、体を売りに来たことが、ばれたら大変だ。」と。 

敵の偉い人がきた時、ハルモニは看護服を着ていたのですか？ 

うん、そう。

着ないと殺されると言うのですか？

「連合軍に捕まると、殴り殺される」、「人を人として扱つかわないから着ろ」と

主人に言われて着ていたら、敵兵に「看護婦なら注射をしてみろ」と言われた。

本物の看護婦なのかどうか、調査されたようですね？ 
ええ、「看護婦なら腕に注射をしてみろ」と。でも、皆にさせたのではない。

>>> 

インドネシア駐屯第7方面軍直属南方第9陸軍病院が、現地にいた女性を臨時看護婦

に編入した内容が書かれた文書「南方第9陸軍病院略歴」の一部分。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

055 

ばれませんでしたか？ 
注射できる人がいたから、ばれなかった。注射の打てる人を何人か前に立て
て、私たちは後に並んだ。

通過できたのですね？ 
ああ。

調査はどこで受けたのですか？ 
病院に行った。

ハルモニが性病の検査を受けた病院ですか？ 
そう。そこ以外に病院はない。

検査を受ける時、女の看護婦はいましたか？ 
何人か、いた。そんなに多くなかった。

病院は大きかったですか？ 
いいや。

病院の名前はご存知ですか？ 
さあ、分からない。

解放はどうやって知りましたか？ 
戦争が終わったと言うから。主人も何時いなくなったのかも分からない。ある

日、突然いなくなった。日本人はどこへ行ったのか、居なくなってしまった。こ

聞こえてる？ 12人の少女の物語

056 

れまでこき使うだけことはこき使って来て、日本が負けると自分たち同士で、

どこかに行ってしまった。そこが無事なわけが無い。爆弾がたくさん落ちて戦

場になってしまったから、慰安所の管理人だった人たちはいなくなった。お金
のカバン持って、どこかへ逃げたのか。防空壕に爆弾が落ちて死んだ人もいた
だろう。

女の人も死にましたか？ 
死んだ人もいる。

ハルモニと何人が残ったのですか？ 
私と3、4人残った。残っていた人も、どこへ行ったのか知らない。帰って来る
時は、私一人だった。

他の人はどこへ行ったのですか？ 

どこへ行ったのか分からない。死んだのか、生きているのか。

米軍が来てからはどのように暮らしましたか？ 
米軍が怖くて、インドネシア人の所で一緒に混じった。「来い」と呼ばれても、
怖くて行かない。捕まったら、何されるかと不安だった。米軍が「ちいさいの」
(姜道牙)を探す。菓子や乾パンなど、四角いブリキのカンにたくさん持って来
た。でも、怖くて食べられなかった。

インドネシアの人たちと一緒にいて、その後帰国したのですか？ 
一緒にいた。インドネシアの人たちに私たちが着ていたパンツやランニング何
枚か上げると、食べものを少しくれた。その家に一緒にいてから出て来た。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

057 

インドネシアの人々は、ハルモニがいた家で働いていた人ですか？ 
ええ。「もし、『出ろ』と言われても出るな。じっとしていろ。むやみに出ては
ならない」と、そこのヨニャ、女たちがインドネシア語で言ってくれた。管理人
が私たちを見捨てて行った後、私たちはそこでインドネシアの人に真鍮の容器
借りて、あちこちついて行った。あちらの人が食べるのを見て、私たちもヤシ
の実を採って食べて耐えた。そのうち、そこから出た。

インドネシアの人たちは良くしてくれましたか？ 
悪い事はしない。他の人たちにも。米軍が「出て来て」と言っても、インドネシアの
人が私に「出るな」と止める。怖い。恐ろしかった。あそこに閉じこもっていた。

米軍はどれくらいいましたか？ 
米軍は解放されてから、10日くらいいた。やはり帰る時、「行く」とか「帰る」

とか一言もなく、いつの間にか、どこかへ行ってしまい、跡痕もない。

インドネシアの人の家にどれくらい居て、韓国に戻られましたか？ 
およそ7、8ヶ月いたようだ。

帰国する時、どのように出て来られましたか？ 
船がある町にいた。インドネシアの住民が、「船がいる」と教えてくれた。

数ヶ月も船がなかったのですか？ 
ええ。

他の女たちはみな、どこにいましたか？ 
分からない。みなどこかに行ってしまった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

058 

船に乗って、朝鮮までどれくらいかかりましたか？ 
昼夜1ヶ月かかった。

誰に話して、その船に乗ったのですか？ 
誰かに話したのではなく、私が船長に会って、「この船がどこへ行くかは知らな
いが、乗せてくれ」と言ったら、「釜山に行く」という話だった。私を「乗せてく
れ」と頼むと、何日の何時に来たら乗れると言うから行ったが、お金が一文もな
かった。「荷物を検査する」と言われても、品物もお金になるものはなかった。船

に乗せてくれて、お金は取らなかった。朝鮮にさえ行けば、親兄弟が交通費位な
んとかしてくれるだろうと思い、「連れて行ってくれ」と言った。船長が「それな
ら自分も考えて見る」と、少し考えてから「乗れ」と言ってくれた。

船長は朝鮮人でしたか？ 
ええ、朝鮮人。 船賃は取らなかった。

船に米国人はいなかったですか？ 
私たちが船に乗ったら、米国人がいた。バリクパパンにいた人たちだ。

ハルモニと一緒にいた女たちは船に乗らなかったのですか？ 
ああ、その人たちはいなかった。私一人だけ。 

船には韓国人が多かったですか？ 
ええ、男が多くて、女は少ない。

船でご飯はどうしましたか？ 
船にタダで乗せてくれただけでなく、食べ残しも分けて貰った。タダで食べさ

日本軍「慰安婦」 口述記録集

059 

せてくれるのだから、食器も洗い、洗濯もした。釜山で降りるはずが、コレラの
せいで着けられず、「仁川(インチョン)に船を着ける」と言われて、仁川で降り
た。降りてもお金がなくて。1銭も無いから話にならない、散々だったよ。他人
の家の食器洗いや雑用をして、食べ物を貰った。少しお金を貯めると汽車に乗

り、またお金がなくなると途中で降りて、この家、あの家と立ち寄った。着てい

た服を欲しがられると、少しお金貰って、履物も脱いで売った。そうやってや
っと故郷に帰ったら、親兄弟のところにお金は届いていなかった。母からは、
私が「死んだのか、生きているのか、痕跡も分からなかった」と言われた。

「お金を送る」と言っていたのに送ってくれなかったのですか？ 

そう、家に行ったら、母はいたが、父はすでに亡くなっていた。一文無しで戻っ
たが、私を「死んだもの」と思い込んで、葬式をしたそうだ。

連絡がないから死んだと思ったのでしょうか？ 
私は字を知らないから、手紙が書けない。便りがないから、「どこかで死んだ

と思って祭事を行った」と聞いた。私が文字を知っていて、手紙を書けたら。

最近のように電話のある世の中ならともかく。何一つ連絡がないから、間違い
なく「死んだ」と思い、「祭事をした」と。
 
帰ってから、どのように過ごしましたか？ 
商売をした。魚屋。親兄弟を食べさせて、私も食って生きなければ、どうしよ

うも無い状況だった。

結婚はしませんでしたか？ 
結婚しなかった。あんなことして来て、結婚なんてできるかい。年寄りと会っ
て、少し一緒に暮らしたが、その年寄りは死んだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

060 

お母さんに、どんな体験をしたのか話されましたか？ 
母には言わなかった。口から出せない。でも大体、表情を見て、分かっただろ

う。その時、女の子を捕まえて行くのを見て、何と呼んだか、それを…….。

処女供出ですか？ 
分からない。何か捕まえて行くと言っていたが、「処女供出」のようだ。戻った

ら母が、言っていた。私はそれすら、知らなかった。母は私に期待して、金を

儲けて送ってくれると待っていたそうだ。生活ぶりを見たら、私もだが、母が
可哀そうで。何、あれこれとする話もなかった。

面談日 : 2005年 4月 14日 / 2005年 4月 15日 / 2006年 12月 1日
面談者 : 姜貞淑、朴勝美、
                馬山(マサン)(現在は昌原市(チャンウォンシ) 市役所 金ジェオク

記録文入力・編集 : 尹智炫
記録文校正・校閲 : 李宣姈、尹智炫

A○○  1930年生れ

1943年 9月頃、 慶尚北道(キョンサンプクト)から動員される。

清津(チョンジン)〔咸鏡北道(ハムギョンプクト)の都市〕経由
で、満州の延吉（現在の中国吉林省延吉）に移動、
2年間、日本軍慰安婦生活。

1945年頃、

解放後、徒歩で帰国の途に。同年10月頃、帰国、

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

063 

「満州の工場に行けば、札束を熊手でかき集める」

と言われて

満州へ行った話、して下さい。なぜ満州に行くことになったのですか？ 
わが家は商売をしていた。私が市場にいて、市場に紹介した人の家がある。

「来い」と呼ぶので、「何ですか？」と聞くと「満州の工場に行けば、熊手で

かき集められるほどお金を稼げられる」と言うので、そしたら実家の暮しも良

くなると考えた。私は長女なので、下に弟や妹が何人もいるから「儲けたい」

A○○  1930年生れ

1943年 9月頃、 慶尚北道(キョンサンプクト)から動員される。

清津(チョンジン)〔咸鏡北道(ハムギョンプクト)の都市〕経由
で、満州の延吉（現在の中国吉林省延吉）に移動、
2年間、日本軍慰安婦生活。

1945年頃、

解放後、徒歩で帰国の途に。同年10月頃、帰国、

第 2 話

いっそ死んだ方が楽だった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

064 

と思った。紹介人に「行く」と答えたら、「母にも父にも知らせず、こっそり内

緒で来い」と言う。「家から服の一つでも持って来られないか」と聞いたら、

「何、そのまま満州にさえ行けば、金の札束を熊手でかき集められる」と。ま

だ14歳にしかならない、ガキの私に何が分かる。「満州に行けば金儲けでき
る」、そのひと言で、着の身、着のままで行った。いま思えば、手袋の一つでも
持って行くんだった。でも「そのまま」と言われて、手ぶらで行った。

紹介所の人はハルモニに「札束を熊手でかき集める」と言ったのですか？ 

「満州の糸を解く工場に行けば、金の札束を熊手でかき集める」と言われた。

紹介してくれた人はどこにいたのですか？ 
紹介する人は〇〇面(ハルモニの故郷)にいた。紹介所の事務室は、こんな家庭
の家みたいな部屋だよ。

その人は朝鮮人ですか？ 
朝鮮人だよ。

紹介する人が満州まで連れて行ったのですか？ 
紹介する人は一緒に行かなかった。満州から来た、主人が連れて行った。

主人はどこへ来たのですか？ 
〇〇(ハルモニの故郷)の家に来て、私に「行こう」と言う。日本語で「えーっ! 
できないよ」と答えた。

日本語はどこで習ったのですか？ 学校ですか？ 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

065 

学校なんて、門の前にも行ったことがない。村に日本人の子が沢山いて、日本
の小学校もあった。その子たちと一緒にままごともして、遊びながら日本語を
習った。故郷にいた時、日本語はみな憶えた。

出発する前に慰安所の主人と会ったのですか？ 
ええ、市場で紹介する人に「ちょっと来い」と言われた。座って話をしていた
ら、主人が私に「何歳?」と尋ねる。「14歳」と答えたら、「齢が幼なすぎて、
駄目そうだ」と、紹介所の人と私を連れていく主人が、話をしていた。

当日はどのように行ったのですか？ 
その日は全員、浦項(ポハン)(慶尚北道)駅に集まって、紹介する人が汽車に乗せ
て見送った。○○面からは、私ひとりだった。浦項の子が5人いて、背が高くて
大人のような子もいた。「満州に行くの?」と尋ねるので、私が「満州に行く」
と答えると、「私たちもそうだ」と言う。そして満州まで、一緒に行った。

紹介してくれた人が駅まで連れて行って、主人や浦項の子たちと会ったので
すか？ 
主人に会って一緒に行ったが、途中の駅で次から次にと、どんどん乗せる。大
邱(テグ)でも乗せて、3人一組だったり、2人や5人の時もあった。途中で引率者
から「清津だ。お前分かるか?」と聞かれた。私に何が分かるか、家から10里し
か知らずに、暮して来たのに。

汽車ではずっと、主人と一緒だったのですか？ 
ああ、一緒に延吉まで来た。清津を過ぎて、延吉に着いた。「もう少しで、延
吉だ」と言われ、駅のホームに降りると、「皆、来たな」と確認した。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

066 

たった14歳なのに、子宮が開くかい

延吉駅で降りたのですか？ 
満州の延吉駅で降りると軍用車が来た。トラックのようなのに全員乗せて、降り

たら何か倉庫か工場のようだった。工場なのに機械は一つもない。部屋に扉が
一つずつある。そこが、私たちの暮す所だった。水っぽいお粥のようなご飯をく
れたが、ほんの少ししかない。それでもお腹が空いていたので、口に入れると、

器に自分の顔が映った。その翌日、新しく入って来た人たちと全員、「検査しに
行く」と言われた。私が「検査って何の検査? 身体検査?」と聞くと、「身体検
査だ」と。その時は、まだ殴られなかった。実際、行ってみたら、「横になれ」

と言われた。台があって、そこに横になると、「鴨のくちばしのようなもの」(婦

>>> 

検診台。「慰安婦」に動員された女性は、定期的に性病検診を受けなければならな

かった。検診は慰安婦のためではなく、軍の性病感染による軍事力損失を防ぐため
である。東北アジア歴史財団、『日本軍「慰安婦」とナチスドイツ収容所の強制性労
働』、2007年、24頁収録の写真。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

067 

人科の検診器具)を入れられる。でも、それが入らない。あんなものを見せられ
て、「どうしようか」とかまごついていると、抱きかかえられて検査した。器具
を子宮に入れるのだが、14歳にしかならないのに、子宮が開くかい。その話を
すると、心臓がどきどきする。耐えられない。

落ち着いてお話し下さい。
検査を受ける人の子宮が開かないので、できないのよ。鴨のくちばしのような

ものを、子宮に入れようとしても、たった14歳にしかならない子の、子宮が開
くかい。それで日本語で、自分たちは「出来ない」と言った。私は大体簡単な
日本語ならできる。「ここは一体何をするところ？」と私が聞くと。「慰安婦」
と言うのよ。「慰安婦って何をするの？」と聞くと、客を受け入れて、朝鮮語で

言えば青楼宅、売春婦がいる家だと。それで「こんな所なら私は来なかった。
母や父が知ったら大変だ、死ぬ」と言うと、 主人は私の体をつかんで引きず

って、温室に入れてしまった。ああ、その話、どこまでする。その話をすると、

心臓がどきどきして気が狂いそう。満州、16歳で解放されたが、あまりに殴ら
れ過ぎて、いっそ客を受け入れる方がマシではないかと観念した。お腹が空
いて。(涙声で)こんなことになって、いっそ死んだ方がマシ。こんなことまでし
て、死ぬ方が楽。生きてうちに母や父に会いたくても、奴らに殴りつけられる。
(泣いて息の絶える声)

水でも少し召し上がって下さい。
殴られて、温室の中に入れても殴られ続けて、背骨を叩かれて、指がつぶれる
ほど。こんなに腫れて、ああ(慟哭)。手が痛いのに殴られ続けて。腹が痛くて死
にそうで。殴られて、背筋どれくらい叩かれたのか、殴られて紫色になって。今
だったら自殺しただろう。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

068 

延吉に到着したのは何時頃でしたか？ 
そんなに暗くもなく、明るくもなく、大体5時半か、6時頃。人があちらにいるの
が見えたから、その位だった。

トラックに乗って行く途中、風景が少しは見えましたか？ 

市内だから電気の灯りもあって、家もチラホラ見えた。車はあまり見えなかっ
た。周辺には、中国人の家が多い。

家が多いのですか？ 
中国人の家が多い。中国人もいて、朝鮮人もいて、日本人もいる。

そこの朝鮮人は何する人ですか？ 
何をするのか、それは分からない、私は表に出ないから。閉じ込められて、殴

られて、出る時間がどこにある。

朝鮮人が近くにいると、どうして判るのですか？ 
井戸が庭にあるから、水を汲みに行った。風に当っていたら、女の人が雑巾を洗
いに来た。朝鮮語で話しかけたら「ここには朝鮮人も日本人も、色々な家で暮し
ている」と言う。

その女は何をする人ですか？ハルモニがいる所に一緒にいた人ですか？ 
いや、隣の人。帰ったら家の主人が、「井戸であの人と何を話したか」と聞く
ので、「何も話さなかった」と答えた。

主人は日本人ですか？ 

日本人だよ。男の主人も、女の主人もいる。私が「何も話さなかった」と答え

日本軍「慰安婦」 口述記録集

069 

たら、「この野郎、本当のことを言え」と、やたら殴る。それで「何も言わず
に、故郷がどこかと尋ねただけ」と言ったのに、殴ってから、また温室に入れら
れて、扉に鍵をかけられた。ああ、私が苦労した話。背筋を殴られて、指が折
れて、ここ見なさい。私が朝鮮から出て、その話をするだけで心臓が跳ねる。
息が苦しくて、話できない。

主人がそんなに殴るのですか？ 
ああ、その日本人、慰安婦の主人が。殴られたせいで、今も重い病気だ。

ハルモニ、風に当たりに出て、どれくらい遠くまで行けましたか？ 
遠くへ行けない。井戸をひと回りして戻って来るだけ。その話をすると、息が
苦しい。満州の話をすると、胸がむかつく。外に風に当たりに出ると、隣の中華
料理屋の男の子が、「こんな所って、知らないで来たの」と聞く。それで「知ら
ずに来た」と答えたら、「可哀そうだ」と言ってくれた。

中国の子が朝鮮語をできるのですか？ 
ええ、朝鮮語で。そこの男の子、朝鮮語がとても上手だった。

検査に初めて行った時、受けたのですか、受けなかったのですか？ 
毎週金曜日だったか、「明日は検査に行く」と言われる。私は初めての時、検査
が駄目だったから、一週間に一度行く時は抜けた。二番目にまた「行く」と言わ
れていたので行ったが、相変らず同じことで検査できなかった。医者からも「こ
いつは出来ないよ。」と言われた。すると「これじゃ、客が取れない」とまた殴ら
れて、腫れあがった。倉庫に入れて鍵をかけ、食べ物もくれない。

他の女も、そんなに殴られたのですか？ 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

070 

他の人たちは、殴られない。私が幼くて、客をまともに取れないから。客を一
番取らないと。

では客を取らなかったのですか？ 
客は取ったよ。

何時からですか？ 

15歳になった年から。

客はどんな人ですか？ 
全部、軍人だよ。

ハルモニ、その時生理はありましたか？ 
なかった。解放後、朝鮮に戻ったのは16歳で、その時、生理があった。母に話
すと、「女の体はそうなっている」と言う。だから生理もないのが、満州に連れ
て行かれたのだよ。弟や妹が「満州で何をしていたのか」と聞くから、「糸を
解く工場にいた」と説明したが、今はもう一人残らず人に知られてしまった。
慰安婦という……。ああ、その話をするだけで、心臓が……。

その家に女は何人いましたか？ 
あちこちから集まって来て、20人位になる。

病気かかった人はいなかったですか？ 
週に一度検査するから、病気にかかった人はいない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

071 

検査はどんな所でしますか？ 
歩いて行ったが、そう遠くない所。そこに病院から日本人が来て、検査する。倉
庫のような所で、横になる場所がある。

横になる場所は一つですか？ 
いくつかあったよ。

検査する人は何人もいましたか？ 
いたよ。台一つに医者が一人ずついる。台とは、木のベッドのこと。脚の下を、
見るところがある、ああ。

医者は男ですか？ 
男だよ、全部軍人。軍の医者、軍医だ。

看護婦はいないのですか？ 
看護婦はいない。

いつも同じ家で検査を受けるのですか？ 

うん。同じ家で。

検査を受けに、女たち20人が皆行くのですか？ 
皆行かなければ。

そこは病院なのですか？ 
病院ではない。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

072 

他の患者はいないのですか？ 
いない。そこに行くと検査する台がある。

検査に行った時、ハルモニがいた家の他に、知らない女も来ましたか？ 
来たよ。他の家の女も、たくさん来る。その人たちも検査する。

満州の話をするだけで心臓が飛び出る

他の家は近くでしたか？ 
家がどこにあるのか知らない。検査の日は、みな来る。

他の家の女もみな朝鮮の女ですか？ 中国の女はいませんでしたか？ 

中国の女はいない、全部、朝鮮の女。

ハルモニ、「サック」(コンドーム)って聞いたことありましたか？ 

ウン。それ、使おうとしない奴がいて、使うとする奴もいる。大体皆、使った。

生理もないのに「サック」を使ったのですか？ 
そうだよ、皆、した。病気にかかるかと思って。

「サック」は誰がくれるのですか？ 

主人が皆に、何個ずつかくれる。そして「客を取ったら使え」と、白い薬を一
つくれる。それを飲むと、「病気にならない」と。私は「汚い奴ら」と言って、
飲まずに捨ててしまった。妊娠しないためだという。でもそれを飲まないで捨
てたと、頭をどれくらい殴られたか。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

073 

内緒で捨てたらよかったのに。

とにかく私はその頃、素直だったので、「捨てた」と言ってしまったのよ。そん

なこと言わないで、ただ「飲んだ」と言えばよかった。その頃の私は捨てたも
のは「捨てた」、盗んだなら「盗んだ」と正直だった。

妊娠した人はいませんでしたか？ 
赤ん坊ができた人はいない。私は妊娠しない薬貰っても、捨ててしまって、随
分殴られた。

軍人が何か差し入れしてくれたこと、ありませんか？ 
餅をついて来て、くれた軍人がいた。

お金は？ 

>>> 

当時使われた「軍票」(軍用手票)。鄭慶娥(チョンギョンア)『‘慰安婦’リポート』、

道探し、2006年、146頁収録の図。

〔この口述での票は、帳場で渡された票で「軍票」ではない〕

聞こえてる？ 12人の少女の物語

074 

お金は、まったく知らない。金ではなく、印字した票をくれる。

票を貰ったのですか？ 

ああ、軍人が票をくれると、それを主人に渡す。ああ、死にたい。もう嫌だ。

軍人はいつ来るのですか？ 
土曜日から日曜日。月曜日は将校。馬に乗って来る奴もいるが、将校はあまり来ない。

客を取った後は殴られませんでしたか？ 
その時はもう殴られなかった。一人取ろうが、二人取ろうが同じ。あの行為を
一年中していて、ああ、満州の話をするだけで、心臓がこんなだ。こんな話し
ても、みな分からない。

客はハルモニを何と呼びましたか？ 

「君子」

軍人たちはハルモニたちがいる家のことを何と呼びましたか？ 
知らない。思い出せない。その時は名前があったんだろうが、憶えてない。も

う60年も経つ。ただ、慰安婦の家だよ。

近くに軍の部隊があったのですか？ 
そうだ。日本の軍人の部隊が遠くない。主に将校たちは馬に乗って通う。車に
乗って来る奴もいて、歩いて来る奴もいる。

部隊を見ましたか？ 
部隊は見たことない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

075 

ハルモニの友だち、中国の男の子は何をしていましたか？ 
近くの家で暮して、食事の仕度をした。

その家にも行ったことありますか？ 
近くに朝鮮人や中国人の家があった。でも私は外出できなかった。

ハルモニのいた家は、村の中にあったのですか？ 
村の中だよ。

軍人たちは村の中の、ハルモニのいる家に来たのですか? 
そうだとも。

美しい娘がたくさんいる家に、村の男たちは来ませんでしたか？ 
いや、そんなのはない。主人が恐いから。

ハルモニのいた所にハルモニの写真を貼り付けていましたか？ 
付けない。ただ名前を呼ぶだけ。写真を付けたりは、しなかった。

誰が名前を呼ぶのですか？ 
一度来たことがある奴は、すぐに探せるだろう。何号室とか、一号、二号、三号
室、部屋の名前があるから。私がどこか、トイレや飯を食いに行っていなくても、
奴らが部屋の前で待っている。日本語が上手いので、軍人が私に「お前は絶対
に、朝鮮人ではなく日本人だ」と言う。また日本の軍人の中には、朝鮮語がで
きるのがいた。朝鮮語で「お前の姓は何だ？」と聞くから、「〇〇家」と答える

と、「姓を尋ねると朝鮮人だが、日本語をどこで憶えた？」と聞く。「あんたた

聞こえてる？ 12人の少女の物語

076 

ち相手にして、そうなった」と答えると、「そうか。何しにここに来た？」と言

うから、「お前たちが、いい仕事があると言われて来た。私が女でなかったら、
こんな所に来なかったのに、女だったから。」と返事した。

私の苦労は、天も地も知っている

この脚の傷跡は何ですか？ 

満州に行って、殴られてこうなった。今はこの程度だが、当時はぼろぼろにな

って、傷跡だけ残った。あらゆる所を、みな殴られる。背筋が紫色になって。

>>> 

中国の日本軍指定慰安所。

東北アジア歴史財団『日本軍‘慰安婦’とナチスドイツ収容所の強制性労働』、
2007年、22頁収録の写真

日本軍「慰安婦」 口述記録集

077 

それで脚がとても痛い、アイゴ。今は傷跡だが、当時は脚がこんなに腫れた。
手も腫れているだろ。満州で16歳の時、解放された。解放されて、日本の奴は
みな逃げていなくなった。中国の男の子が、「自分の家に行こう」と言ってくれ
た。行ってみたら、ギョーザを汁で煮て、それを一杯食べたら、またもう一杯く
れた。「日本人は皆出て行ったから、そこにいたらどうか」と言う。「何か食べ
物ある?」と聞いたら、畑からトマトもむしって来てくれて、餃子スープも煮て

くれ、ナムルもご飯も食べられた。それでしょっちゅうそこへ行ったが、本当に

居心地よかった。

隣の中国の男の子ですか？ 主人がその家に行かせてくれたのですか？ 
いや、もうその時は、主人は日本に帰ってしまい、いなかった。私に「一緒に日
本に行こう」という日本人もいた。

誰が言うのですか？ 

日本人の軍人が、「オイ、日本に行こう」と誘った。でも「朝鮮に母も父もい
る。妹もいる。だから朝鮮に帰る」と断った。

名前、憶えていますか？ 
名前は分からない。

ハルモニの所によく来た人ですか？ 

ええ。「解放されたから日本に行こう」と、私に言うの。でも私は「朝鮮に行くか
ら、日本には行かない」と答えた。

帰る時は、どうやって帰られたのですか？ 
その中国の男の子が、解放されたので、私に「朝鮮に行きな。母や父に会

聞こえてる？ 12人の少女の物語

078 

え」と言ってくれた。でも服がなくて、何を着て行くか困っていた。する
とその子が「自分のズボンあげる。上着もあげる」と言ってくれ、それを
着て帰った。豆満江(トゥマンガン)か、大同江(テドンガン)か、船に乗る渡
し場があった。こちら側にはロシア人が立ち、川の向こう側には米軍が立
っていた。そこで来た人たちの体を触って、女だったら中国に再び送り帰
す。私はまだ16歳なので、乳が大きいかい。男の服着ていて、乳は南京虫
のようにぽちっとついただけだから、触っても何もない。それでロシア人
の男が私に「向う側に渡れ」と言った。そこからまた何十里の道を歩いて
行くのだが、足の裏が全部腫れて破れた。行く時も手ぶらだったが、帰り
も着ているものだけで、中国の家で貰って着た服一着だけ。これが全部。
1ヶ月も着ていたら、虱がうようよした。それでその服も燃やして、頭も
丸坊主に刈ってしまった。

[妹の話] 
姉さんが帽子被って、日本の服ではなく、黄色い中国の服、人民軍の服み
たいのを着て、地下足袋を履いて「お母さん～」と言って入って来た。「二
ヶ月間、歩き続けた」と言う。服は綿を入れてあるようだが、あちこちほつ
れてしまい、まともに縫ってもない。中国のぼろい服、中国の帽子に頭はす
っかり丸坊主で男のよう。そんな恰好で来たので、母が驚いて、後に転ん
でしまった。

一緒にいた人たちも皆、出て来たのですか？ 
3、4人一緒に出て来た。その時の私の名が「キミコ」で、他に「ミヤコ」、「ユ
キコ」、「ハルコ」もいた。でもみな、途中でちりぢりに別れた。満州から出て
来ても、腹が空いて大変だった。畑に入ってトマトも採って食べ、植えてある
ジャガイモを掘って食べた。どこなのか分からないが、朝鮮人の家に入って、

日本軍「慰安婦」 口述記録集

079 

「ご飯少し下さい」と恵んで貰ったりした。すると「苦労して帰って来たのに、

ご飯があれば、もっとあげるんだが」とくれた。喉が渇いて、水もスプーン一

匙飲んだが、一刻も早くわが家に戻りたかった。朝鮮にさえ行けば、自分の家
に戻ったら、キムチに麦飯を食べられる。早く帰りたくて、夜も歩いた。そして
眠くなったら、どこでも倒れ込んで眠った。私の苦労は、天も知っている、地も
知っている。

面談日 : 2006年2月9日/ 2006年5月24日
面談者 : 金ウンヒョン、朴勝美、尹明淑
立会人 : A○○ハルモニの妹

録音文入力 : 禹栄頌、
録音文編集: 尹智炫
録音文校正・校閲 : 李宣姈、尹智炫

聞こえてる？ 12人の少女の物語

080 

A〇〇ハルモニは委員会の調査官に被害事実を打ち明けてから、4ヶ月
後に亡くなったという。本来、ハルモニの被害内容は面談当時、立ち会

った妹さん以外、他の家族は知らなかった。2005年、ハルモニが委員

会に被害申告をして、娘さんも被害内容を知ることになった。ハルモ
ニの妹さんも死亡してしまった現在、娘さんが被害内容を知る唯一の
家族だ。
ハルモニは日頃、突然びっくりしたり、寝ていてパッと起き上り、タバ

コを吸ったりした。また、日本軍慰安婦の被害者がTVに映ると、チャン
ネルを他に回したり、TVを消してしまったりした。娘さんは母の行動が
変だとは思ったが、詳しい理由は知らなかった。娘さんは母の過去の

話を初めて聞いて、「母がそんなに苦労をしたのに、私は今まで知らな
かった」と、胸打たれたという。娘さんは自身も、娘を育てた女性とし
て、母の痛みを後になって知り、共に痛みを分かち合えなかったこと
が、心痛むと話した。娘さんは母のような被害者が再び出てこないこ

とを願うと言って、口述資料の利用に同意してくれた。

◆ 

面談後記 ◆

B○○  1927年生れ

1941年頃、

慶北(キョンブク)大邱の親戚の家の前の路地から動員される
大邱駅で汽車に乗り、満州のハルビン(現中国黒龍江省哈爾
濱市)に移動 ハルビンで4年間日本軍慰安婦生活

1945年 9月頃、 帰国 

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

083 

娘さん、ちょっといっしょに行かないか

ハルモニ、お齢はお幾つですか？ 
私は…、79です。

どうして、行くことになったのですか？ 
あそこへ私は本当に幼い、15歳で行った。今でも姉弟の間で、それをどう表現
する。ただ、「行った」、それだけで分かるだろう。昔はみな、村で女をやたら

B○○  1927年生れ

1941年頃、

慶北(キョンブク)大邱の親戚の家の前の路地から動員される
大邱駅で汽車に乗り、満州のハルビン(現中国黒龍江省哈爾
濱市)に移動 ハルビンで4年間日本軍慰安婦生活

1945年 9月頃、 帰国 

第 3 話

お前らだけで戦争して来たのか、
お前らのせいで大病にかかった

聞こえてる？ 12人の少女の物語

084 

捕まえて供出された。ああ、私も避けたかった。逃げようとした。大邱に遠い
親戚一家がいた。その時ハルモニと呼んでいた大邱の〇〇洞の親戚が、私の
家に来て、私一人で大邱に行った。供出されるのを避けようと、母が「連れて
行ってくれ」とハルモニに頼んだようだ。

大邱の親戚の家は裕福だったのですか？ 
貧しかった。何か商売していたようだが、ハルモニは毎日村を廻って、お米を
売っていた。その時は米が貴重だった。日本人が「全部供出しろ」と言って、
米がなかった。うちでも母は真鍮の器に、隠していた。ところが隠していても、

日本人巡査がひっくり返して全部探す。巡査は長い刃物を持っていて、本当に

恐かった。現れると、顔を見ることもできなかった。巡査と聞いただけで、誰も
出ていけず、家の奥でブルブル震えていた。

捕まらないように大邱へ行ったのですね？ 嫁に行く話はなかったですか？ 
嫁に行くところなどなかったよ。その頃は何かあるとすぐに、「嫁がせる」と言

った。なのに、私は捕って。徴用に取られて、未婚の男性もいなかった。嫁入り
できたら良かったのに。捕まって、あんなことさせられるとは思わなかった。15

歳にもならないのに、昼夜、何年も。ああ、話…。

大邱に行ったのはいつですか？ 
数えで、15歳で行った。

大邱に行って、すぐに捕ったのですか？ 

うん、一週間後に捕まった。すぐ近くに親戚の家があって「遊びに来い」と言
う。そして遊びに来って、その家から出て来たら朝鮮の人が、「娘さん、話が

少しある。是非、行こう」と言われた。田舎者だから、ただそれだけで、ついて

日本軍「慰安婦」 口述記録集

085 

行った。母が勉強もさせなかったので、私は字も知らなかった。

何を見に行って、捕まったのですか？ 

15歳で何も知らずに、ただ遊びに行っただけ。田舎娘が「遊びに来い」と言わ

れて出かけて、親戚の家から出たら朝鮮の人が是非「娘さん、少し行こう」と
言うから、ついて行った。それで捕まった。いくら「行かない、嫌だ」と断って
も、「ちょっとだけ行ってみよう」と言われて。

どこで、ですか？

 道端で、「行こう」と言って。

>>>

『連行される』日本軍慰安婦被害者、金順徳(キムスンドク)の作品 

ナヌムの家/日本軍「慰安婦」歴史館資料提供

聞こえてる？ 12人の少女の物語

086 

その時、ハルモニ一人だったのですか？ 
一人で道角にいて捕まった。行くと、男が一人いた。そいつらは日本語で話し
ていた。

朝鮮人ですか？ 
朝鮮人が私を連れて行ったら、そこに日本人が一人いた。そいつは朝鮮語がよ

く解らなくて、朝鮮人を手先にしたようだ。

ハルモニ捕まえた朝鮮人の訛りはどうでしたか? 大邱の人のようでしたか？ 
言い方が、大邱の言葉ではなかった。

ハルモニをどうやって見つけたのですか？ 
道端で見つけただけだよ。

なぜ、そんな見知らぬ人について行ったのですか？ 
手を握って、「何かあるから、行こう」と言われて。その頃、どれくらい私がバ
カだったか。最近の子なら、ついて行かないだろう。行くと頭が丸坊主の男が
一人いて、そいつら同士、日本語でああだ、こうだと騒いでいた。

どこへ連れて行かれたのですか？ 

連れて行かれた場所は、あまり遠くない。〇〇洞からは近かった。角を曲る

と、昔の小さな〇〇路地市場がある。連れて行かれて所は、旅館のようだっ

た。部屋には子どもたちが十何人いた。私だけでなく、女たちでぎっしり埋ま
った。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

087 

市場なら、人が沢山いたでしょう？ 
多かった…。その時は幼くて愚かで、手を握られたまま「放せ! 放せ!」と田舎娘
が大声で叫べるかい。「行けば分かる」と言われて、行っただけだよ。

ハルモニを捕まえた人は、どんな格好でしたか？ 
背が少し高くて、面長。齢は50越えた、年寄りだよ。

どんな服装でしたか？ 

服は朝鮮服のようだった。チョッキ羽織って。上は白いチョゴリ(上着)着て、下
はしわしわのズボンを履いていた。

そこにいた子たちは何歳位でしたか？ 

15、6歳、みな同じ位。歳取った人はいない。

様子はどうでしたか？ 
ただこうやって座っていた。スカートはいた子もいて、モンペみたいなズボン
はいた子もいて、韓服を着た子もいた。

ハルモニはどんな格好でしたが？ 
私は粗末なズボンをはいて、韓服みたいのを着ていた。

髪形は？ 
髪は短かった。背も小さいし。

ハルモニが行く時、生理はありましたか？ 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

088 

あったよ。私は早かった。15歳になる年にあった。

そこにいた子たちと話をしましたか？ 
引率者がいない時、「どこへ行くの？」と聞いた。「知らない。私たちも捕まっ
て来たから」と言う。殺されるかと思い、怖くてじっとしていた。一晩寝たら、

「行こう」と言われた。

誰が？ 

日本人と朝鮮人の奴らに、「行こう」と言われた。

日本人はどんな格好でしたか？ 
日本人は背が高くなく、平たい顔していた。こいつが皆を連れて行った。女を

連れて来て、人に引渡してお金受け取る。私たちを連れて行くと、「汽車に乗
れ」と言う。

日本人は朝鮮語を少しは話しましたか？ 

朝鮮語はできない。二人で、日本語だけを話していた。

旅館のような所で、ご飯は貰いましたか？ 

ご飯は、どこかから買って来てくれたよ。汽車に乗ってからは、何も食べられ
なかった。満州に着いてからも、食べられなかった。ああ、ご飯らしいものは

3、4年間、一度も食べられなかった。満州の原っぱでは、飯がカチカチに凍っ
て食べられなかった。おかずもない。

満州までは、どうやって行ったのですか？ 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

089 

そいつらが、連れて行っただけ。

どこで汽車に乗りましたか？ 

大邱で乗った。今の東大邱(トンテグ)ではなく大邱駅。途中、どこかで「奉天
(ほうてん)」(現在の瀋陽）という声が聞こえた。でも地名を言われても、よく知

らなかった。

日本の男と朝鮮の男も、一緒に満州まで行ったのですか？ 

一緒に行った。やつらは私たちを連れて行くのが役目だから。私たちは、どこへ
行くのか知りようもない。捕まって連れて行かれただけ。奴らはまた、捕まえに
出かける。

途中でハルモニに何と言いましたか? どこへ行くか、心配でなかったです
か？
私が何を知っている。ただついて行くだけ。「どこへ」と聞いても、「行けば分
かる」と言うだけ。

誰が話したのですか？
あいつら、引率者がした話だ。「ついて行けば分かる」と。

途中、ご飯はどうしましたか？
汽車でパンのカケラくれた。ご飯はくれなかった。

ずっと汽車にだけ乗ったのですか？
ずっと汽車にだけ乗った。汽車の中でまる二日、夜を過ごして、ハルビン駅で

聞こえてる？ 12人の少女の物語

090 

降りた。どこなのか知らなかったが、少しいて、やっとハルビンと分かった。

初めて軍人の横で寝ろといわれた時は…

汽車から降りたら、どんな景色でしたか？ 
ハルビンで降りたら、荒野だった。ある家で引き渡されたが、荒野で何もな
い。他に家もない。そこには朝鮮人がいなかった。

ハルビン駅で降りてから、どうしましたか？ 

トラックのよう車が来て、それに乗った。

>>> 

中国の戦線でトラックに乗って移動する慰安婦。村瀬守保『私の従軍中国戦線』、

日本機関紙出版センター収録写真

日本軍「慰安婦」 口述記録集

091 

運転は誰がしたのですか？ 
運転は日本人がした。

軍人ですか？ 

日本の民間人。軍人なら軍服着ているから、軍人ではない。

運転していた人を、その後も見ましたか？ 
見てない。その時だけだ。

女たちを乗せた車は、何台来たのですか？ 
一台だけ。そこに沢山、20人以上乗った。

みな、大邱から一緒に行った人たちですか？ 
そうだよ、大邱から。

途中で乗った人はいなのですか？ 
途中から入って来た人いたよ。後でまたどこかから入って来たが、大邱からた

くさん来た。全部が大邱ではなく、慶尚道(キョンサンド)の女。全羅道(チョル

ラド)出身の人はいなかった。

みな朝鮮の女でしたか？ 
そう。朝鮮の女。

車にどれくらい乗りましたか？
車にはそんなに長く乗らなかった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

092 

その時は昼でした? 夜でした？
陽がみな沈む、夕暮れ時だよ。

満州に行ったのは寒い時でした? 暑い時でした？
その時は寒くもなく、秋頃だった。少しいたら寒くなって、「これじゃ辛くて生
きて行けない」と思った。本当に満州の原っぱ。

大邱でから連れて行った日本人と朝鮮人とは、いつ別れましたか？
そいつらは連れて来て、少し経ってから…、20日くらいでまた、「行って来る」

と言い残して、どこかへ行ってしまった。女を連れに行ったようだ。私は大体

そこに一年くらいいたが、奴らはさっと来ては、また出て行く。

その人たちは来るたびに、何か言いますか？
来るたびに「元気か」、この子たち「逃げなかったか」、そんな風に私たちの様
子を見ると、また出かけた。そして新たに、何人か連れて来る。

家の様子ははどうでしたか？
行ったらテントの家だった。家でなくて部屋だけが、一間ずつずっと並んでい
る。また向い側にも小さい部屋がひとつずつあって、一番端に便所がある。ボ
イラーも部屋になく、黒い石炭で火を焚いても、物凄く寒い。

部屋ごとに火を焚くのですか？ 
ああ、オンドルはなく、壁側で火を焚いて温かくする。全部の部屋が、みなそ

う。暖かくない、電気もない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

093 

家に主人がいるのですか？

日本人がそこの主人で、ご飯くれる。

床で寝ましたか？ ベッドがありましたか？
ベッドはない。布団は良くない、薄いのを二枚だけくれる。

床はどうでしたか？

「畳、畳」これくらいの。二畳のもあって、一畳のもある。少し広い部屋は、畳

二畳。またずる賢い子がいて、少し大き目の部屋はそんな子が占める。

ハルモニの部屋は何枚でしたか？
 私は一畳半。狭い。

その部屋は何時くれましたか？
着くとすぐに、連れて来た日本人が「(部屋に)入れ」と言う。部屋ごとにみな犯
された。行った人はみな犯された。その翌日から、…やられる。この世で初め
なのに。軍人が「横になれ」と言う。そいつがコンドーム被せる。私は軍人に、

「絶対に、そんなことできない」と抗議した。日本語が分からないから、韓国語

で「できない、できない」とだけ。しかしあいつらは構わずにつかみかかって
来て、それをはめるんだ。内がはり裂けそうだった。一度、医者が来て、薬を
塗ったが「一週間程経てば、大丈夫だから、また、軍人を受け入れろ」と言っ
た。そして嫌がると罵声を浴びせて、親分が思いっきり殴る。

親分って誰ですか？ 

この家で女たちを引き継いだ親分。私は幼いのに毎日、犯されつづけて、腿の

つけ根がずっと痛い。その時、齢は幼いし、あいつらは年上で、無条件、「量

聞こえてる？ 12人の少女の物語

094 

だけさばけ」と命令する。私が痛いことなど、知ったこっちゃない。私たちに病
気があると困ると、日本語で「サック」って言うのを、利用する。洗うことを日
本語で「洗浄」と言うが、「洗浄」する場所がある。

「洗浄」は、どこでするのですか？ 

廊下の角を曲がると、風呂場みたいな「洗浄」する所がある。全員、軍人とやっ
たら、「洗浄」することになっている。別の人とやる前に、きれいにして置く。

それでは軍人1人出て行くと「洗浄」して、また1人出て行ったら「洗浄」す
るのですか？ 
そうだよ、汚くて。1人出て行けば「洗浄」して、また1人出て行けば「洗浄」する。

出て行ったらまた、次の軍人が来る。来たらまた受け入れる。

ハルモニは外に立っているのですか、部屋の中で待っているのですか？ 
外に立っている。部屋の外の「廊下」みたいな所で、客が来たら私たちを連れ
て入る。

1人終わると、再び「廊下」に出るのですか？
そう。出なくても、また訪ねてくる奴がいる。続けて来た奴が、また来ることも
ある。扉叩いて。ああ、口では言えない。

軍人を受け入れたくなければ、受け入れなくても良いのですか？
駄目だよ。受け入れなかったら、管理する人から何されるか、やたら罵られる。

軍人と喧嘩したことありますか？ 
軍人と喧嘩した女は、余りいない。軍人が刃持って、やたら大威張りしている

日本軍「慰安婦」 口述記録集

095 

のに。刃物身につけて、やたら「殺すぞ」と言う。だから「部屋に入れ」と言わ
れたら、入るしかない。ある女が「入りたくない」と騒いだが、やつらが力づく
で、犯した。

性質の悪い軍人が殴ったりしませんでしたか？ 
優しい人もいた。こちらが「日本語分かりません」と言うと、「はい、そうです
か」と言って。乱暴な軍人は酒飲んで、「こいつら、バカだ」と、罵る奴もい
た。殴られるかと思って、怖かった。ああ。

「サック」はどこで用意するのですか？ 

奴らが持って来る。軍人が持って来た。

「サック」なしでやろうとする奴はいませんか？

いない。全部、皆持って来る。

酒に酔った奴とも、すべてするのですか？
酒に酔った奴は、来たら直ぐ関係持って、終わったらさっさと出て行く。私た
ちが早く追い出す。

ハルモニは行ってまず検査しましたか？それとも先に軍人を受け入れさせら
れたのですか？ 
検査せず、そのまま軍人を受け入れた。もう痛くって、口では言えない。その
時、軍人を一人、二人受けて、痛くて倒れ込んでしまった。どれだけ泣いた
か。一緒に行った私より年上の子が、「泣くな、私たちが悪いんじゃない」、

「私たちの運命が汚くて、こんな所に選ばれて来た」と慰めてくれた。それで

私は最近、恨みを晴らそうと寺に通う。夜通し祈って、朝になって帰る。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

096 

ハルモニ初めての軍人の名前思い出しますか？ 
知らない、知らない。

初めてで出血して痛がっているのに、哀れには思わないのですか？ 
軍人が私たちに、神経なんか使うかい。

初日に二人だけして「痛くてできない」と言ったら、軍人がもう入って来な
いようにしてくれたのですか？
初め「痛くて到底できない」と、そこでご飯くれたり、台所仕事する人に話した。
私は日本語ができないから、日本語の上手な人が代わりに言ってくれた。そし

たら少し休ませてくれた。その後は昼も夜も「兵隊さん」の相手だ。夜寝ていて
も、疲れさせるのがいる。

どう疲れさせるのですか？

腹の上に昇って、下りない奴がいる。苦しい。初めてそんな所に行って、犯さ
れてみなよ。犬でもあるまいし。その話をすると、頭が痛くなる。

そんな軍人に、どう相手するのですか？

「出て行け」とさっさと追い出したさ。

管理人は、厄介な軍人に何か言ってくれないのですか？
あいつらは「誰でも受け入れろ」と言って、何もしてくれない。憲兵隊や軍人
が恐いんだ。兵隊の中には酒を飲んで来る奴もいるが、戦争やって来た奴らだ
から、何を言っても効果ない。私が思わず「お前らだけで戦争しているのか。
私たちはお前らのせいで大病にかかった」と韓国語で言ったら、「お前ら！私

日本軍「慰安婦」 口述記録集

097 

たちも人間だ。誰でもここまで来たら、皆同じように可哀想じゃないか」と、日
本語の上手な子がそう言った。日本語知らない子も、大声で叫んだ。叫べばあ
いつらも、表情から判ったようだ。

行く前に日本語少しはできましたか？
分からないよ。どうやって日本語を憶えるんだい。

行ってから憶えたのですか？
行って少しだけだ。きちんとできない。でも「飯食え」だけ分かる。名前呼ば
れると朝鮮語で女たちが、「マサコ、どこへ行った」と言い、「ここにいる」と
答える。それもそこで付けられた。「マサコ」が、何なのか判るかい。「ハル

コ」とか何「子」とか、そんな名前も、みな忘れてしまったが…。でも互いに可

哀そうに思い、泣く子もいた。病になる子も多かった。

無条件、何も分からない幼い子たちを引っ張って

中に入る。

そこの女はみな朝鮮の女でしたか？
そうだよ。満州に、日本の女は一人もいなかった。

女は全部で、どれ位いたのですか？
私たちのテントだけで、50人以上いた。奥へ進むと曲がって部屋が一つずつあ

り、もっと行くと、部屋がまたある。大体50部屋はある。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

098 

ええっ、一軒に部屋が50個ですって？ 
50個以上だよ。台所仕事する人の寝る部屋もあるから。結構大きかった。

家の真ん中に廊下があるのですか？ 
そう、真ん中に廊下がある。廊下に軍人がどんどん入って来る。ひとつのテン

トがぎっしりになって、毛布がぱっと敷かれると、手を握って中に入る。

ハルモニのおられた村に、そんな場所が…。
2ヶ所！50人ずついた。上の家は大きいからもっと多かった。そこにどんな子が
いるのか、あまり一緒にいなかったので分からない。私たちの所は、大邱や慶
尚道の子が多い。上の家のことは分からない。

ハルモニが行った時、もう既に女の子がいたのですか？ 
いなかった。私たちが一番目。最初にそこに着いたが、どれだけ寂しかったか。

初めハルモニと20人程いて、後でまた来たのですか？ 
そう。それで50人近くになった。

ハルモニが初めて行った時、家は新築でしたか？ 
新築ではなく、少し古い家。上は屋根でなく、テントみたいなものの上に石こ
ろを載せた。床があって、こちらが部屋で、部屋、部屋、また、部屋。壁に穴を
開けて、火をくべる。壁はセメントのようだった。

上の家には、ハルモニが来る前から女の子がいたのですか？ 
上の家には、いたようだ。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

099 

ハルモニが来る前からいたのですか？ 
そうだよ。家の中には入ってないが、近所にその家と私たちの家の2軒しかな
かった。

軍人がたくさん来るのですか？

「兵隊さん」が毎日、たくさん来る。日曜や土曜、週末はぎっしり来る。四方が山

で、私たちはその真ん中にいた。山の中に部隊があって、私たちのような家が2
軒あった。50人、来る日もある。

一日に何人位来ますか？ 

日曜日、土曜日は、一日に7人とか、5人とか、6人とか。夜は自分たちが部隊を

守るので、昼間に「交代」でドンドン来る。無条件、何も分からない幼い子た
ちの手を握って、中に入る。入って接して、また接する。半月に一度、日本人
が、病気が有るか無いか検査する。全員一列に立って並ぶ。膿が少しでもあると

医者が軍人と接触できないように、全員検査する。土日は上下の家が「交代」で

「勤労奉仕」に行き、「兵隊さん」たちの服を縫う。「勤労奉仕」って軍人の服

を縫うこと。女たちが週に一度、軍人の服を縫ったり、靴下を縫ったりする。で
もそこがとても寒かった。

土曜日は軍人がたくさん来るのに「勤労奉仕」に行くのですか？ 
土曜日にたくさん来るが、来ない時もある。全員一緒に行くのではなく、一軒
から行くと、他からも来る。私たちが行く時は、昼間は客を取らず、夜だけ取
る。夜、客を取って、昼間はそこで働く。

「勤労奉仕」は、どこでするのですか？ 

働く家がまた別にある。倉庫のようなところに台が置いてあって、両側に人が

聞こえてる？ 12人の少女の物語

100 

二列に座って、一日中働く。

そこへはどうやって行くのですか？ 
軍人の車に乗って行く。

「勤労奉仕」に行くとご飯は、少しはマシでしたか？ 

食事はご飯と薄い味噌汁みたいな汁をくれる。朝鮮風の味噌ではなく、何が材
料かもわからない。それをくれたら食べて、夕方５時に帰る。

新しい服を作ったのですか？ 
古い服を縫って、ぼろな靴下も縫う。破れた所を縫らないと着られないだろう？

縫う服は、誰が持って来るのですか？
 誰かが部隊から持って来て、置いて行く。全員軍人だが、新米兵が持って来た
のだろう。そんな仕事もさせられた。

清掃はどうしましたか？ 

自分の部屋の清掃だけした。

洗濯は？ 
洗濯なんて、そこに洗うものなんてあるかい。服は、ほとんどなかった。

どんな服を着ましたか？ 
ズボンみたいの一つくれて、それを穿いていた。他の子たちの中には、日本の

「着物」着た子もいた。年上の人。その人たちは少し学校に通って日本語も上

日本軍「慰安婦」 口述記録集

101 

手だったから、話が通じると「兵隊さん」が喜んだ。私は幼くて無学で、何が
何なのか分からず。ただ「ああしろ」と言われたらああして、「こうしろ」と言
われたらこうするだけだった。楽しみ等なかった。解放されて九死に一生で帰

って来た。一度に30人くらい来たが、後の人たちはどこへ行ったのか分からな
い。日本に行った子も多い。

ハルモニも着物着たのですか？ 
着ていない。「着物」なんかで、着飾って何をする。「着物」は着方も知らな
い。「着物」を着た知合いは、そこに二人いた。私たちは皆「ズボン」をはいて
いた。パーマもなしいし、ストレートの髪のまま。

「着物」を着て、写真を撮ったことありませんか？ 
「着物」を着たこともなく、写真も撮らない。田舎で飯もろくに食べられず、あ

の醜いことだけ、「やれ」と言われた。

軍人たちはハルモニのいた家を何と呼んでいましたか？ 
何と呼んでいたか、それは知らない。

誰がハルモニに名前を付けたのですか？ 

日本人の連れて来た奴に、勝手に「マサコにしろ」と決められた。そう、「マサ
コ」だよ。自分の名前はまだ忘れてない。

部屋にハルモニの名前が書いてあったのですか？ 
入口に「マ、サ、コ」と書いてあった。みな名前があって、入口に全部名前を書

く。軍人が名前を見て「いるのか、いないのか」と、部屋をトントンとノックする。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

102 

紙に書くのですか？ 木に彫るのですか？ 
ただの紙だよ。

名前は誰が書くのですか？ 
誰か知らない。入口に「マサコ」、「ハルコ」、「ヨシコ」、「トシコ」ってみな
書いて貼ってあった。人が多くて、どこに誰がいるか分からないから、部屋に
貼ってある名前を見る。すると、ここは「マサコ」だ、ここは「ヨシコ」だと判

るじゃない。私は少尉一人が本当に好きだったが、解放されてその人が、どこ
へ行ったのか、日本に行ったのか分からない。私は自分だけで戻った。

その少尉とはいつ会ったのですか？ 
行ってから一ヶ月ぐらい後に会った。「幼くて可愛い」と可愛がってくれた。今
も生々と憶えている。

少尉の名前を憶えていますか？ 
分からない。あの人が私の名前を見て、部屋に入って来る。

その少尉もハルモニを好きだったようですね？ 
分からない。

ハルモニにどう接してしてくれたのですか？

「可哀想だ」と言ってくれた。来ると一日、横になって帰る。その時のお金で、

千円や、二千円くれて帰る。

その金は日本のお金ですか？ 

日本のお金だよ。だけど、使うところがない。買って食べる所もないから、お金

日本軍「慰安婦」 口述記録集

103 

はまるで必要ない。その時、送金する方法など知らなかった、手紙の書き方も
知らない。出て行く人は誰もいなくて、入って来るは人はいる。手配する奴ら
だけ、出入りする。日本人が全国を巡って、女の子たちを捕まえて届ける。昔
は供出する時は、徴用に行く男たちも、やたら力ずくで捕まえた。ああ、太腿の
つけ根が痛む。毎日横になって、押さえても。最近の子だったら、本当に…。死
ぬ思いだった。その時はただ、何も知らなかった。

少尉は一度来ると、どれ位いたのですか？ 
昼の12時頃に来て、一日いた。朝早くは来ない。夕方5時か6時になると帰って
行く。

少尉は長居できたのですか？お金を多く出したんですか？ 
そうだ。訳は分からない。早く帰らなくても構わなかったようだ。

軍人は好きに長居したり、すぐ出て行ったりするのですか？
そうだよ。すぐ出て行く人。ぴったり一時間ずつだよ。出て行くと、また入っ
て来て、出て行って、また入って来る。「体が痛くて無理できない」と言うと、
あいつらも人間じゃないか？すると「許してあげる」と言うんだ。「休め」と言

う。位の偉い人は一ヶ月に一度くらいしか来ない。みな、二等兵。星一つ、二

つ、三つのが、土日にたくさん来る。

それならその少尉も、一ヶ月に一度訪ねて来るのですか？ 

うん。

少尉はハルモニがハルビンにいた間、ずっと来たのですか？ 
いや。二年くらい来た。自分の家に行ったのか、分からない。除隊したのかも

聞こえてる？ 12人の少女の物語

104 

知れない。

軍人は皆、軍服を着て来るのですか？ 
そうだよ。 軍服着ない軍人はいないだろう？

服を着替えて来る軍人はいませんか？ 
いや、いない。みな幕舎の軍人たち。向う側に兵舎があって、あちらにもう一軒

あって、真ん中に私たちがいる。

部隊が近くにあったのですか？ 
そうだよ。近くの山の斜面にある。ぐるりと廻った、向う側の急斜面にもある。

>>> 

慰安所の前で順番を待つ日本軍。

村瀬守保『私の従軍中国戦線』、日本機関紙出版センター収録写真。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

105 

そこで訓練するのですか？ 戦場にもそこから出かけるのですか？ 
弾丸が飛んで来たら、戦闘が始まるだろう。そこが戦場になる。

爆撃して戦争が起きたのは見なかったのですか？ 
見なかった。そこでは戦闘が起きなかった。爆撃に備えて、防衛のために駐屯

していたようだ。でも飛行機が爆撃に来ると、驚いてみな火を消す。「少しで
も、火が見えてはいけない」と。

犯されなかった人などいない。
ああ、誰がそれを防ぐ。昼も夜も…。

管理者はどんな人でした？ 

日本人だ。朝鮮人はいなかった。絶対入って来れないし、近所にも住んでな

い。日本人しか暮してない。私たちが接待するのは、軍人だけ。

管理者を何と呼ぶのですか？ 

「何とかさん」と呼ぶ。

管理者は何人いましたか？ 
何人…。二人だ。食事の仕度するのと、火を焚いたりするのが。

男ですか？ 
男だよ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

106 

その人たちは軍人ですか？ 
軍人ではない。

管理する人の地位は高いのですか？ 憲兵が高いですか？
憲兵が高い。管理者は軍人と級が同じ位。

どうして判るのですか？

星を見たら判る。星がひとつ、二つ、三つ。それ見たら判る。

管理人にも星があるのですか？
星をつけたり、つけなかったりする。部隊の中で管理人やお手伝いの人を、日
本語で「軍属」と言うじゃない。

ハルモニを管理する人とお手伝いは同じ人ですか？
そうだよ。そういう人たちだ。

ハルモニを管理する人も「軍属」ですか？
そうだ。軍人と一緒に出入りする。われわれが部屋にいると、鐘を鳴らして

「飯を食え」と大声で叫んでまわる。ご飯食べに行く奴は出て行くが、食べな

い奴は行かない。

食堂が別にあるのですか？
 部屋だよ。食堂なんてどこにある。部屋に長い板を置いて食べる。おかずなん

てホンの少しで、それが一皿ずつ。カチカチに凍って、味もまずい。満州の原っ
ぱで、飯もまともに食べられなかった。満州に行った人に、聞いてみな。寒くて、

日本軍「慰安婦」 口述記録集

107 

キムチもカチカチに凍って、味などしない。水っぽい白菜の葉っぱ、枯れそうな
のを漬けて、カチカチに凍ったキムチ。肉の汁、一杯くれない。他に何もない。
買って食べる所もない。

管理する人も一緒に食べるのですか？
食べるのを見てない。あいつらはあいつらで食べたのだろう。

管理人の齢はどれ位でしたか？
年寄りではない。若い。30を少し越えたくらい。

病気にかかったことはありませんか？
病気は一度もかからなかった。用心して、「サック」をしたから。日本人は徹底

しているよ。検査して病気だと、軍人を取らせない。

検査はどこでするのですか？
検査するための家がある。病院のような所に、医者が来る。台に上って足を広
げて、機械のようなものを入れて検査する。すべて見る。

家は遠いのですか？ 
歩いて行く。そう遠くない。

検査する日があるのですか？ 
ある。一ヶ月に二度、半月に一度ずつ。

そこにいる女は皆、一緒に行くのですか？ 
一緒に行く。およそ50人になる。上の家からも。翌日、行く子もいる。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

108 

すると検査の日は家が空ですか？ 
そうだよ、検査するから。検査する人は、偉い人のようだ。軍人だ (軍医のこ

と)。検査の間は客を取れないが、検査が終ればまた軍人を受け入れる。入れ

て、入れて、入れて、常に。それが仕事だ。ああ今、こんな体投げ出しても、金

くれるかい。客から紙切れ一枚貰うと、お金くれる。でも、お金貰っても、使う
ところがない。どこか行って、買って食べる店もない。ある子は「片づけろ」と

怒鳴りちらし、「○○の奴ら」と韓国語で悪態をつく。乱暴な子はそうやって、
ぎゃあぎゃあ大声で騒ぐ。「おい、○○の奴。人が死ぬと言っているのに」。乱
暴な子はそう言って飛びかかるが、口だけだ。そうやって犯されたことのない
人には、わからない。やられた人なら、わかる。誰がそれを防いでくれる。昼も
夜も…。メンス(月経)があると、受け入れない。

受け入れないと、何をするのですか？ 

じっとしている。部屋で座って、横になり寝る。どこか他に行く所があるかい。

外出は全くできなかったのですか？ 
外出は誰もできなかった。

着る服が足りなくなったら？ 
なくなっても放りっぱなし。着ている服のまま、買いに行ったりしなかった。な

くなれれば、軍人が持って来る。どんな服着ていたのか、ろくに着られなかった

か、それも忘れた。服3、4着あれば、数年着る。買ったこともないし、売る店もな
い。こんな戦場に店があるかい。

化粧もしませんでしたか？ 
化粧品もない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

109 

化粧する人はいなかったですか？ 
いなかった。「クリーム」一つくれて、それを塗って。化粧もしなかった。

クリームは誰がくれるのですか？ 

日本人の「兵隊さん」が一つずつくれる。兵舎から石鹸を持って来てくれる人も

いて、乾パンもくれた。乾パンが一番美味しかった。近くに店もないし、「兵隊さ
ん」から毎日もらった。将校からは、「可哀想だ」とお金を貰った。中には、良い
人もいた。「どこに住んでいた」、「なぜ来たか」と聞く。私は「お前たちのせい
で来た」と答えた。

「着物」を着ている人も化粧しなかったのですか？ 

化粧しなかった。塗る口紅もない。「クリーム」という、変なのをベタベタ塗
る。他人が化粧するのを見たことがない。部屋にはいつも軍人がいて、他人の
部屋には入れない。若かったから、顔を洗っただけで化粧はしない。軍人たち

も、何も言わない。若くて齢がまだ15、6歳、何が判る?

歌ったり踊ったりしませんでしたか？ 

しなかった。私たちは純真な子たちだけがで、歌は一度も歌えなかった。歌う

人もいなかった。酒飲む人もいないし、飲む所もない。

ハルビンの天気はどうでしたか？ 
寒い! カチカチにすべてが凍りつく。飯もいつも凍った。麦飯のような訳の判ら
ないもの、「食え」とくれても、食べられなかった。おかずもなかった。

腹が減って困ったでしょう？ 

そうだよ。将兵が持って来てくれた乾パンをモグモグ食べる。心優しい人も多い。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

110 

季節が変わるの感じましたか？ 

うん。それは分かった。あそこは夏でも秋のようだった。夏も朝鮮のように暑く

ならなない。秋になると、もう寒い。一番寒い時は、何でもすぐ凍ってしまう。
だから外に出られないし、慰安所にいる。外にどこか行く所があるかい。

親しかった人はいますか？ 

「ヨシコ」と、一人は「チュンジャ」だが、「ハルコ」と言ったか。

「ハルコ〔春子〕」は朝鮮語で「チュンジャ (春子)」ですよ。「ヨシコ」は朝

鮮語で何と呼ばれていましたか？ 
そう、「チュンジャ」。親しかったが、「ヨシコ」は朝鮮名で何だったか、毎日

日本名だけで呼んでいたから思い出さない。私より一歳年上で、体がとても悪

かった。メンスになると、お腹が痛くて大変だった。一日に十人も受入れて、も

う死にそうだった。「ヨシコ」は毎日、痛がった。小学校卒業したばかりで、人
も可愛いかった。

どんな話をしましたか？ 
あんな話、こんな話。朝鮮にいる母と父は、どうしているか。すると会いたくな
って、泣く。互いに慰め合った。

「ヨシコ」と「ハルコ」はどうして来たのですか？ 

あの子たちも「捕まって来た」と言っていた。

ハルモニと一緒に来たのですか？ 
そう。同じ汽車に乗って来た。 ああ、ヨシコはもう死んでしまっただろう。死ん
だよ。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

111 

帰る時、一緒でなかったのですか？ 
帰りは一緒に来なかった。何人かが集まって、あちらはあちらで私は別の人た
ちと帰った。一緒に帰ったら良かった。二人で来ても、別れてしまったりした。
一緒に帰ろうとしても、人が多くて、汽車の上にも下にも人がいた。混雑した
汽車を乗り換えると、また違う汽車に乗る。先に乗った人が優先だから、みな
バラバラになってしまった。私たちはまっ直ぐ朝鮮に戻ったが、何人かは日本
人と一緒に日本へ行ったようだ。齢の多い人の中には、日本語も上手で星三つ
の将校たちが好きになり、「私、日本に行って暮す」と言う人もいた。その人た
ちは日本に行ったのだろう。

少尉はハルモニに「日本へ行こう」と言ってくれなかったのですか？ 
あんな人が、私のような女を連れて行くかい。

日本に行った人もいるのでしょう？ 

「着物」着ていた年上の人たちは、ついて行った筈だよ。私のような幼い子で

なく齢の多い人、一番年上は20歳。

年上の人たちを、何と呼びましたか？ 
普通に「姉さん」って呼んだ。年上の姉さんの中でも、性質の良い人は良く
て、悪い人は悪い。中には気性の荒い人や激しい人もいる。力が強くて、激し
い人が人を指図する。

ハルモニはどうでしたか？
私はとてもおとなしかった。愚かで顔も上げられなかった。初めて軍人を受け
入れた時、どうしたら良いのか判らなくて、初めてというのが、奴らにわかると
いうんだ。「新しいのが来た。朝鮮の女だ」と、軍隊で噂がぱっと広がった。み

聞こえてる？ 12人の少女の物語

112 

なに知れ渡った。それでやたら押し寄せて来る。一日に十人も体験する時もあ
る。それであの部屋、この部屋と逃げ回って泣き叫ぶ。朝鮮へ帰ることもでき
ないし、どこか逃げ出す所もない。

逃げようとしませんでしたか？
逃げる所がない。捕まれば死ぬ。

逃げた人はいますか？
いない。逃げられない。奴らががっちり守って、部屋ごと毎日調べる。

誰が、ですか？
管理する日本人だよ。そこで私たちを処理する日本人だと言っているだろ。

どんな人ですか？
どんな人なのか知らない。部屋ごとに毎日調べる。軍服着た奴も来る。逃げる
かと、監視する奴も多い。

そんな人たちを何と呼びましたか？
名前で呼ぶ。

思い出す軍人の名前ありますか？
思い出す名前はない。「兵隊さん」と呼ぶだけだ。一等、二等兵、上等兵、そ
れから中尉、少尉。大尉なんて人は来ない。来ても地位が高いから、すぐに行

ってしまう。大尉は一番高いんじゃないか。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

113 

軍人の階級、判りますか？
星、見たら分かるだろう。

偉い人はなぜよく来ないのですか？
知らないよ。知りようがない。世の中、そうなっている。私が満州に行ったこと
など口に出せない。なにを話せと言うんだ。

日本人は、「お前らはお前らで勝手に行け」
と去ってしまった。

私たちは解放されたのも知らずに

ハルモニは解放まで、ずっとそこにいたのですか？
ずっとそこにいた。大体4年位いたよ。解放されたから、直ぐ帰ろうとしたが、
服の一つもない。お金もない、あの罰当たりの奴ら、お金をくれない。

お金でなくても、票のようなものはくれなかったのですか？
票はたまにくれたけど、毎日はくれない。私たちを管理して指導する人たち
に、貰った票を持って行くと、お金を少しだけくれた。

票と交換にお金を貰えたのですか？
そうだ。うん。

票一枚で、お金がどのくらいなりました？

聞こえてる？ 12人の少女の物語

114 

千円だったか、分からない。くれない奴もいた。

くれないのに軍人を受け入れるのですか？

知らない。軍人を接待する仕事が「義務」だと。貰えた人は貰って、貰えなか

った人は貰えない。くれないものを、「くれ」と言っても無駄。

「義務」というのは誰が言ったのですか？

管理する奴らが言った。

近くの部隊も4年間、ずっとそこにいたのですか？
そう。ずっとそこに部隊があった。人が出て行くと、また別の奴が来る。そして
そこをずっと守っている。

解放はどうやって知りましたか？
解放？ 軍人が来なくなったから。一人も入って来ない。なぜか誰も来ない。み
な、日本の家へ帰ってしまった。その内、管理する人たちも知ったようで、「お
前ら皆、出て行け」と言う。どれくらい嬉しかったか。それで帰って来た。本当
に苦労した。そんな話、うちの弟には一言もしなかった。

管理者はどこへ行ったのですか？

どこへ行ったのか、誰が知るか。私たちは解放されたのも知らなかった。一ヶ

月位したら軍人から、「解放された。お前らはお前らで、勝手に帰れ」と言わ
れたが、お金もない。汽車は皆で一緒に乗った。何とか朝鮮に帰りたい、行っ
て母に会いたいと。母も娘を送り出して、どれだけ心配していることか。私た
ちは私たちだけで帰った。汽車が来たら、みな男たちでぎっしりだった。中に
入れないから、汽車の外につかまった。知っている人なら、そんな光景が想い

日本軍「慰安婦」 口述記録集

115 

浮かぶだろう。苦労して何日もかけて帰ったのが判るはずだ。連れて行かれた
時は、どこがどこだか分からなかったが、奉天まで着いた。お腹が空いて、死
にそうなのに飯もない。真っ黒なパンだけ貰った。

汽車に乗るにはお金が要ったのでは？
金がどこにある。お前も俺もと、滅茶苦茶に乗るのに、金なんて知らない。

お金なくても無料で乗れたのですか？
そうだ。目茶苦茶だった。その時はそんなだった。

汽車に乗って、どこまで来ましたか？
汽車に乗って奉天で乗り換えて、新義州(シンウィジユ)〔朝鮮北西部、中国と
の国境の町〕まで来た。そこでまた乗り換える。とにかく家に戻るには、汽車に
乗らないと。

新義州に行く時もお金出さなかったのですか？
金は出さなかった。解放後は、やたら集まって乗ることだけが一番なのに。

歩いて帰る人はいませんでしたか？
知らない。歩いて帰った人がいたかなんて、分からない。

パンは誰がくれたのですか？
旅館でくれた。皆でやっと、新義州まで来たのに、南に行く汽車がない。それ
でそこで一晩寝たら、真っ黒いパンを一つくれた。でも私は、「そんなの食べ

られない」と言った。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

116 

帰って来る時、服装はどんなでしたか？
帰って来た時、忘れた。下は黒くなくて、上は少し黒かったのか、白ぽかったの
か分からない。

薄い服でしたか？
解放されて、秋になって必死に帰って来た。家に戻ったら、「死んだ人が生き
還った」と、大騷ぎになった。金も服も、そんなの何もなかったが…。最近、離
散家族探しの放送を、一度も欠かさずに観る。観ると、いつも泣く。今日もど
れだけ泣いたか。

その時、お母さんに再会したのを思い出すのですか？
そうだよ。

ハルモニがどこへ行ったか、知っていましたか？
あんな所へ行ったことくらい、分かるだろう。「捕まって行った」と、大騒ぎだ

ったから。母は毎日泣いて暮らしていた。

お母さんはハルモニを見た瞬間、何とおっしゃいましたか？

「生きて帰って来た」と泣き出した。「あいつら、殺したい奴らだ」と。その頃

はみな、私だけでなく、同じ年頃の男たちも、皆徴用に連れて行かれた。だか
ら残った者はほとんどいなかった。農作業していた人も供出された。
日本人に良心があるのか。何でもみな持って行く。何もないのにやたら選ん
で、真鍮の器も持って行く。

家に帰ってから、お嫁に行かなかったのですか？
嫁には行かなかった。もう、あれをするのが嫌で、身震いする。あのことが恨

日本軍「慰安婦」 口述記録集

117 

みになっている。太腿のつけ根の両側が、痛くて死にそう。毎日、みっともなく

ここを開くだろう。ここが痛い。

60年も経ったのに、そんなに痛むのですか？
ああ、病気が治るかい。重い病気で、歩くのも大変だ。少し歩いただけで、力
がなくなる。ズキズキして、ここが痛い。

申告しましょう。テレビでハルモニのように満州行ってきた人、見ました
か？
見たよ。ああ、私がこの歳で、醜い。弟が「姉さんが可哀想だ。私が申告しまし
ょうか」と言われても、もしかして顔が出るかと思って言えない。無理矢理連
れて行かれたことは分かっても、そこで実際何があったのか知らないだろう。
あんな場所で働かされて、軍人の服を縫って、無理矢理に男たちの相手をさせ
られる。嫌がっているの、眼でわかって欲しいのに。

嫌だと、顔に出さなかったのですか。
出してどうなる。大きな声は出せない。前は顔も上げられなかった。

ハルモニの過ちではないでしょうが。
過ちでなくても、みっともないじゃないか。最近の女の子だって外出して強姦
されたら、「お嫁に行けない」と話さないで隠すだろう。

話せない世の中が悪いのに。
弟が、もう私が齢だから「姉さん、恨を晴らしましょう。すっきりさせましょ

う。」と言う。でも今さら、恨を晴らして何になる。申告しても自分の顔は出し
たくない。私、まだ処女だよ、あの時、ああした後、男とはもう再びしたくな

聞こえてる？ 12人の少女の物語

118 

面談日 : 2005年 3月 23日 / 2005年 4月 4日
面談者 : 姜ヒヨン、朴チョネ

録音文入力 : 尹智炫
録音文編集 : 尹智炫
録音文校正・校閲 : 尹智炫・李宣姈

口述資料の利用許諾を貰うために、ハルモニの被害内容を知る唯一の
家族である弟さんに電話をした。 B○○ハルモニは生存しておられた
が、健康がとても悪かった。委員会に被害申告するように積極的に勧
誘し、申告と調査を助けてくれたハルモニの弟さんが、ハルモニの代
わりに同意書を作成してくれた。ハルモニは弟に「お前がしたいように

しろ」と言って、口述資料利用を暗に許諾して下さった。弟さんは「特

に、日本人が歴史的な痛みを知るべきだ。」と、姉の話を本で出すこと
を快く同意してくれた。

◆ 

面談後記 ◆

い。あそこで、どれくらいしたことか。
人に「嫁に行け」と言われると、内心、殴りたくなる。私は罪が多いのは、連れ
て行かれて、そうなった。満州がどこで、奉天がどこかも知らないのに。昨日も
説法で、「心を優しくしろ」と、「昔の悪いことはみな捨てろ」と言われた。私
が死んだら「何とか救って」と、仏様に願わないと。

C○○  1920年生れ 

 1938年頃、

慶北大邱から動員される
 釜山から山口県に移動、台湾を経由してシンガポールに移動
 シンガポール、ティモール島、マレーシアのクアラルンプールで
 日本軍慰安婦生活

1945年 8月 
解放後、

クアラルンプールから釜山へ帰国
(正確な帰国時期や経由地は憶えてない)

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

121 

服を縫って、借金を償えと。すべて借金だらけ。

親が私を嫁に出そうとしたのに、私が「行かない」と言って、逆に被害に遭っ
た。大邱の寺にいたら、私に「どこ、どこへ行こう」と言う人がいて、「日本へ
行こう」という話だった。それで18歳の時、ついて行ってしまった。

誰が言ったのですか？ 

C○○  1920年生れ 

 1938年頃、 慶北大邱から動員される

 釜山から山口県に移動、台湾を経由してシンガポールに移動
 シンガポール、ティモール島、マレーシアのクアラルンプールで
 日本軍慰安婦生活

1945年 8月 
解放後、

クアラルンプールから釜山へ帰国
(正確な帰国時期や経由地は憶えてない)

第 4 話

哀れさは言い尽くせない、
利用されただけだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

122 

名前も知らない釜山の男が、私を利用した。「金儲けになる」と言うから、つい
て入ったのに、下関で船から降りたら、別の人が引き継いだ。

釜山の男は知っている人でしたか？ 
知らない人だった。「金儲けさせてやるから行こう。工場に就職させてあげる。」

と言われて、ついて行ったんだ。

何の工場へ、ですか？ 
何の工場なのか誰がわかる。説明してくれないのだよ。でも行ってみたら、違

った。私は何も知らなかった。バカだった。

季節はいつでしたか？ 
分からない。 何月かも分からない。古い服をすっかり脱がして、買って着せて

くれた。

誰が？ 
その男が。

どんな服を買ってくれたのですか？ 

洋服買って、「着ろ」と言う。ところが、それがみな借金だった。朝鮮の服、み
な脱がして全部、洋装させた。そして「借金で払え」という話になった。

借金を誰に償うのですか？ 
引率する日本人に償う。今考えたら、釜山の男はその日本人と約束ができてい
たようだ。私たちに服を買って着せたら、いなくなった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

123 

釜山の男は何をする人ですか？ 
知らない。釜山で列車から降りて、友だち4人一緒に、食堂で夕飯を食べた。
夜10時の連絡船に乗ったが、下関でその男はどこかに行ってしまった。もう何

日か下関で過ごして、汽車に乗り、山口で降りた。行ったら、女が多くいた。

釜山から、他の女も一緒だったのですか？ 
釜山からは友だち4人と私の5人。

釜山で船に乗る時、何か証明見せましたか？ 
ない。引率の人が先に立って、説明してから船に入るの….。私たちは証明なん
て知らなかった。連絡船に乗ったが、船酔で死にそうだった。息もできなかっ
たが、「薬を飲め」と言われた。

下関から山口まで、誰が連れて行ったのですか？ 

日本人が引き継いで連れて行った。

山口に女が何人いたのですか？ 
20人以上。朝鮮の女が多かった。女たちが逃げ出して….、やたら泣いていた。

なぜ泣くのですか？ 女たちがどうやって来たのか話をしましたか？ 
怖くて泣くんだよ。その時は互いに知らないから、話はしなかった。心配で、心
配で、どうなるか判らなかった。「朝鮮に帰してくれ」と言って、私が一番多く
泣いた。

山口では何をしましたか？ 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

124 

3、4日間はじっと待機していた。船に何日か乗って、台湾で降りた。少しして
台湾からシンガポールに向かった。

何日間、どう過ごしたのですか？ 
山口の旅館のような所で、飯を買ってくれた。その年寄りの家だったようだ。
下でご飯を食べたら、「2階に行って寝ろ」と言われた。

年寄りって誰ですか？ 
私をシンガポールに連れて行った日本人だよ。

その人の家だと、どうやって知りましたか？ 
私たちを食堂のような所に連れて行って、ご飯食べさせたから。

台湾にどれくらいいたのか、憶えていますか？ 

日本から船に乗り、台湾で降りた。何も知らないたら、ただ旅館で船を待って

いたら「船が何日にある」と言う。そうしたら今度は「シンガポールへ行く」と
か。シンガポールがどこなのか知らないが、「ついて来い」と言われたら、ただ
ついて行くしかない。台湾からシンガポールへ行く船には、日本人がたくさん
乗っていた。

そこが台湾だと、どうやって知りましたか？ 
旅館に何日かいたら、人々が「台湾だ」と言うので分かった。表に出ると台湾
の女たちが多くいて、買物に行ってみたら、日本語上手だったよ。日本が台湾
を朝鮮より先にぶん取ったから、私たちよりずっと上手い。

台湾で何を買いました？ 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

125 

主人と一緒に出かけると、食べもの買ってくれ。

お金は誰が出すのですか？ 
主人が買ってくれた。今考えたら、それがみな借金になった。

主人のことを、何と呼びましたか？

「おじさん」と呼んだ。私が「何か買って来る」と言うと、お金をくれる。

それがみな、借金になった。よく考えたら、そいつがその金で儲けたんだ。

その主人って誰ですか？ 
山口で会った、二人の日本人。他に「シンガポールに行って商売する」と、闇
で船に乗る日本人もいた。申請しないとシンガポールに行けないから、隠れて
行く。

ハルモニはなぜ隠れずに、船に堂々と乗れたのですか？ 
引率の人がいるのになぜ、私が隠れるの。隠れる男は証明がないからよ。証明
は私たちを連れて行く、日本人の主人がする。何も知らないのに、私がどうや

って証明するのよ？

証明するには、ハルモニの書類が必要ではないのですか？ 
主人が自分たちで、「この人たちが船の下に入る」と言って、その日本人の主
人が皆、する。私たちが何をするの、ただ主人について行くだけよ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

126 

全部、軍人相手。何度も死のうとした

初め山口で会った朝鮮の女も、シンガポールに一緒に行ったのですか？ 

うん。およそ20人になった。シンガポールに行ってみたら、工場などなかっ
た。全部、軍人が相手で、私は逃げようとしたが、捕まった。人がそんなこと、

できるかい。死ぬよ…。ひとりに一つずつ部屋を渡し、「お前はこの部屋だ、そ
いつはこの部屋だ」と、一つずつぶち込む。どこに行っても軍人が相手で、民
間人は一人もいない。軍人がずらっと並んで立っている。この部屋、あの部屋

と、一人出て行けば、また一人入って来る。

シンガポールに行って直ぐ、部屋を貰ったのですか？ 
皆、貰ったよ。泣く女がとても多かった。

部屋の様子はどうでしたか？ 
部屋にはタンスもなく、蒲団とカバンだけ。化粧品の箱一つと服のカバン一つ
で全部。木の底に蒲団だけ敷く。家はコンクリート造りだった。

シンガポールへ着く前は、どんな仕事か全く知らなかったのですか？ 
知らなかった。どこへ行くのかもわからなかったし。

途中、心配でなかったですか？ 
主人に「行こう」と言われるまま、ただついて行っただけよ。一人ではなく多数
で行くから、途中で色々聞きはしたが、何も分からなかった。シンガポールに
行くと、朝鮮の女がたくさんいて….「なぜ、来たのか?」と言われた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

127 

>>> 

シンガポール セントサ島の昔の慰安所の跡。委員会が現地調査時に撮影。

シンガポールに着いて直ぐ、軍人に会ったのですか？ 
逃げ出したから分からない。でも行く所もない。主人が人を使って捕まえ
る。軍人が入って来るのが怖かったから、軍人を避けて逃げた。いちばん最
初は気絶しそうで、大泣きした。「朝鮮に帰してくれ」と訴えた。昼間は軍人
がごった返しで、立って待っている。私は扉を閉じて出なかった。扉を開か
なくても、一回、二回と入って来る。夜になると将校、地位が高い奴が来る。
夜は、兵士たちは来られない。私が泣くと隣から、「泣くな、泣くな」と慰め
てくれる。皆話すのが、恥ずかしくて…、 死のうと何度も思った。一緒にい
た女は一人、自殺した。軍人相手にした後、薬飲んで自殺したが、死んだ後
は、火葬してしまった。

薬をどこで手に入れたのでしょう？ 
内緒でしょ？ 隠しているから、そんなこと教えてくれない。真っ赤な薬、呑み

聞こえてる？ 12人の少女の物語

128 

込むと死ぬそうよ。毎日、軍人が「並び」に立って入って来る。そんなの相手
にするくらいなら、死んだ方が楽だ…。 軍人とは私も「嫌なことは嫌だ」と、
喧嘩をたくさんした。

喧嘩して、殴られませんでした？ 

「泣くな。泣くな。」と軍人が慰めてくれた。その頃、まだ幼くて世の中のこ

と、何も分からなかった。気が狂いそうだった。そんな話、どこでする。

シンガポールに女たちがたくさんいましたか？ 

この部屋、あの部屋とたくさんいた。日本の女もたくさんいて、日本の女たちと
も喧嘩した。九州の女が「朝鮮人、朝鮮人」と言う。私は「半島人」と言われても

大丈夫だったが、「朝鮮人」という言葉が嫌いだった。一度殴ったら、「チョウセ

ンジン～、お前ら、唐辛子食って、ニンニク食って」とやたら罵る。「お前らが私
たちの土地奪い取った。私たちがお前らの土地奪ったか」と殴りかかった。それ
が「朝鮮人に殴られた」と告げ口されたようで、憲兵の耳に入った。憲兵が追い
かけて来たので、歩哨に立つ日本人から「バカ野郎、バカ!」と言われた。他の日

本の女は優しかった。皆同じ運命だから、互いに可哀想に感じていた。「我慢し

ろ」というのよ。ああ私はもう、こんなこと考えたくない。

日本の女がたくさんいたのですか？ 

いたけれど、日本の女より朝鮮の女が多かった。日本の女は年上の人が多く
て、朝鮮の女はみな若い。年老いた日本の女は、後で送り帰してしまった。

休日はありましたか？ 
休日なんてなかった。日曜日は休みの日だから、軍人がたくさん来る。また私

に「日本軍の慰問をしろ」と「踊れ」と言う、それも日本の踊りを。将校が宴会

日本軍「慰安婦」 口述記録集

129 

する時に、私たちも行って舞台に立つ。

宴会で何をするのですか？ 
将校が酒飲む席で、「踊れ」って言う。私と朝鮮の女二人に、日本の女が踊り
を教えるのよ。「着物」着て、化粧して舞台に出て行って踊ると、将校たちが

どっと出て来て、やたら「踊れ、踊れ」と囃す。

誰が踊りを教えるのですか？ 

日本の女が、三味線をベンベンと弾きながら私に、「こうやって憶えろ」と教え
る。何でもやったが、もう忘れた。何も話せない。

宴会はどこでするのですか？ 
ジープに乗って、劇場のような所に連れて行かれた。劇場に行くと軍人がギッ
シリといた。

なぜハルモニに踊らせたのですか？ 
若い者だけ選んで教えた。日本の女とみな一緒に、「着物」を着て踊る。人が
足りないから、穴埋めさ。

踊りに行く日が別にあったのですか？ 
分からない。ただ言われたら出かける。「三味線」を教えるおばあさんに、

「今日、舞台に出なさい」と言われると行く。そのころ私は、背が高くてや

せていた。

ハルモニはそこで何と呼ばれていましたか？ 
私をみて、日本語で「とみちゃん」と呼んだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

130 

軍人は金を払うのですか？ 
軍人は主人から票を買ってするのよ。軍人がいくら払うのか、自分がいくら貰っ
たのかも判らない。私が貰った票を主人に持って行くと、いくら儲かったとか記
す。お金を貰ったことはない。全部借金になって、差し引かれるとお金はない。

その票に何か意味があるのですか？後でお金に替えられますか？ 
替えられない。そのまま記しておくだけ。その票を5枚、7枚と持って行くと、
いくらとか言って主人が帳簿に書く。借金を減らすことになるから。

妊娠した人もいましたか？ 
子どもはできない。1人いたが、子どもが死んだとか。消毒水で洗い落とすか

ら、子ども持つ人はいない。

>>> 

検診を受けに行く中国上海の慰安婦(1938年1月2日毎日新聞提供写真)、

『「慰安婦」、戦時性暴力の実態Ⅰ-日本・台湾・朝鮮編』、緑風出版、2000、195頁。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

131 

妊娠しないように、消毒水で洗うのですか？ 
便所に行くと、薬を水道水に混ぜたのがある。一人送り出したら洗いまくっ
て、また一人送り出したら便所に行って、消毒水で洗い流す。だから妊娠した
人いなかった。

病気にかかる人はいなかったですか？ 
病気にかかる人はいたよ。それで一週間に一度ずつ、必ず診察する。

一週間に一度、どこで検査するのですか？ 
病院へ検査しに行って診察する。軍人が病気にかかるかと思ってか分からない
が、検査を徹底的にする。

妊娠しないように軍人が、何か持ってくるのですか？ 
何も持って来ない。サックは一缶ずつ、部屋にある。「サック」は全員使わな
いと駄目。しなければ、「出て行け」と言う。私は足で蹴って、そうした。

他の病気にはかかりませんでしたか？ 

シンガポールでは、マラリアにたくさんかかる。マラリアだと家で治療できない。

熱が凄くあがって、入院する。私もマラリアにかかって、熱が出て寒気がして入院

した。死にそうな苦労を、たくさんしたよ。話をいちいち、みなはできない。

入院費はどうしたのですか？ 
主人がみな出す。そして借金にしてしまう。何もかも一切が、借金だ。「服を
買え」と言って、借金を背負う。そうやってシンガポールから、ティモール島と
いう所に送られた。女たちも何人かはシンガポールに残しておいて、連れて行
かれた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

132 

島で人もいない。海に出て泣いた

ティモールはどんな所でした？ 
ティモールというのは島で、海辺があって、人もいない…。 夜になると獣が鳴
いて、そんな所。外に出ると、海辺がある。海へ出て行って泣いた。人もいな
い。ティモールの人など、見たことなかった。軍人しかいない、本当に山奥だ
った。日本の軍人だけでギッシリで、人は余り住んでいない島だよ、島。村に
住む人も見えない。そこも戦闘が激しくなって、連れ出された。

なぜティモールに連れて行ったのですか？ 
軍人の相手だよ、軍人相手。あんな島に何しに行く。ティモールでは急斜面
に、椰子の木で粗末な家がごちゃごちゃ作ってある。部屋はおよそ十個位。草
で編んであって、虫やカエルなんか入って来た。

ティモールではどんな服を着ていましたか？ 
皆、ワンピースのようなのを着た。

軍人はどこにいましたか？ 
軍人は戦闘するのだから全員いる。軍人のいる軍隊には、私たちは行けない。
軍人たちが出て来る。将校は夜来て。

シンガポールに何年いてから、ティモールに行ったのですか？ 
憶えてない。シンガポールに何年かはいた。逃げようとしても、誰も知っている
人がいない。シンガポールから突然、女たちを半分程残しておいてティモール
に連れて行かれた。私の友だちも後に来ることになっていて、日本人がその友だ

日本軍「慰安婦」 口述記録集

133 

ちを連れに行った。ところが途中で、爆撃に遭って死んでしまった。その子と私
は、飯を分かち合ったりして親しかった。後で「なぜ来ないか」と聞くと、「爆弾
に遭って死んだ」と言う、… 哀れで、話せない。ただ利用されただけだ。ティモ
ールでは戦闘が酷くなって、後退させたようだ。私たちが出てくるのに、爆撃に
遭うからとても用心した。出てからクアラルンプールで解放になった。クアラル
ンプールで日本人が、「戦争負けた、戦争に負けた。」とオイオイ泣くんだ。船
に乗ったが、誰が乗せてくれたのか、日本の船なのか何なのか分からない。乗っ
て、冬に釜山で降ろしてくれた。解放になって出てくることは出てきたが、苦労し
た話はしたくない。

初めて行った時から解放されるまで、同じ主人でしたか？ 

うん。解放してくれない。

>>> 

マレーシア、マラッカ市内の西側海岸、慰安所の建物。 

東北アジア歴史財団、『日本軍「慰安婦」とナチスドイツ収容所の強制性労働』、
2007年、43頁収録の写真。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

134 

釜山に来る船にどうやって乗ったのですか？ 

クアラルンプールにいて突然、解放されたが、釜山に誰が連れて行ってくれた
のかわからない。釜山でどうやって降りたのかも分からない。

クアラルンプールからまっすぐ釜山に来たのですか？ 
分からない。主人はいなくて、朝鮮の女たくさん乗っていた。クアラルンプー
ルで船に乗って、どこで船を乗り換えたのか…. 記憶があまりない。船から見て
いたら「釜山だ」と言われた。

クアラルンプールから出たのは、軍人に初めて会ってから何年目ですか？ 
およそ7、8年経っていた。 シンガポールにいたし、ティモールにも数年いた。
クアラルンプールにもいた。

ご両親は、ハルモニが海外に行っていたのは、知らなかったのでは？行方不
明だった娘が、生きて帰って来たので喜んでくれましたか？ 
たくさん捜しまわったそうだよ。けれど「連れて行かれた」という噂を聞いて
いたようだ。帰ると母は、私の体を捕まえて泣いた。父の所に行ったら、「出て
け」と言われた。父は、行く前はそうでなかったのに。それで親戚の家に行っ
て横になって寝ていたら、父が来て、やたら私の頭を触る…。父は私が帰って

直ぐに、病気にかかって死んだ。

その間にあったこと、話されましたか？ 
そんな話、親にはできなかった。兄弟も知らない。ただ「連行された」、それだ
けで分かるだろう。今は60年も経ったから、日本語もみな忘れた。帰って来た
時は、逆に朝鮮語がよくできなかった。誰かに何か言われても、弁明する方法
も知らなかった。私をみて、「日本の女」と言うんだよ。今はもう、60年も韓国

日本軍「慰安婦」 口述記録集

135 

で暮したから、少しはマシだろう。逃げることもできず、たくさん苦労したよ。
死のうともした。私は「処女だ」と…。結婚もできずに暮らした。いちいちみ
な、話すことはできない。

面談日 : 2005年 3月 2日
面談者 : 姜ヒヨン、朴勝美、朴チョネ

録音文入力・編集 : 尹智炫、
録音文校正・校閲 : 李宣姈・尹智炫

聞こえてる？ 12人の少女の物語

136 

口述資料利用の同意許諾を貰うために、C○○ハルモニの弟に連絡し
た時、ハルモニは「既に亡くなった」という知らせを聞いた。ハルモニ
の弟さんはハルモニの被害内容を知る唯一の家族であり、委員会に被
害申告をする時も書類準備と申請手続きをしてくれた。結婚もできず
に、被害内容を周囲に一生隠して来たハルモニに、「恨を解くべきでは
ないか」と言って申告を勧めたという。
ハルモニの弟は同意書を作成して、姉の痛みに対して淡々と語ってく
れた。ハルモニが調査過程で被害内容を打ち明けられたことと、ハル
モニの話が本に作られることがハルモニの「恨解き」になれば良いと、
口述資料利用に同意してくれた。
* 1920年生れのC○○ハルモニは、本人が18歳の時(1938年頃)、日本と
台湾を経てシンガポールに動員されたと記憶していた。シンガポール
が1942年2月日本に占領された点を考えると、ハルモニの陳述は歴史的
事実と合わない。これと関連して委員会は、本人の陳述と申告時に提
出した写真から見て、「日本軍慰安婦の被害事実は確実」と判断した。
C○○本人が高齢のせいで、動員当時の年齢や移動経過などを混同し
て陳述した可能性がある。

◆ 

面談後記 ◆

D○○  1925年生れ 

1943年春、

ソウル(当時は京城)で動員され、釜山に移動
釜山で一月間留まった後、船に乗り台湾経由でシンガポールに移動 
シンガポールで1年間日本軍慰安婦生活をし、

1944年頃、

ビルマ(現ミャンマー)に移動
ビルマで1年間、日本軍慰安婦生活

1945年、

ビルマで解放を迎え、同年10月頃、釜山に帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

139 

「外国へ行く」、「軍人の服を洗濯して、

看護婦の仕事もする」と言われて

シンガポールに何故、行くことになったのですか？ 
私の父が道楽者だったので、母は私一人を産んで離婚した。父は大きい精米
所をしていて、毎日、穀物を挽きに通っていた。私は幼い時から、叔母に育て

られた。ところが私が16歳の時に、叔母と伯母が無理矢理、嫁がせた。私の嫌

いな奴だったから、夫が部屋に入って来るのを拒んだ。

D○○  1925年生れ 

1943年春、 ソウル(当時は京城)で動員され、釜山に移動

釜山で一月間留まった後、船に乗り台湾経由でシンガポールに移動 
シンガポールで1年間日本軍慰安婦生活をし、

1944年頃、 ビルマ(現ミャンマー)に移動

ビルマで1年間、日本軍慰安婦生活

1945年、

ビルマで解放を迎え、同年10月頃、釜山に帰国

第 5 話

日本人のせいで行ったんだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

140 

なぜ結婚した男が嫌いだったのですか？ 
初めからその男が嫌だった。私は齢も幼くて、結婚しても男は私の所にあまり
来なかった。近寄って来ても、嫌ってパンパン叩いた。婚姻届も出さず、一年
も一緒に暮さずに、出てしまった。実家に戻れず、どうしようもなくて、何とか

自分で暮して行こうとした。あちこち食堂で働き、仁川の漁港の側の大きな木

綿会社にも通った。

木綿会社にはどうやって入ったのですか？ 
新聞広告を見て。親の印鑑も要らなかった。拇印を押した。でも数ヶ月も通わ
ずソウルに行くと、男たちが出てきて誘われた。誰がそんな風に男を受け入れ
て、そんな酷いことさせられると想像できる？

そんな所に行けと誘う人がいたのですか？ 
その時、たくさん募集していて、そんな人が多かった。それで「行ってみろ」

と言ったんだろう。「船に乗って、そういう所に行け」と誘う。紹介所に送られ

て、そんな(働き口が)あるから、「女たちがたくさん行く」と言う。金を儲けよ

うと、欲で(行ったのに)、そうではなく、男たちを受け入れる、そういう場所だ
った。そこでは、動きもできず、出入りもできない。本当に何も知らないから、

そのままお金も儲けられなかった。19歳で行って23歳で出て来た。

紹介所はどこにありましたか？ 

ソウル。デパートの内側にあった。右側は畑で、そこが紹介所だった。そこで

「洗濯もして、看護もして、清掃もして、お金、たくさん儲かる」という話をし

た。行ってみたらまったく、話が違う状況だった。

紹介所は大きかったですか？ 

日本軍「慰安婦」 口述記録集

141 

紹介所は人がおよそ5、6人いて、大きくなかった。人が常に出入りしていた。
でもどんな奴が出入りし、何のために行ききするのか知らなかった。そこで

「そんな場所があるから行け」「金儲かる所、教えてやる」と、口を挟む。紹介

所で「謄本を取って来い」と言われて取って来た。父親も知らないだろうが、
(謄本)を持って行って受け付けた。

金を儲けて何をしようとしたのですか？ 

うん、金をあくせく儲けて商売でもして、一人で暮らして行こうと思った。それ

で行ったのに、待っていた運命は…。

お金をたくさんくれると言われたのですか？

「いくらくれる」とかは言われなかった。初めは、「洗濯もして、看護婦の仕事

もする」と言われ。紹介所で「お前ら、羨ましいな」と言うんだ。「どうして」
と聞くと、「外国へ行くから」と答える。「行って何をするのか」と聞くと、「軍

人の服を洗濯して、看護婦の仕事もして」と言う。「病院に行って、薬を出す
仕事」と。「行けるか？」と言われて、それで。その時は私も若くて、お金も儲
けたくて行った。釜山の影島(ヨンド)橋の所に1ヶ月間、旅館で食べて寝かせて

くれた。釜山でも「軍人の洗濯をして、清掃する」と言われたが、実際に行っ

てみたら、そうではなかった。

釜山には、ハルモニ一人で行ったのですか？ 

10人余りだった。紹介所から誰かが、釜山まで一緒に行った。行く時は台湾に
も、何日かいた。

シンガポールに行くと、何時知りましたか？ 
釜山に行ったら、男が「シンガポールへ行く」と言う。業者は船には乗らなか

聞こえてる？ 12人の少女の物語

142 

った。台湾で現れたのが、主人だった。シンガポールでは爆撃があるから、夜
だけ進む。船には軍人が多くて、軍人がご飯をくれた。

一緒に行く女は、何人位いましたか？ 

15人か20人。非常に大きい軍艦だが、下の階で寝た。軍人がご飯持って来る
と、それを食べた。トイレは行っても、自由に歩き回れない。

船の甲板に登ったり、しませんでしたか？ 
登れないようにしてある。出られないようになっている。

清掃すると連れて来て、なぜ軍人と一緒に寝ろという
のか、問い詰めた

台湾に停泊した時も外出できなかったのですか？ 
船の甲板に出て座っていたが、好き勝手に降りることはできない。軍人たちは自

由に上ったり降りたりするのに、なぜ私たちには降りられなくするのか、息が詰ま
る。現地の人たちは中国服を着て、渡し船に乗って行き来していた。その人たち
が何か、指差して笑っていた。中国語で騒ぎ立てるのだが、聞き取れない。今に
なって思うと多分、「あの女たち、男とあれしに行く」と考えていたようだ。シン
ガポールに行ったら、男を受け入れる所に送られた。何号室、何号室と、みな

書いてある。誰々は「一番に行け」。誰々は「四番に行け」と言う。自分の番号
は分かるから、部屋を知って訪ねて来るようになる。シンガポールで初めは、

とても泣いた。「清掃するとか、何か仕事をする」とか言って連れて来て、な

日本軍「慰安婦」 口述記録集

143 

ぜ「軍人と一緒に寝ろ」と言うのか、問い詰めた。私は泣いたが、それでも仕
方なかった。結婚しても、夫と寝なかったのに。初めは裂けてしまった。主人
から本当に、ひどい目にあった。痛いと大泣きすると、やたら罵る。飯も食べず
に「朝鮮に帰せ」と泣き叫ぶ。「洗濯するからと行った」のに、そんなバカな行
動が恥ずかしくなって、ああ、恥ずかしくて話もできない。

ハルモニの部屋はどんなでしたか？ 
小さい。狭かった。ベッドがたった一つ。部屋がこれくらいで、ベッド一つ置い
て、靴置いて、私の服は枕元に置く。蒲団は私が敷く。

ハルモニを呼ぶ名前はありませんでしたか？ 
私？ ミツコ。

主人はどんな人でした？ 
やもめ。私が男を嫌って、ひどい目にあった。ここへくる時は金を儲けに来た
のに、「客を取らなかったらどうする」、「軍人だけ受け入れろ」と言う。日本
の軍人、海軍ではなく陸軍。軍人の帽子かぶったそんな奴らだけ、何人も団体
で来て、受け入れては帰って行く。軍人が殴ることもあるが、主人が「なぜ言

うこと聞かない」と女たちに狼藉を働く。主人だけが。陳氏とかいう朝鮮の男
だった。名前は皆判らない、忘れた。ひとりは凄く背が高くて、出かける時は白

い洋服着ていた。そして一人は何時も、とても気さくだった。

背の高い人はどんな仕事をして、気さくな人はどんな仕事をしていました
か？ 
気さくな人は市場で買って来た物を部屋ごとにくれて、「これ使え」と分けて

くれる。例えば私が「体が痛い」と言うと、人を連れて来てくれる。一緒に車に

聞こえてる？ 12人の少女の物語

144 

乗って出かけたり、歩いて出入りしたりする。背が高い人はただそのまま座っ
て、何か自分一人で一日書いていた。部屋にテーブルと机置いて、椅子に座っ
て、何か毎日書いていた。たまに出て行くが、どんな仕事をしているのかは判

らない。

その人たちには妻はいないのですか？ 
妻はいない。

近くに部隊がありましたか？ 
軍人の部隊があった。新しい道の向かい側に軍人たちがいた。田舎で、街中で
はない。街中に行くには、馬車に乗った。票一枚貰って、軍人と「寝ろ」と言わ
れたら寝て。朝鮮がどこなのか、日本がどこなのか、身動きできなくてされて。
軍人たちを日曜日も土曜日も受け入れる。軍人は遊ぶ時間があって、よく来る

ようだ。

軍人は車に乗って来るのですか、歩いて来ましたか？ 
歩いて来る、自家用やタクシー、ジープに乗って来るのは見たことない。門の
前に集まって歩いて来る。新しい道に軍人が五人、六人来る。

ハルモニがいた所を軍人たちは何と呼びましたか？ 

日本語だから分からない。誰か日本語で「シンマチ」とか言っていた。もう昔

で忘れた。

女がいる家が近くに、まだありましたか？ 
ない、一軒しかなかった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

145 

ハルモニのいた家はどんなでしたか？ 
平屋建てで、洋館風。物凄く大きて、両側がずらりとみな部屋だよ。入口の側
に台所があって、何号室、何号室、誰々の部屋と皆書いてある。

お金を貰ったことはないのですか？ 
男を相手しても、お金を私が貰うのではない。入り口で皆、払ってから入って
来る。小遣を貰ったことはない。主人が皆、記している。　　

軍人たちは何か持って来るのですか？

「サック」(コンドーム)を持ち歩く。「サック」と言った。平たく丸めてあって、

風船のように膨らませると、こんなに大きくなる。主人の女が「これ上げたの
は、男のあそこに挟めろとあげたんだ。吹けと言ってあげたんじゃない。もう、
そんなことするな」と言われて分かった。洗う時は、トイレで消毒した。男が来

る前に、洗っておいて迎える。

軍人は何時頃来ますか？ 
お昼過ぎ、2時か3時頃に来る。朝は客を受付けない。来たら晩までに終わる。

12時過ぎると、みな寝る。寝て行く人もいる。番号順に部屋があって、一番な
ら一番、二番なら二番に「早く入ろう」と言う。入ると男と寝なければならな

い。私がサボって、そのまま出て行ったりする。すると部屋の番号探して、他
に少し気にいる女としばらく遊ぶ。軍人を一日中受け入れると言っても三、四
人。私は男が嫌で、「下が痛い」と言うと、塗るものをくれた。 塗るとマシにな
った。

軟膏ではなく、他になかったですか？ 
消毒臭がする真っ赤な水。トイレで毎回消毒する。一ヵ月に二回ずつ主人が注

聞こえてる？ 12人の少女の物語

146 

射した。ガウンを着た軍医が来て、子宮を検査する。「燕のくちばし」(婦人科
の検診器具)で、一月に一、二度きて検査した。「痛い」と仮病を使うと、少し
はサボれた。「力が抜ける、痛い」と言うと、注射を打ってくれたりした。

医者はどこから来るのですか？ 
病院から来るが、軍人なのか、服は白いガウンを着ている。一ヵ月に二回軍医
が来て、子宮を見せる。私たちが病院に行ったことはない。軍人が先導して、
鞄一つ持って来て、観る。異常があると、「客を受け入れるな」と言い、異常
がなければ、何も言わない。下が痛いという女もいた。それ(コンドーム)「必ず
はめてしろ」と言っても、しない奴もいる。それで、病院に行って[赤ん坊を]掻
き出す…。

誰が掻き出すのですか？ 
主人が病院に連れて行って…。

何の病院ですか？ 
産婦人科か何か、分からないが、そこで掻き出したとか。私は経験がないか

ら。私は、子どもはできないみたいで。子を掻き出した後は、「何日か休め」
と言われる。医者が「元気だ」と言う時までは、何日か休んで遊ぶ。そのた
めか、麻薬の注射を打ったりする娘もいた。人の服を盗んで、売り払ったお

金で注射する。「何のための注射か? 何か病気か?」と聞くと、「病気はな
い」と言う。私たちが見張りして追いかけてみると、街中に出てある家に入
った。病院でもなく、個人の家で注射する。「なぜ、あそこに行くのか」と聞

くと、「注射すると死にそうだったのが、生き還る」とか、「気持ち良くなっ
て、昇天する」と言う。薬で「気分が良くなって死にそう」だと、「注射打つ
と客を迎えられる」と。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

147 

その女はシンガポールからずっと一緒にいた人ですか? 名前思い出せません
か？ 
分からない。みな忘れた。忘れた。

検査はどのようにしますか？ 
ベッドに「横になれ」と言われて、脚を両横にこうやって上げて広げる。子宮
にこのように燕のくちばしのようなもの(婦人科の検診器具)を、中に入れる。

妊娠した人はいなかったですか？ 
一人、産んだ子がいた。その子は野菜売りの女に、赤ん坊を任せていた。多分

1ヶ月にいくらかあげるには、金を儲けなければならなかったようだ。一日に一

度か二度行って、覗いて見るそうだ。解放されたら(子どもを育てていた女が)、
赤ん坊を連れて逃げてしまったが、その人はどこへ行ったのか。あの広い所
で、どうやって探す。赤ん坊なくしたその子は、そのまま出てきた。

>>> 

シンガポール セントサ島の昔の慰安所の跡。 委員会現地調査時撮影。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

148 

服はどんなものを着ていましたか？ 
半袖で、ここに花模様のある「モンペ」、ズボン。寒くなく常に暑い地方だから、雪

も降らない。シンガポールに一年いて、主人から「行こう」と言われてトラック、貨

物車に乗り、遠くへ移った。

何号室、何号室、みな番号書いてあって、
写真見て女を選ぶ

移った所はどこでしたか？ 

ビルマ(現ミャンマー)と言った。街ではなく、田舎だよ。二度目に行った所は、

2階もあって、下の階もあった。(ビルマには)マンゴーもあり椰子もあって、バ
ナナの葉っぱにご飯を包んでおにぎりにした。野菜ものせてくれた。噛むと白
い汁が出て、味が栗みたいでポリポリして、それを削ってのせた。また韓国の
杏のような、黄色く熟れた実も取って食べた。

一緒にいた女たちは皆、朝鮮の人でしたか？ 
女たちは皆、ソウルや全羅道の女。でも○○から来たという子は、解放でもな
いのにやたら「家に帰る」と言い張ったが、戦争の爆撃でいなくなってしまっ
た。古い話で、その子の名前も分からない。

その子には、どこで会ったのですか？ 
二番目の所で会った。あの子は私に良くしてくれた。私が年上だったから、

「姉さん、姉さん」と慕ってくれた。私は解放で出て来たが、その子はもうい

日本軍「慰安婦」 口述記録集

149 

なくなっていた。聞いてみると「朝鮮へ帰る」と駄々をこねて、突然いなくなっ
た。ある軍人が言うには、船が爆撃にあって、乗っていた人が皆死んだとか。
韓国の女も乗っていて、一緒に死んだと。解放されて出て来て、その子の家に
行くと、その子の兄さんがいた。誰それは「家に戻ったか」と聞くと、一緒にい
た子なのに、あの子は「来ていない」と答える。「君は戻れたのに、どうしてあ
の子は来ないのか」と言われた。「解放前に戻ろうとしたが、『爆撃に遭った』

という通知が来た」と、その兄さんが「あの子が死んだ知らせが来たが、遺体

を探せないでいる」と私をつかんで泣くのよ。「船に乗ったのに、死んだ」と、

「一緒に戻って来られたら、どれくらい良かったか」と言って、あの子の兄さん

が泣く。また後に訪ねたら、どこかに去ってもういなかった。

ハルモニは病気にかかったことはありませんか？ 
シンガポールではなかった。診察してみても、「何も異常がない」と言われ
た。一度、腫れ物ができて外科手術して、客を2ヶ月間取らなかった。治らない

と性交で感染するって、主人が「治ってから、客を受け入れろ」としてくれた。

2ヶ月以上遊んだ。主人が「お前、なぜコンドームしろというのに、そのままし
たのか」と聞くので、「そいつがはめろと言っても、聞かなかった。酒に酔って
来て、抵抗できなかった」。なぜ「いつも、はめろと言うのかというと、病気に
かからないためだ。よく覚えておけ」と言う。主人はよく腹を立てた。次からは
主人が「病気が移る、しろ」と、言うからはめた。

それで徹底的に守ったのですか？ 
はめたよ。客が来ると、「はめなければしない」と言って。でも色んな奴がい
て、酒飲んで来て、「言うこと聞かない」とやたら殴る。「オイ、この○○た
ちめ。ここに来るからは、男を相手にしようと来たんだろうが。」と殴る奴も
いた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

150 

どこで病気にかかりましたか？ 
シンガポールではない。シンガポールではゴミみたいな病気だけだった。とこ
ろがビルマに行ってからは、完全にかかった。男を相手にしたら、痛むんだ。

病院に行って子宮検査した。ところが子宮には異常がない。医者が「これで治

る人もいる。そこを剥して取る」と言って、火で炙る。薬もくれたが、熱くて、

痛い。薬が廻ると、こんなに膨らんだ。それが固まって、かさぶたが落ちると
治るんだ。それで薬を二～三ヶ月飲んだ。火箸のようなのでつつくんだ。目茶
苦茶熱くて、痛い。トイレに行ってみたら、白いのがいくつかこんなに膨らん
で、大変なことになった。「どうしたら良いか」と医者に聞くと、「男を相手に
するな、大変なことになる」と言う。客を受け入れず、横になって遊んでいた。
近くの野菜だけ取って食べた。木のようで、大きく開く。黄色く開くと、取って
食べる。殻を剥すと、黄色い所が甘くて、甘酸っぱくて美味しい。椰子はこれ

ぐらいのカボチャのようなものがあるが、ぼこぼことしている。割るとひものよ
うに増える、種がこれくらいで、あんずのように開くが、それを取る。とても美

味しい。暑い時は、そこで実が開く。

病気になって休めて良かったですか？ 

うん、本当に良かった。ご飯は食べられたが、お金が問題。折角行ったのだか
ら、金を儲けなければいけないのに、儲けられない。

ハルモニそこで貯金しなかったのですか？ 
いいや、ない。お小遣、少し使っただけ。

そこで朝鮮人を見たことありますか？ 
朝鮮人は、ひとりだけ見た。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

151 

ハルモニの所に来た人ですか？ 
いいや、他の人の所に来た人。私と一緒にいる女を見て、悪口言った。その女
が男を嫌いだったのか、「○○の奴」と朝鮮語で罵った。男が朝鮮人とは知ら
ずに罵ったら、「お前、売るところがなくて、こんなところまで来たのか?」と
朝鮮語で言うから、朝鮮人と判った。「ごめんなさい、朝鮮人と知らずに言っ
た。」と謝った。

日本の軍歌、習ったことありますか？ 

習った。日本の国旗を外に掲げて、何々と歌う。幼い時は知っていたが、みな
忘れた。

軍人と一緒に、ですか？ 
いや、その家の女たちと一緒に歌った。軍人は来たら、女の子と寝る、それし
かない。

ハルモニのいた所に規則のようなもの、ありましたか？ 
いや。ただそこにいる女の名前、「ミツコ」とか、「ヨシコ」とか、「ケイコ」と
か書いてある。その子を探して部屋を訪ねる。何号室とかみな番号が書いて
あるので、写真を見て女を選んで入って来る。自分たちで番号調べて、写真見
て「この女どこにいる」と聞く。すると「ここにいる」と返事が来て、それから
部屋に一緒に入る。私たちが客引きすることはない。客が訪ねて来て一緒に寝
る。梅毒なんか移るから「サック」は必ずはめる。一箱にいくつ入っているか、
今でも分かる。6個入っているのもあり、20個入りのもある。

そこで写真を撮りましたか？ 
写真はみな破ってしまった。団体で撮ったのもあった。紹介所で女たちの写真

聞こえてる？ 12人の少女の物語

152 

を撮った。写真は軍人が撮ってくれた思い出だが、みな破ってしまった。ビル
マに一年いて、解放になって出てきた。

父に会いたくて、早く韓国に帰りたいとしか考えなかった。

解放はどうやって知りましたか？ 

ビルマでも「解放だ」と大騒ぎだった。主人からも「男を受け入れなくても良

い。解放された」と言われて、解放1ヶ月で出て来た。船があってみなで帰っ
た。父に会いたくて、早く韓国に帰りたいとしか考えなかった。

主人はどうなりましたか？ 
出てきただろう。

>>> 

ビルマ、捕虜収容所の朝鮮人慰安婦。東北アジア歴史財団、『日本軍「慰安婦」

とナチドイツ収容所の強制性労働』、2007年、98頁収録の写真。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

153 

一緒に来た女たちも、同じ船で帰ったのですか？ 
ああ、私たちと一緒にいた女十何人、解放されて皆で同じ船に乗って戻った。釜

山で降りて別れた。

船に乗るには、誰かが連れて行ってくれたのですか？ 
軍人たちと一緒に来た。

どんな軍人ですか？ 

日本人だった。朝鮮語を使う人はいなかった。私の荷物を積んでくれた男も、同じ

船に乗った。韓国の人はその人一人しか知らない。

主人とはいつまで一緒にいましたか？ 
解放されて、何日か一緒にいたが、いなくなった。軍人が来て運んでくれ、
海まで来たら「船に乗れ」と言われて乗った。帰る時、泊る所もなくて、誰か
がお金をくれた。くれたのは誰かはっきり思い出せないが、主人ではなかっ
た。ここに来る交通費もかかったし、ご飯も買って食べた。小さいカバンだ
け持って釜山に来たら、日本人はみな逃げ出した。みな、そこに座って泣い
ていた。みな、「奪われた」とか。「中村さん」もそこにいたが、私を見て知
らぬふりをした。

故郷で、近くにいた日本人ですか？ 
ああ、うちの精米所にも日本の奴が暮していたから、その人に間違いないの
に、見るふりもしない。「奥さん」と呼んでも、見もせずに泣くだけ。釜山に行

くと、日本人みな、そこ座り込んで、「盗られた」と座って泣いていた。

船に乗せてくれた人は、知っている人ですか？ 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

154 

うん、その人には会いたい。本当にありがたい。うちの父にも会ったことがあり、

父の「娘と分かった」と言う。「あんたを幼い頃にみた」と。どう見ても朝鮮の女
のようなので近寄って来て、船に乗るのを手伝ってくれた。私に「誰それの娘じ

ゃないか」と、聞くのよ。そのおじさん、私のことを「よく知ってる、精米所もし
て、そうじゃないか」と言う。そして「なぜ、こんな所に来たのか」と聞くので、

「訳も判らず来た」と答えるしかなかった。すると「田舎に帰ったら、このこと言

うんじゃないぞ。故郷に行ったら、何も話すな」と言う。なので私も「私に会った
とは、言わないで」と頼んだ。ところが父に会ったら、に「一緒に乗って来た」と

話すのよ。精米所で「荷物を乗せてあげたのに、家に戻らなかったのか」と聞く
のよ。父はその人を停留場まで送ってあげた。

お父さんにはどう説明したのですか？ 
包み隠さず話したよ。新郎が嫌いで、日本の工場に行って来たと。父はそれ
で、推測できたと言った。

荷物手伝ってくれた人は、なぜそこに来たのですか？ 
軍属だと言っていた。軍人のための労務者で行った。

軍属ですか？ 
そうだよ。よく聞くと、軍人ではなく労務隊。自分から志願して行く人もいて、
選ばれて行く人もいる。その時は日帝時代で、配置されて来たとか。確実なこ

とは分からない。

何年ぶりに戻ったのか、記憶ありますか？ 
分からない。憶えてない。帰る時は、本当に凄い船だった。外国の豪華な客
船、そんな白くてとても良い船に、朝鮮人も日本人も一緒に乗った。行く時は

日本軍「慰安婦」 口述記録集

155 

台湾に寄ったが、帰りは台湾を経ずまっすぐ来た。何日もかからなかった。

帰りに朝鮮人や米国人見ましたか？ 
見たって判らない。考える余裕もなかった。

天気はどうでしたか？ 
天気？天気は良かった。寒くも、暑くもなく。

朝鮮人が連れて行ったから、その朝鮮人が憎くありませんか？ 
なに、日本人にやらされたんだ。とにかく日本人は、あらゆる悪いことを皆、し
た。朝鮮人が送ったのではなく、日本が送ったんだ。朝鮮人がわたしを連れて
行ったが、原因は日本人のせいだ。

面談日 : 2005年 9月 26日
面談者 : 姜貞淑、金ミジョン、朴勝美

録音文入力 : 禹栄頌
録音文編集 : 尹智炫、
録音文校正・校閲 : 李宣姈・尹智炫

聞こえてる？ 12人の少女の物語

156 

口述資料集発刊の趣旨を説明し、同意書作成のためにハルモニを訪ね
たのは2012年の冬、初雪がこんこんと降る日だった。ハルモニは脚が
ひどく痛くて、部屋の外に出るのも大変で、目も耳も悪かった。でもTV
が楽しみで、世の移り変わりに関心が多かった。「自分のような慰安婦
の生存者が、何人も残っていないと知っている、非常に残念だ」と言わ
れた。「前に面談調査した調査官に会いたい」と、何度も口にした。
委員会に申告をする時、初めは被害内容が周囲に知られるのを極度に嫌
った。調査官がハルモニのお宅を訪問する時も、周囲の人たちには調査
官のことを「遠い親戚」と嘘をついた。しかし「被害事実をみな明らかに

したので、今はもう恥ずかしいものがない」と話し、口述資料の利用に

同意した。

◆ 

面談後記 ◆

E○○  1922年生れ 

1940年10月頃、 全南(チョンナム)光州(クァンジュ)から動員される。 

光州から麗水(ヨス)に移動、麗水で船に乗り、日本と台湾を経由してパ

ラオに移動 

パラオ、ラバウル(現パプアニューギニア領ニューブリテン島)で

日本軍慰安婦生活

1945年

パラオで解放を迎える。

1946年頃、

釜山に帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

159 

行ってはまた乗せ、また行くと乗せた。

南洋群島に行った話、聞かせて下さい。
光州○○紡織会社で働いていた。大きい紡織会社でそこから、多数が行った。

紡績工場ではどんな仕事をしていましたか？ 
木綿のホコリをはたく仕事。木綿がこうやって上り下りする時、ホコリをはたく。

E○○  1922年生れ 

1940年10月頃、 全南(チョンナム)光州(クァンジュ)から動員される。 

光州から麗水(ヨス)に移動、麗水で船に乗り、日本と台湾を経由してパ

ラオに移動 

パラオ、ラバウル(現パプアニューギニア領ニューブリテン島)で

日本軍慰安婦生活

1945年

パラオで解放を迎える。

1946年頃、

釜山に帰国

第 6 話

母が祈ってくれたおかげで、
死なずに生きて帰れた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

160 

工場ではいつから働いたのですか？ 
工場でおよそ二年間働いた。工場に入ったのは17歳頃。家で野良仕事を手伝
っていたら、工場で人を募集すると聞いて行った。故郷から３人くらい行っ
て、就職した。

工場で働いていたのに、なぜ南洋群島へ行くことになったのですか？
その頃、働いていても皆、日本へ行きたくて必死だった。誰が扇動したかも知

らないで、私たち皆、すぐにでも日本へ行きたがって、大騒ぎだった。働いて

いる途中なのに皆が、「日本へ行こう」というので、「それなら私も」と付いて
行った。

何人一緒に行ったのですか？ 
分からない。たくさん行ったよ。働いていて、皆行ったが、分からない。

工場では人集めが大変なのに、日本に行くのを放っておくのですか？ 
ああ、工場では行くのに賛成した。

なぜ？ 

日本に行くから。

工場を出て、どこへ行きましたか？ 
(ため息つき) 皆、一度に集って、何人も南光州駅で汽車に乗った。

汽車の切符を買いましたか？ 
そんなのない。「皆、乗れ」と言うから、そのまま乗った。私はまだ物心もつか

日本軍「慰安婦」 口述記録集

161 

ず、「日本に行ける」と、跳ね回って喜んだ。その時はもう、周りの人たちがみ
な、「日本に行くと良い」と言っていた。

その時、何歳でしたか？ 

18か19、それ位だった。

季節は何時でしたか？ 
初冬。

それなら服は少し暖かいものを着ましたか？ 
別に暖かいもの、着なかった。こんなチマチョゴリ。黒いスカートに白い上衣。

南光州駅から、次はどこへ行きましたか？ 
次にどこへ行ったのか、どの駅なのかも私たちは分からない。汽車に乗ってど

こまでも行って、また寝て乗った。麗水で船に乗り、何日もかかった。

一緒に行った人たちは皆、同じ工場の人ですか？ 
工場の人だけでなく、別な人も多かった。光州からは、もっと多く乗って来た。
その時は人がいないから。田舎で募集して来る。済州島(チェジュド)からもたく
さん来た。

麗水で船に乗って、日本へ行ったのですか？ 

日本へ行ってから何日か休んで、また乗って行った。

何日か休む時は、どこで休むのですか？ 

どこででも所構わずご飯を食べた。誰がご飯をくれるのかも、知らないで。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

162 

一緒に船に乗った女は何人いましたか？ 
それは分からないが、多かった。時々また乗せて、途中でまた乗せる。光州で
汽車に乗せたら、また日本のどこかで、また船に乗せる。

誰が連れて行くかは分かりましたか？ 
誰が連れて行くのかなんて分からない。

日本から船に乗って、どれくらい行ったのですか？ 
日本で船に乗る時、どこで乗ったのか、はっきり思い出せない。南洋群島に行
くのに１ヶ月と10日間乗った。船に乗ってからひと月以上かかった。 

船の中では仕事はしなかったのですか？ 
ただ、くれるご飯食べて、他にすることもなく。船はとにかく皆で、楽しく行っ
たよ。

船内のご飯はどうでしたか？ 
その時は、お米のご飯。食卓で食べたのか、テーブルで食べたのか、それも思
い出さないが。誰がくれるのか知らずに、とにかくご飯をくれる人がいた。お
かずも分からず、何でもそのまま、出されるものを片っ端から食べた。

1ヶ月半ぶりに船から下りたのは、どこでしたか？

どこで降りたのか、記憶はない。台湾で一度、降りたかも知れない。

台湾で降りて何をしましたか？ 
ただそのまま歩き回って、また船に乗る、それだけ。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

163 

多くの人たちで一緒に歩き回ったのですか？ 
そう。監督がいて、みなで歩き回った。見物し終わると、「船に乗れ」と言われ
て、また乗った。

夜の睡眠はどこで取られたのですか？ 
旅館のような所で寝た。

台湾から再び船に乗って、次に行った所はどこでしたか？ 
次がどこかは分からない。降りて休んだら、また乗る。

最後は、どこで降りましたか？ 
南洋群島。パラオ島は後方で、南洋群島は戦場。パラオに到着して数ヶ月いた

ら、また「南洋群島に行け」と言われた。南洋群島には数年いた。南洋群島は一

般人がいなくて、全部軍人だった。

間抜けのように、知らないまま、時が過ぎる

南洋群島では、何の仕事をされたのですか？ 
軍人の接待だけした。

接待というのは、どういう仕事ですか？ 
軍人の接待をした、それで皆、判るだろう、何をやたら聞くのか。それで皆、想
像できるだろう。何をまた聞く。知らなくても良い、そんなこと。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

164 

軍人がいたというのは、働いた場所は部隊の中にあるのですか？
部隊の中のようなものだ。そこは一般人がいないから。

それなら部隊の外にあったのですか？ 
ああ。部隊に近い場所。

ハルモニがおられたのは、どんな家でしたか？ 
ハコ部屋、板張りのアバラ屋がずらりと、ずらりと並んでいる。寄宿舎みたいな
長い家が、何軒もある。

何で作られた家ですか？ 
木。少し高い木を杭にして打ち込み、そのまま縛った家。地面から少し離れて
いる。

>>> 

1920年代に撮影したパラオの家屋。パラオ教育会『パラオ島風物写真帖』、

1928、収録写真。熱帯地方のパラオは通風、地熱遮断、蛇と害虫の接近を防ぐため
に、地面から床を浮かして家を建てる。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

165 

部屋一つに一人ずつ暮すのですか？ 

うん。

管理人は、どんな人ですか 

日本人の若い男だよ。

隣の部屋の人と話しましたか？ 
隣に誰がいるのか知らない。当時は話をしたかも知らないが、今は思い出さない。

そこにいた女は、どこの国の人ですか？ 
みな朝鮮の女だよ。

管理する1人だけが、日本の男なのですか？ 
なぜ1人だけ？もっといる。寄宿舎を管理する人が一人いて、監督はまた別に
いる。

食事はどうしましたか？ 
食堂で食べる。

食堂は大きいのですか？ 
大きい。

そこにいた人たちが、一度にご飯食べるのですか？ 
一度には食べない。外で食べたりもする。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

166 

食堂で働く人がいるのですか？ 

うん、南洋群島の人ではなく、大抵みな日本人。南洋の人は真っ黒じゃない。

食堂で働く人は男ですか？ 
男だよ。

食事の時間が決っているのではないのですか？ 
決まってなくて、何時でも行ったら食べられる。

朝食は何時頃ですか？ 
朝は遅い。

朝食召し上がった後、一日の日課を少し話してください。
一日の日課なんてあるかい。そんな所で山だけ見つめて、軍人が出入りするだ
け。接待すれば良かった。

近くに山があるのですか？ 
全部、山だよ。山と言っても高い山でなく、こんなに低い。低くて丘も余りない
ので、人が充分、行来きできる。

周辺の風景はどうですか？ 

どこでもあまり、表を歩き回れない。そこでもほとんど外出させない、出られない。

寄宿舎に柵が張られているのですか？ 
そんなのものはないが、軍人がうようよしている。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

167 

軍人が何時、うようよするのですか？ 
軍人は毎日うようよしている。飛行機に乗って行く人、戦闘に出かける人、ま
た休むも人いて、交代で戦う。休む時間がどこある。

朝ご飯食べると、軍人が来るのですか？ 
そうだ。

どんな日に軍人がたくさん来るのですか？ 
そんなのない。そこには暦もなかった。今が何月なのか、それすら分からな
い。間抜けのように、知らないまま時が過ぎた。

夜は休むのですか？ 
夜も軍人が来る。なぜ夜に休める、昼夜などない。暇さえあれば、何時でも来

る。

階級による差がありますか？ 
階級の低い人は、どうしても時間の余裕があまりない。星を付けた人は夜、多

く来る。

「慰安婦」や「挺身隊」という言葉を聞いたことありますか？ 

もちろん。

何時、聞かれたのですか？ 
いつ聞いたのか憶えてないが、聞いた。私たちが「挺身隊」に行った訳だ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

168 

勤労挺身隊という名で、工場で飛行機の部品を作った人もいます。 

こちらは工場なんて、一切ない。全部、軍人の用足しだけ。

軍人を相手にして終わったら、洗いましたか？ 
洗う薬をくれた。どんな薬なのか分からないが、皆にくれた。

薬はどのように使うのですか？ 
洗面台に水を混ぜて洗う。薬を入れると、色が白くなる。

部屋の中で洗うのですか？ 
洗う場所がある。部屋から出ると、ベランダみたいに出る所がある。

各自の部屋一つごとに皆、そういう洗う所があるのですか？ 
皆、ある。

部屋の中には、他に何があるのですか？ 
ベッドにひとつ置くと、小さな空間だけで体は動かせない。他に生活道具はない。

服は、どこに入れるのですか？ 
ボックス、箱の中に入れておく。韓国のタンスのようなものはない。

ハルモニが行く時は、黒と白のチマチョゴリ着て行ったのではないですか。 
服は良いのを着せてくれる。なぜなら、それがみな借金になる。あいつらの金
で服着せて、「借金返せ」と。しょっちゅう買ってくれる。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

169 

着せてくれる服はどんなものですか？ 
洋服。あいつらが買って持って来る。私たちは、市場にも行かせない。市場が

どこにあるのかも知らない。

外出したことは、ほとんどないのですか？ 
ない。

周辺に川などありましたか？ 
相当遠くに、船が通う所がある。そこでは車でなく、船を主に使う。

川ではなく海ですか？ 
海だよ。山があって海がある、そんな場所。

海辺に行かれたことはありますか？ 
出て行って、何をする。そんな自由はないと言っているだろ。

ハルモニ、「サック」(コンドーム)って聞いたことがあります？ 

「サック」。皆使う。軍人が持ち歩く。

軍人は票やお金をくれるのですか？ 
帳場〔慰安所の受付〕に出してから入って来る。金を出して来るのか、何を出

して来るのか知らないが、帳場に皆出す。私たちとは関係ない。

帳場に出して、部屋に来るのですか？ 部屋の扉にハルモニの名前がかかっ
ているのですか？ 
そんなの、かかってない。部屋の番号が書いてある。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

170 

ハルモニが何号室だったか憶えてらっしゃいしますか？ 

11号。

11号というと、長い宿舎の真ん中ですか、端の方ですか? 
真ん中辺。

ハルモニの家はとても長かったようですね？ 
家が大きい。普通の大きさじゃない。一階、二階、三階まである。三階といっ
ても、韓国のように高くない。こうやって路地に一列、二列と三階建てがある。

長い家が上に伸びるのでなく、横に並ぶのですか？ 
ああ。ずらりと並ぶ。

女たちは少なくとも、6、70名はいたようですね？ 

もっといただろう、いや、いたはずだ。

さっき話した管理人が、主人なのですか？ 
管理人だよ。主人はまた別にいる。隣に主人の家が別にあるが、余り来ない。
管理人とだけ話す。

ハルモニの宿舎を呼ぶ名前が、別にありましたか？ 

「名月亭」と言ったか。名前はあったようだが、よく分からない。

主人に家族がいましたか？ 
妻がいて、子どもはいなかった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

171 

管理人にも夫人がいましたか？ 
管理人も南洋群島に来た日本人だから、家族はいなかった。

日本人の管理人とは、ハルモニを南光州駅から連れて行った人ですか？ 

連れて行った人は、また別の日本人だ。その頃はみな日本人で、朝鮮人はいなかっ

た。宿舎のとても大きい事務室に皆、集まってから一緒に行った。

その人が南洋群島まで連れて行ったのですか？ 
一緒には行かなかった。その人は若い女を相手に商売人で、私たちが間抜けの
ようについて行っただけだ。

日本人管理人を、南洋群島で初めて見たのですか？ 
うん。

南洋群島で日本名がありましたか？ 

「アイコ」と呼ばれた。「アイコ」にもなって、「アヤメ」にもなった。「アヤ

メ」が、初めに使った名前。

性病検査もしましたか？ 

した。一週間に一度ずつする。

どこで、ですか？ 

病院がある。軍人たちも治療する所。

病院には一週間に一度ずつ、そこの人たちが皆行くのですか？ 
そうだよ。みな、一週間に一度検査する。一人ずつ検査して出て来るが、一日

聞こえてる？ 12人の少女の物語

172 

でできない分は、翌日にする。

検査する日は軍人を受け入れないのですか？ 
そう。

ハルモニは病気かかったことはありますか？ 
かからなかった。

一緒にいた人の中に、妊娠した人はいませんでしたか？ 
妊娠した人も多い。妊娠すると、パラオ島に送り帰す。後方に送られて、妊娠

した女が子どもを産んだのか、産まなかったのかは知らない。

>>> 

1943年11月5日、ラバウル港に停泊した日本軍艦隊を攻撃する米軍。

ニュースパーク(日本新聞博物館)、『戦後60年 写真が伝えた戦争』、2005、50頁収
録の写真。日本軍は1942年1月23日ラバウルを占領して主な拠点とした。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

173 

パラオ島にはどれ位おられたのですか？ 
パラオ島にも、しばらくいた。ここにもいて、あそこにもいて、よく思い出せな
い。一箇所だけにずっといたのではないから。

ラバウルで子どもができ、パラオに行った、

前方なので子どもは産めないと。

何度も往復されたのですか？ 
一度、移った。パラオという後方から、ラバウル島に行った。

ラバウル島には、同じ主人と行ったのですか？ 
その主人と行ったのではなく、女たち何人で行った。行ってみたらそこも、パ
ラオのように部屋がずらりと並んでいた。

ラバウルには他の主人がいたのですか？ 
主人は何時もの同じ主人で、管理人だけが違う。

それなら同じ主人が、ラバウル島にもう一つ慰安所を作ったのですね。
そうだよ。女はみな、主人の私有物なので、家だけ作る。そこでまた金儲けし
ようと送ったんだ。

ラバウル島でも「サック」は軍人が持って来ましたか？

「サック」は軍人が持ち歩く。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

174 

ラバウル島でも一週間に一度ずつ検査をしましたか？ 

うん。軍人の病院で。

検査する人も軍人ですか？ 
軍人。病院では白い服装着ていた。

軍人なのに軍服は着ないのですか？ 
中に軍服着ている。

看護員もいましたか？ 
看護員もいた。

注射は打ちませんでしたか？ 
注射も色々打った。

注射をなぜ打つのですか？ 
ただ、予防注射だよ。

どんな注射ですか？ 

注射の薬の名前なんて、知らない。どうやって知る。何も言わず、ただそのま
ま打つ。

注射はどこにいた時、打ちましたか？ 
パラオでも打って、ラバウル島でも打った。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

175 

病気にかかって打った注射ではなくて？ 
私は病気にはかからなかった。

主人からお金貰いましたか？ 
そんなのない。借金を一生懸命返そうとしても、服をたくさん買わされて。私
たちが好き勝手に服を買って着ることはできない。票をある程度貰ったら、
そこでお金に両替する。一万円貰ったら、半分は主人に、半分がやっと私のも
の。そして少しずつ返して行く。

解放までずっと、ラバウル島におられたのですか？ 

ラバウル島に行って、パラオ島に来て、解放になり、その翌年、出て来た。ラバウル
で一週間ごとに行って検査をする。病院に行ったら、妊娠していた。子どもができ
ても、ラバウルは前線だから子どもを産めない、「妊娠したら、出て行け」と言われ
て、

〔パラオに〕仕方なく出てきた。それでパラオ島にいて、解放になった。

>>> 

『ラバウル慰安所』、日本軍慰安婦被害者姜徳景の作品、資料提供  ナヌムの家 / 

日本軍「慰安婦」歴史館

聞こえてる？ 12人の少女の物語

176 

パラオ島にまた戻られてからは、どこで過ごされたのですか？ 
一番、最初にいた所。そこしか知る所ないから。行く所がないし、知っている
人もいないから。パラオ島に来た時、一番初めに行ったその主人の所に来た。

赤ん坊はパラオ島で出産したのですか？ 
パラオで産んで連れて出た。子どもは韓国に来てから、3歳か4歳で死んだ。

どうして死んだのですか？ 

病気が悪くなって死んだ。

妊娠してパラオ島に出て来て、どのように過ごしたのですか？ 
清掃や台所仕事など、すべてした。

出産して解放後、出てくる時まで、パラオ島にどれくらいおられましたか？ 
子どもが這い回るくらいまで、しばらくいた。

出てくる時、借金はみな返せましたか？

 借金返して金を儲けても、持ち出せなかった。あの国で、政府が、お金を持

って行けないようにしたので、みな捨てて来た。船に乗る時、韓国へ帰る人た
ち、一人三万円〔ママ〕ずつしか、外に持ち出せなかった。私たちが韓国に戻る
に船に乗ろうとすると、徹底的に身体調査する、体を調べ尽す。

船に乗る時、米軍がいたでしょう？ 
私たちが帰る時は、鼻の大きい人たち(米軍)が送ってくれた。行く時は何日も
かかったが、出て来る時は一週間しかかからなかった。本当に早くて直接、韓
国に来た。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

177 

どの港に入って来たのですか？ 
降りた所は釜山のようだった。釜山でもまた荷物検査して、持って来た物は、
みな奪い取られた。私も持って来た物を奪われた。

ハルモニはどんな物を持って出て来られたのですか？ 
分からない。忘れた。

パラオ島で産んだ赤ん坊を背負って出て来られたのでしょう？ 
それは背負って来たよ。

解放になって釜山に到着した時、季節は何時でしたか？ 
寒くも暑くもなく、秋だった。何月かは詳しく分からないが、そう寒くはなかった。

赤ん坊背負ってどこへ行きましたか？ 
実家の外に、行く所あるかい？ 母がとにかく驚いた。子どもを背負って来たか

ら、昔はそんな子いなかったから驚くだろう。今のように恋愛してという時代で

ないから、老人たちが恥に感じた。小娘が出て行って、子ども産んで帰って来る
のは、良くない話だよ。

紡績工場から出発する時、お母さんに連絡しなかったのですか？ 
行く時はできなかった。反対されるかと思って、連絡しなかった。

行ってから手紙は出されなかったのですか？ 
出した。南洋群島とは言わず、ただ「日本に来ている」とだけ書いた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

178 

何と書かれたのですか？ 
ただ「元気だ」と書いた。手紙はしょっちゅう送ることができたから、何度も書
いた。

ハルモニが直接書いたのですか？ 
他人に書いてくれと頼んだ。

娘が突然現れたので、お母さんとても驚かれたのでは。
ほとんど死んだと思っていたそうだ。あとで、何とか手紙で少しずつ連絡した
ので、分かったと。母が毎日、甕に水を汲んで祈っていたから、私が死なずに
生きて帰れたのよ。

面談日 : 2006年 5月 10日
面談者 : 尹明淑

録音文入力 : 禹栄頌
む録音文編集 : 尹智炫
録音文校正・校閲 : 李宣姈・尹智炫

日本軍「慰安婦」 口述記録集

179 

E○○ハルモニは現在、療養院で暮している。活動が不自由で、聴力の良

くないハルモニに、口述資料の利用同意を直接貰うのは難しかった。ハ

ルモニの被害内容を知る唯一の家族である、長男の助けを借りた。
息子さんは日本語が上手な母が、外国で看護婦として働いていたと思
っていたが、委員会に被害申告する際、被害事実を初めて知った。「日
本に行くと良い」という口実で、母をトラックに乗せて行ったという、
動員当時の状況を聞いた時、特に心が痛んだという。長男は、療養院
で過ごす母に「残った人生を楽に送るほかに望むものはない」と言わ
れ、E○○ハルモニの口述資料の利用を許諾してくれた。

◆ 

面談後記 ◆

F○○  1923年生れ

1940年頃、

平壌(ピョンヤン)から動員される
中国漢口(現在の湖北省武漢市)に移動
漢口で2年間日本軍慰安婦生活

1942年頃、

海南島(現中国)に移動、海南島で3年間日本軍慰安婦生活

1945年、

海南島で解放を迎える、同年10月頃、帰国する日本軍人について

日本に移動

1946年

日本で留まっていたが、釜山に帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

181 

行くやいなや、無理矢理、日本軍人の相手をさせられた

ハルモニ、中国にはどうやって行くことになったのですか？ 
父が悪い病気にかかり、父の友だちが「鉱山に就職させよう」と言って、故郷
を離れて見知らぬ所に行くしかなかった。ところが汽車の中で泥棒にあって無
一文の乞食になり、しかたなく平壌に引っ越した。平壌は都会だから、土方で

もして暮らすことができた。ところが「区長」が、今でいう町長が「良い工場
に就職させてあげる」と言う。父が「何をする工場か」と聞くと、「そこは良い

F○○  1923年生れ

1940年頃、平壌(ピョンヤン)から動員される

中国漢口(現在の湖北省武漢市)に移動
漢口で2年間日本軍慰安婦生活

1942年頃、海南島(現中国)に移動、海南島で3年間日本軍慰安婦生活
1945年、 海南島で解放を迎える、同年10月頃、帰国する日本軍人について

日本に移動

1946年

日本で留まっていたが、釜山に帰国

第 7 話

誰にも訴えられず、泣き通した。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

182 

工場だから、とにかく行けば良い」と。それなら「月給はいくらか」と言うと、

「月給はそこで働いてみて決まる」と。そのようにして区長が私を連れて、平

壌の○○里に行った。○○里は韓国式の家で、中に家に入ると、区長が私をそ

こに座らせて、またどこかに連れて行く。何か個人の事務室みたいな所に連れ
て行かれると、私の齢くらいの女の子が5人位座っていた。そこでは「よく人を

募集して送る。金儲けに行く」と言うので、そこに半月ほどいた。

その時ハルモニは何歳でした？ 

18。

○○里で半月間過ごされたのですか？ 
はい、○○里で。ところがいざ連れて行かれる時、区長がまた別の人に引き継
がせて、引き継いだ人が平壌の○○里に連れて行った。○○里で「人を募集し
ているから、そこでもう少し待て」と言うから、そこで気楽に暮らしていた。す
ると日本人の女がおよそ7、8人集まって来た。でも私は日本語がよく分からな
かった。

誰が日本人なのですか？ 
女を受け取って工場に連れて行く人が日本人だったが、どこがどこだか分から
ず、右往左往して汽車に乗り、まるまる二日くらい行った。南京(ナンジン)を過
ぎると、日本語で「カンコウ」と言う、「カンコウ」は漢口だと。

南京に行ったのですか？ 
南京を通り過ぎて、漢口だと。何が何だか分からないから、私はただついて行

くだけ。そこで汽車を降り、何か馬車のようなのに乗せられて、降りた家が中

国人の家。中国人の家に部屋がいくつもあって、隣りに行ったら女が30人もい

日本軍「慰安婦」 口述記録集

183 

>>> 

『1938年10月27日、漢口駅を占領した

日本軍。タイム-ライフ編集部、

『LIFE AT WAR』韓国語版、

52頁収録の写真

た。そのまま着くや否や、全員、日本軍人の相手をさせられた。

民間人はいませんでしたか？ 
いなかった。 民間人はいない。全部、軍人。

ハルモニ、慰安婦になるのを、何時知りましたか？ 初めに連れて行く時は、
金を儲けさせてくれると連れて行ったのではないですか？ 
そこに到着するまで知らなかった。そこでそれを知ってから、「慰安婦」と言
われた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

184 

30人、40人。一晩中、夜も眠かせない

到着した日から軍人が来たのですか？ 
いや、およそ三日後に。軍人が来たら「サービス良くしろ」と、教育させられ

る。三日休んで、「先に来ていた女のように、客を取れ」、明日からは、下の部

屋に座って「先に来た人から聞いて、習ってからしろ」と言われた。牛のように
びくともせず、ただやられるだけ。初めは痛くて、とても泣いた。初めての女、
処女を軍人たちがやたら探しまくる。

ハルモニのいた家は、どんな風でしたか？ 
漢口の家は、巣窟のようだった。二階まであって、部屋がくっ付いて建ってい

た。女たちはみな二階で待っていて、下の階に客を入れる。板張りの粗末な家
で、何か叩くと音がする。ああ!（ため息）、誰かに訴えることもできず、泣いて、
泣くだけ泣いて、そこでは誰にも話せなかった。（悲しみがこみあげて、大泣き

>>> 

『中国雲南省の昔の慰安所の建物。東北アジア歴史財団、『日本軍「慰安婦」

とナチスドイツ収容所の強制性労働』、2007年、46頁収録の写真。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

185 

する）「顔が可愛いから、訪ねて来る人が多い」とか言われて。なので、一日中、
休む暇もなく疲れ果てて。ご飯食べる時だけ、一ヶ所に集まる。そして夜が明け
ても、夜も昼も関係ない。主人の特権で、誰にでも好きに遊ばせる。

ハルモニの部屋は別にありましたか？ 
別にあった。

部屋でじっとしていると、男が一つずつ入ってくるのですか？ 

うん、入ってくる。

ハルモニが綺麗か、綺麗でないのか、見もせずに押し寄せるのですか？ 

「出て来い」と言うのよ。降りて行くと、男たちからこれぐらいの票(手で票の

大きさを示す)を一枚ずつ渡される。

男たちがハルモニに票をくれるのですか？ 
票に番号が書いてある。誰が綺麗か、不細工か知らなくても、一度相手にすれ
ば、顔が可愛いか判るじゃない。次から来る時、私の番号を指名する。

ハルモニの番号があるのですか？ 

うん。私の番号だけ、持って来る。前方に行って死んだ人もいる。海軍、陸軍、

みな全員、軍人。

海軍か陸軍か、どうやって分かるのですか？ 

自分たちで話すだろう。私は空軍だとか。〔日本軍に空軍はなく、海軍と陸軍にそ

れぞれ航空部隊があった〕

聞こえてる？ 12人の少女の物語

186 

空軍もあったのですか？ 
そう。空軍、海軍、陸軍と、別にあったのではない。陸軍は肩に飛行機のような
マークがある。誰が海軍で、誰が陸軍で、誰が空軍で、皆判る。ところが私を
一日中、買う人がいた。つまり、お金をたくさん使う人。

そのお金は誰に払うのですか？ 
主人に上げるのか知らないが、とにかく後ろ盾のある人は、自分で一日独占で
きる。お金をくれるのか、どうするのか、私はお金と関係ないから知らない。私
はただ無条件、「横になって寝ろ」と言われたら、言われる通りするしかない。
向うで何を話して、どんな取り引きをするのかは、ひとつも分からない。

ハルモニを一日中、買って、何をするのですか？ 
一日買って、自分ひとりで連れている。つまりそこで、後ろ盾がある人だよ。あ
いつら同士で取引きして、一日中女を連れて遊ぶから、「他の人は絶対相手に
するな」と独り占めにする。将校や、何か後ろ盾がある人だろう。

将校か一般兵士なのか、見ればすぐ分かりますか？ 
将校は服が全然違うから、服を見たらすぐ分かる。軍隊で式典があると、可愛
い子だけ選ぶの、私も招かれた。服も韓国服を着ず、洋装したり和服を着させ
て。劇団が慰問に来ると、将校が私を呼んで「自分の女だ」と、側にぴったり
座らせる。

ハルモニの所に来た人の中で、一番偉い人は誰でしたか？ 
分からない。将校だと言うから、将校じゃないか。ここにマークがあって、偉
い人は糸で線が引いてある。星のようなのを肩に吊るしているから、見れば判

る。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

187 

ハルモニはお金を貰えなかったのですか？ 
一銭も貰えなかった。金を見たことがない。だから余計、口惜しい。(しばらく
の間、しくしく泣く)そこで3年間、あんなことさせられた。一日に10分ごと、男
相手に10分。

一人当たり10分ですか？ 

うん。

一日に軍人、何人来るのですか？ 

ものすごく多い。人気のある人は、そこでは良く待遇してくれる。人気がない

人は言うまでもなく、まるで糞味噌扱い。それなりに私はそこで良い待遇を受
けた方。30人、40人、一晩中。夜、睡眠もほとんど取れない。誰かに抱かれた
まま寝る。一人で寝れない。一人でいる時もない。そんな恐ろしい所にいた。

殴られませんでしたか？ 
殴られはしなかった。日本語で「綺麗だ」と言われた。16歳で、花咲く歳頃。
他の人は「気に喰わない」、「言うこと聞かない」と、やたらに殴られ、足で蹴

られた人もいた。

主人が良い待遇をしてくれるというのは、どんな待遇なのですか？ 
人気で客をたくさん相手にすれば、食べものもたくさんくれ、服も一着余計に

くれる。売れない人と売れる人とでは、少し違う。

主人が差別待遇をするのでしょうか？ 
ええ、差別をする。夜が明けると、軍人が鈴なりで待っている。入って来ようと

聞こえてる？ 12人の少女の物語

188 

して、軍人たちが押し合う。入って来ると、「サック」を使う。ひとりして一度

洗うのだが、時には一日に百回も洗いに通う。必ず洗いに行かなくてはならな
いから。

規則だったのですか？ 
そう。月経があっても、関係ない。

関係ないのですか？ 
関係ない。生理でも男を受け入れないといけない。生理が来ると、腹が痛く
て壁に寄りかかって苦しんだ。すると病院に連れて行って、腹に冷灸して貰っ
た。冷灸は大体10分くらいだが、お腹が剥がれるように感じた。一日経つと他
人の皮膚みたいで、つねっても分からない。三日くらいすると死んだ黒い血が
出た。十日間か治療を受けたら、治って再び出て来る。

なぜそんなに痛むのでしょう？ 
月経の時に、男と関係するのが良くない。血がどんどん出るのに、男を数多く
受け入れたから。そこに三年程いて、また選抜されて海南島に行った。

海南島になぜ行ったのですか？ 誰かハルモニを選ぶのですか？ 
主人か誰か、日本人が私に「海南島へ行け」と言い、海南島に連れて行かれた。

海南島には何人位いましたか？ 
船に乗って行ってみたら、およそ3、40人いた。

ハルモニがいた慰安所に何人位いましたか？ 
その慰安所に30人以上いた。私たちだけでなく、角の部屋にもいた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

189 

ハルモニがいた慰安所は、朝鮮の女だけでしたか？ 
朝鮮の女だけ。日本人も中国人もいない。食事の仕度をする人だけが中国人。
男と女が夫婦で来て、ご飯を作る。軍人を相手にするのは、みな朝鮮の女だっ
た。

朝鮮の女たち同士、集まって話たりしますか？ 
遊ぶ時間などない。遊ぶ時間がどこにある。時間的に一日中、体が縛られてい

るから、睡眠もまともに取れない。

そこでは日本の名前が別にありましたか？ 

日本の名前で「チドリ」と。 漢口では「チドリ」で、海南島に行ってからは「キ
クコ」。

病気にかかったことはありませんか？ 
そこでは病気にかからないようにした。「サック」を使って、一週間に一度ず
つ検査して、悪い人は出られない。入院する。

病気にかかった人は多かったですか？ 
かかった人、いるだろう。いたら、しっかり治す。梅毒にかかったら、606号注射

して商売させない。商売できない。 病気かかると１ヶ月の人もいるが、6ヶ月入

院する人もいる。治療のことは、私は検査しただけだから詳しく分からない。考
えただけで身震いする。

検査しに人が来るのですか？ 
いや、慰安所から検査する所に、ジープか何かに乗せて、連れて行く。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

190 

女たちが一度に検査に行くのですか？ 
皆で行っても、全員検査できない。7人とか10人ずつ、連れて行く。梅毒や淋
病が多かったが、私はそんな病気に一度もかからなかった。

幸いでしたね。妊娠しませんでしたか？ 
妊娠なんかできない。冷灸で子宮が縮んでしまって。他の人で、妊娠した人は
いた。

妊娠した人はどうしたのですか？ 
妊娠した人がどうしたのか、一つも思い出さない。妊娠した人はどこかに行っ
てしまい、見なくなった。

漢口で、朝鮮人は見ませんでしたか？ 
みな日本の軍人で朝鮮人はいない。

もしかハルモニが「可愛い」と、こっそりお小遣いくれるような人いません
でしたか？ 
いなかった。お金はなかった。アイゴー、10円でも、一度も貰えなかった。金
があっても使えない。使うところもない。本当はお金を貰って、家に送りたかっ
たが。金があっても、どこかに隠すところもなかった。

服はどうやって買うのですか？ 
主人が買って来る。

漢口にどれくらいいたのですか？ 

18歳で行ったから、2年ほどいた。19か20歳で海南島に行った。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

191 

漢口の慰安所から何人、海南島に選ばれたのですか？ 
たぶん7人。

綺麗な人だけ選んだのですか？ 
綺麗かどうか、別に見もしない。私と一緒に行ったのは、17か18歳だった。

漢口から海南島には誰が連れて行きましたか？
 漢口から海南島には、誰かが引き継いだから、中間に日本人がいたことだけは
確かだが。何も教えてくれないから、誰なのかも分からない。

逃げるなんて…恐ろしくて考えたこともない。

海南島はどうでしたか？ 
海南島は漢口よりは、少しマシだった。軍人も少なく、昼間に10人くらい来
て、夜は将校が来て寝て行く。だから漢口よりは、少しマシ。

漢口から海南島へ行くのに、何に乗ったのか憶えていますか？ 
漢口から海南島へ行くには、まず汽車で上海まで来た。上海で一週間寝て、そ

こに女が10人位集まった。そして船に乗って、海南島に入った。行く途中「休

むとこるが台湾」と案内があって、台湾で3日休んだ。休んで、次にまた10日間
昼夜乗ると香港。何日か香港にいて、出発して船から見ていたら煙がボワーッ

と出て、戦争で船がひっくり返っていた。そんな光景を見ながら海南島に行っ

た。着いたら熱帯だった。部屋でとかげが這い廻ったりして、恐ろしくて寝る
こともできなかった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

192 

ハルモニが乗った船はどんな船でしたか？ 
軍艦。軍人が乗っている…。

軍人が移動する船に、ハルモニが乗って行ったのですか？
一般人は一人もいない。船内では軍人と寝なかった。海南島へ連れて行かれ、
そこで降りてから、軍人の相手をした。でも漢口のように、昼夜何十人ではな
かった。

海南島ではどんな家でしたか？ 
普通の家だが、竹のようなのを編んで、藁で覆った板張りの家だった。

海南島には女が何人位いましたか？ 
およそ20人。

主人はどこの人ですか？ 

日本人。朝鮮人を見ることはない。

海南島では海軍が来ましたか? 陸軍が来ましたか？ 
陸軍だけ来た。海軍や空軍はいなかった。

漢口と海南島では、何か違う所がありましたか？ 
食べ物が口に合わなかった。安南米というおコメで、食べられなかったが後に
は仕方なく食べた。唐辛子も、ものすごく辛くて食べ物が違った。

海南島でも一週間に一度検査しましたか？ 
ええ、軍の部隊に入って検査を受けた。しないと軍人の相手ができない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

193 

海南島でも軍人の相手をするたびに、洗いに行きましたか？ 
そうだとも。それは私の気分なので、一生懸命洗う。洗わないと気持がすっき

りしない。

どんな水で洗うのですか？ 

真水。消毒薬もあるが、面倒なのでそのまま真水で洗う。洗って、すぐに流
す。

「サック」が足りなくなかったですか？ 

いいや、充分、器にあった。「サック」なんか山盛りに積まれて、いくらでもあ
った。どこでも行けば、「サック」を分けてくれる。主人が「サック」しなくて
はいけない、「使わなければならない。」と言って。使わなければならない規
則があって、教育受けているようだ。

破ったらどうなるのですが？ 
引っかかったら自分たちは捕まって、また別の人が来て商売始めるだけだよ。

海南島では、漢口より時間がありましたか？ 外出しましたか？ 
外出はできない。そこにいただけ。一人で出かけることはできない。熱帯で、
見慣れない町だし、行く所もない。ただ軍人が連れて出れば、ついて行った。

そこから逃げた人はいなかったのですか？ 
逃げた人など一人もいない。

逃げようと思いませんでしたか？ 
逃げるなんて、恐ろしくてそんな事は考えたことない。逃げたら、殴られる。客に

聞こえてる？ 12人の少女の物語

194 

待遇良くしないと、そいつが「お前が悪い」とまた叩く。私はただそのまま、大人

しく従うだけ。「ああしろ、ここしろ」と言われたら、そのままよく聞いた。逃げよ
うとなど思ったこともないし、そんな人一人もいない。逃げる話など聞いたら、み

な離れて行く。

誰が「逃げ出したら、どうなる」と話すのですか？ 

「逃げればどうなる」と、主人が話す。恐くて絶対、逃げようなどと思わなかっ

た。

ハルモニは殴られたことありませんか？ 
私は言うことよく聞いたから、殴られるようなことはなかった。

他の人が殴られるのは見ましたか？ 

うん。

海南島でも軍人や主人が、お金くれなかったのですか？ 
何人行くとか、主人が部隊と連絡したかも知れない。あいつら同士、みな知っ
ているのか分からないが、私がお金を貰ったことはない。

海南島でもハルモニの番号が別にあったのですか？ 

もう既に私がいる家を知っているから、真っ直ぐ来て「キクコ、いるか?」と聞
く。

番号はなくて、名前でですか？

そのまま名前で、「キクコ、いるか?」と聞く。客とちょうどあれしていると、部屋の
外で待っている。時には連れ出して、アイスクリームなんか買ってくれた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

195 

>>> 

海南島の昔の慰安所の建物。委員会が現地調査時に撮影。

アイスクリーム買うには外出しなければならないでしょう。ハルモニ一人で
出られなくても、連れて出るのは構わないのですか？ 
主人に話して連れ出す。何も言わないでは、連れ出せない。しばらく遊んでか
ら帰る。客と主人との取引があったようだ。

軍人と二人で、たくさん外出しましたか？ 
漢口では自由がなかったが、空軍の将校のような人が一度、ドライブに連れて
行ってくれた。「本当にこんな所に来て、可哀想だ。哀れだ。」と言って、美味

しいもの買って食べさせてくれた。

恋愛しようと言ってくれる軍人はいなかったですか？ 
私たちは恋愛なんてできない。「男と抜け出た」と、どこかへ連れて行って、目
をひん剥いて、ひどい目にあう。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

196 

ハルモニがいた家を軍人は何と呼びましたか？ 住んでいた家に看板なかっ
たですか？ 
漢口では看板があったが、忘れた。何年か前までは思い出したが、看板がそこ
にあるということだけ分かり、何と書かれているのか知ろうともしなかった。
ただその中で、自分がすることだけした。主人や慰安婦管理する男と軍人たち
が、みな門の前で写真撮る。撮ってから、「出て来い」と言われたら、ついて行

く。でも熱帯地方に看板はなかった。熱帯ではそのまま臨時の家のようで、そ

のまま入って扉だけ開いて閉じる。それだけ、看板はなかった。

女たちはなぜ、そこに来たのですか？ ハルモニは「金儲けできる」と言われ
たそうですが。
その人たちも皆、「就職させてやる」と言われて来た。その人たちを探して日
本語で聞いても、「私たちは知らない。あなたたちが、ああいうことしに来ただ
けで、私は知らない、分からない」と言う。お金は一銭も貰えなかった。

家財道具は主人から、何を貰いましたか？ 
家財道具なんてない。蒲団と枕。柳行李みたいなタンスに服入れて、化粧品も
入れる。

ベッドは？ 
ベッドはない。鏡があった。化粧品みたいのをくれたが、私は化粧しなかっ
た。

パーマはしましたか？ 
パーマする所などない。そのまま長い髪を、こうやって縛っていた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

197 

生理用品等はどうしましたか？ 主人がくれるのですか？ 
そう。「生理がある」と、口で言えばくれる。

ガーゼをくれるのですか？ 
違う。ガーゼではなく、綿みたいので防ぐ。これ貰って自分で作って、子宮に
はさむ。

どのように取り出すのですか、ハルモニ？ 

手でそのまま引き出す。子宮も手で洗った。

化粧品や服は主人が皆くれるのですか？ 

自分で出かけて個人で買って着るとか、そういうことはできない。ただ「買って
くれ」と言えば、買ってくれる。逃げるかと思って、お金もくれない。代わりに

何か「必要」と言えば、そういうのはいくらでも買ってくれる。

主人は「後でお金をくれる」とも言わないのですか？ 
お金は一切関係ない。「後であげる」と言ったが。後に海南島へ行ったが、一
銭も貰えなかった。でも解放されて日本の奴が、海南島から私を連れ出してく
れた。

海南島にはどれくらいおられましたか？ 
海南島にはおよそ3年いた。18歳で行って23歳で解放になったから、合計5年。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

198 

故郷に戻ったら、親戚が人間扱いしてくれない

解放はどうやって知りましたか？ 
解放されたことは、みな判る。日本人、日本の部隊がみな、いなくなった。でも誰
かが面倒みてくれないと帰れない。

ハルモニたちを放って置いておいて、自分たちだけ帰ってしまったのです
か？ 

自分たちだけ帰った。それで私が部隊に将校を訪ねて、私を「日本まででいい

から、連れて行ってくれ」と頼んだ。

主人はどこにいたのですか？ 

どこかに行ってしまい、みないない。誰もいない。

女たちだけ淋しく残されたのですか？ 
ああ、女たちだけ。

ハルモニ一人で将校を訪ねたのですか？ 

うん。私一人。

他の女たちは？ 
他の女たちも、何とか出ようと捜し廻った。その時は解放されたから自由よ。

ハルモニには、親しい友だちがいなかったですか？ 
親しい子がいても、自分が生きることしか考えられない。大騒ぎで、誰か同情

日本軍「慰安婦」 口述記録集

199 

している時間なんかない。自分の手で何とか出て行こうとして必死。私に「可

哀想だ」と言ってくれた日本の将校が、「俺が日本まで連れて行ってやる。私

と一緒に暮したらどうか」と話してくれて、ついて行った。船に乗ったら、人が

多かった。他の女もいて、男も多く、ぎっしりだった。

来る時はどんな船でした？ 
軍艦なのに日本人も朝鮮人も混じって、一般人がたくさん乗っていた。朝鮮人
がたくさんいたが、日本人の方が多かった。それに乗って佐世保まで来た。

日本に入れたのですか？ 

佐世保まで来たら将校が、下宿屋に泊めてくれた。下宿の主人に向かって、私

と「戦争の前線に一緒にいて、そこからの帰り道だ」と話すと、主人が「本当
に苦労した」と言ってくれて、とても待遇が良かった。よく考えてみたら、この

人について行って何とかしなければ、到底自分一人では生きて行けないと思っ
た。その下宿屋で家政婦をして、半年間その将校と暮らした。でもその男には
妻がいて、佐世保に何時までもいることはできなかった。それで誰かに、私を

「何とかして朝鮮に帰らせてくれ」と話した。それで誰かに引き継がせて、下

関まで汽車に乗せてくれた。

佐世保にどれくらいおられたのですか？ 
佐世保には半年くらいいただろう。

その時、手元にお金が少しはありましたか？ 

まったくない、無一文。まったく素っ裸。でも下関の旅館で私が一人で出入りし
ていたら、「綺麗だ、恋愛しよう」と日本人が寄って来た。日本人が私に良くして

くれて、お金もたくさんくれた。私が日本語上手で、日本の女みたいだったから、

聞こえてる？ 12人の少女の物語

200 

「私と結婚しよう」と言う。私が男に「親もいなくて誰もいない。私の体一つだ

け、だから少し助けて欲しい」と話すと、お金もどんどんくれた。その頃、一銭、
二銭で生活していたから、一万円は大金だ。それでその金を握って、そこから逃
げ出した。逃げて、下関から船に乗る切符を買って、釜山まで来た。

ハルモニ一人で、ですか？ 
一人で、船に乗って釜山に来たら、朝鮮人がたくさんいた。

朝鮮に来たのは、いつ頃ですか？ 
海南島を離れたのが10月。日本式に数えれば、24歳で出てきたのかな？

解放されて二ヶ月程海南島にいて、日本軍について出て来たのですね。その
二ヶ月間は、どこにおられましたか？ 
慰安所にいた。 主人は逃げていなかったが。解放されたので、そこにあったも
のは全部、自分のしたい放題だった。ただどうやってここから出て行くのか考
えた。熱帯地方の中国では、人々が安南米を炊いて「食べろ」と持って来てく
れた。唐辛子やダイコンのような物も、持って来てくれた。そのまま、そこで暮

していた。

ハルモニと一緒に戻った日本の将校も、解放後すぐ出て行ったのではないよ

うですね？ 

うん、日本人も残っていた。先に行く人たちは行き、残った人たちは手続きを踏

み、そのままでは行けなかった。私を連れ出してくれた、その人の姓が「鈴木」。

10月になって海南島から出て来た。そこは熱帯地方で寒かったり暑かったりしな

いが、何月かだけは分かる。佐世保へ戻って来たら、少し寒かった。下関では6ヶ
月過ごしたかな。そこで24歳になった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

201 

釜山に降りた時の、季節はどうでしたか？ 
たぶん春になっていた。釜山に1年ほどいた後、故郷にいる兄弟や両親のこと
考えて故郷に帰ろうとしたら、38度線ができていた。北には入れず、戻ること

もできない。それでも母を探そうと、北側に入ろうとした。考えもせずに、38

度線を越えた。○○(解放後、ハルモニの家族が居住していた所)に、弟と母が
いた。村の辺境に○○があって、父もそこで亡くなっていた。私は熱帯地方か

ら連絡していた。

海南島から手紙を出したのですか？ 
ああ、故郷から手紙貰って、住所は知っていたから。手紙を出したら一ヶ月ぶ

りに、「父が亡くなった」と返事が来た。でも海南島からは、お金を一銭も持っ

て行けない。手ぶらで日本人に連れられて、日本に行った。

連絡はその一度だけですか？ 
連絡する時間もなかったが、暇な時に「一度連絡してみるべき」という気がし
て、連絡したら手紙が来た。

故郷では、少しは良い暮しをしていたのですか？ 
アイゴー、口では言えないほど、苦労していた。母は豆削る工場に通い、妹は

ミシンの仕事をして。部屋なんて鼻の穴ほど。這って忍びこむ、狭い小屋。

故郷に来られて、どう過ごされましたか？ 
故郷だからと戻って来たのに、来てみたら親戚が、慰安婦に行ったことを知っ
ているから、私を人間扱いしてくれない。それで何とかして、韓国に出ようとし
た。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

202 

親戚に知られてしまったのですか？ 
知られてしまった。いなかった数年間で、知られたようだ。

どんな噂が立ったのですか？

「脚のない馬が千里を行く」と言うじゃない。皆が「娘はどこに嫁入りしたの

か？」と、何度聞かれても答えられないから。

美人なのに、嫁に行かなかったのですか？ 
男に飽き飽きして、嫁に行きたいと思わなかった。余りにも男たちに苦しめら
れたので、男はもう嫌だった。男と暮らしたいと思わなかった。そのうち50代
になって、子どももいないから、どこか行って働いて、子どもの面倒見てあげ
て、ニンニク剥いたり、あらゆる仕事、みんなした。

帰国した後に、健康は大丈夫でしたか？ 
解放になって出て来て、家にいたある日、お腹を触るとこぶがあって、何か変
だった。「お母さん、変なこぶがある。押すとびりっとする。ただ押しても何と

もなくて、一つも痛くない。でも触るたびに少しずつ大きくなっているみたい」
と。それで病院に行ったら、「卵巣に、こぶができている。そのまま置いてお
くと、腹が膨れて死ぬ」と言う。それで手術した。私が思うのは、「あの時漢口
で、ここに氷のお灸をして、真っ黒い死んだ血が出た。そんな出血して一年過
ぎても、常に腹が痛くて、火が出るようだった。そこをつかむと、他人の肉のよ
うで。子宮がへこんだ」こと。そこにしこりがあるのは、あの時のお灸のせいで
はないかという気がする。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

203 

面談日 :  2005年 7月 12日
面談者 : 姜ヒヨン、朴勝美

録音文入力・編集 : 尹智炫
録音文校正・校閲 : 李宣姈・尹智炫

G○○  19234年生れ

1942年頃、

ソウルで動員される。 ソウルから釜山に移動
釜山で船に乗り、シンガポール経由でパレンバン(現インドネシ
ア、スマトラ島)に移動
パレンバンで3年間、日本軍慰安婦生活。

1945年頃、

パレンバンで解放を迎える。解放後、残った朝鮮人とシンガポー
ルに移動

1946年頃、

シンガポールから釜山に帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

205 

「良い所に就職させてあげる」と、

ただそれでついて行った。

ハルモニが行った所はパレンバンですか？ 
あそこはインドネシアだよ。シンガポールからあの島に行った。

そこへどうやって行くことになったのですか？

G○○  19234年生れ

1942年頃、 ソウルで動員される。 ソウルから釜山に移動

釜山で船に乗り、シンガポール経由でパレンバン(現インドネシ
ア、スマトラ島)に移動
パレンバンで3年間、日本軍慰安婦生活。

1945年頃、 パレンバンで解放を迎える。解放後、残った朝鮮人とシンガポー

ルに移動

1946年頃、 シンガポールから釜山に帰国

第 8 話

就職して、工場に行くものと思っていた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

206 

その頃、私は大田(テジョン)で暮していた。ソウルへ就職しに上がって来たら、
ソウル駅であるハルモニに会った。私がどこへ行けばよいのか、キョロキョロ

していたら、そのハルモニが「何を探しているのか」と聞いた。それでこちら

から「なぜ聞くのか?」と尋ねたらと、「いや、キョロキョロ見回しているから、

自分が紹介してあげようか」と言う、教えてあげると。それで「就職しに来た」
と話すと、私を鍾路(チョンノ)3街にある旅館に連れて行った。今でも団成社
(劇場の名)があるでしょう？ 団成社の後の旅館に、女たちが十人程いて安心し
た。その「女たちに一緒に就職をするから」と安心して、二、三日そこにいた。
ところが次は私たちを連れて汽車に乗り、船でシンガポールに行くと言う。シ
ンガポールで一晩寝たか寝なかったか思い出さないが、スマトラという島に行
った。他から来た人と合流して、およそ20人を超えた。「一緒に行く」と言わ

れて安心した。私は船が初めてで船酔いしたが、スマトラまで行った。

ソウルには一人で行ったのですか？ 
一人でソウル駅まで。もともとソウルに暮していて、田舎に避難していた。大
東亜戦争の時、日本語で言うと「疎開」。父が継母に田舎で家を買って、そち
らに避難させられた。でもとても田舎過ぎて、野良仕事するところだから、つ
まらなくなって。田舎からソウルへ戻って就職しようと、一人でソウル駅まで
来た。ソウルに (国民)学校の友だちもいて、友だちに会って就職でもしようと
来た。ところがソウル駅で、その女に会って。

国民学校に通って、日本語もできたようですね？ 

日本人と一緒にいて、日本語は上手で、日本の字も書きます。

家は裕福な方だったようですね？ 
はい。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

207 

その頃、18歳なら嫁に行く齢なのに、ハルモニがお嫁に行く話はなかったの
ですか？ 
姉たちは早く嫁に行って、その当時私がそのまま田舎にいたら、逆に嫁入りして
良かったかも知れない。「挺身隊」に行かないように、とにかく未婚の男性や寡
夫、誰でも良いからそのまま、嫁がせた。下の妹も叔母が嫁がせた。ソウルに就
職するために来たら、そんなことが起きてしまった。

当時、「挺身隊」と言ったのですか？ 
ああ、「挺身隊」。家に日本人が来て、嫁に行かずに齢の子は皆、選んで行っ
たじゃない。

「処女供出」という言葉も聞いたことありますか？ 

はい、それが「挺身隊」。処女供出もそのまま引っ張って行って、ただ働かせる、
そう思っていた。

処女供出と言いながら「挺身隊」と言って、「挺身隊」は軍人を相手に…。 
それは誰も想像しなかった。

ただ「挺身隊」と言えば？

「挺身隊」とは、嫁に行かない人が齢になると連れて行かれる、出かけて行っ

て働くと思っていた。

処女供出も、そうやって働くと思っていたのですか？ 
その当時の供出はそういう話もあった。慰安婦に行くという話もあったし、た
だ働く所に連れて行かれることもあると。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

208 

当時、慰安婦に連れて行かれるかも知れない、慰安婦という言葉もありまし
たか？ 
あった。

「挺身隊」とは労働することで、慰安婦という言葉もあり、慰安婦は軍人を

相手すると知られていたのですか？ 
その時はまだ、本当に娘の頃だったから、そういうことは考えなかった。だから
私の家では、そんな呼び出しが来ないように、早く嫁がせようとした。嫁に行
けば、夫がいれば連れて行かれなかったから。

当時、慰安婦という言葉を聞いたことがあるのですね？ 
はい、ある。私が娘の頃もあった。でも自分が連れて行かれるとは、思いもし
なかった。

「挺身隊」という言葉が、必ずしも慰安婦を意味するのではなかったのでし

ょう？ 
ええ、違う。だからそう悪い方には考えなかった。

引率はどんな人がしましたか？ 
引率した人のことは分からない。男だった、男二人。旅館に来た男は、少し年
取っていて、40過ぎ位。旅館では男二人が監視して、女は10人以上いた。二人
で引率して、シンガポールに連れて行かれた。船には、女が多くいた。途中、
シンガポールで分かれて降りた人もいて、再び乗ったのは20人を超えた。

船はどんな船？ 
分からない。その時、私は船酔いした。到着まで長くかかった。二ヶ月以上そ

日本軍「慰安婦」 口述記録集

209 

の船に乗っていた。シンガポールでは、許可証が降りるまで船中にいた。やっ

と上陸すると、ある家に入り、旅館なのかよく思い出さない。とにかく女たちを

連れてシンガポールから、「スマトラという所に船で行く」と、そこを出た。ス
マトラという島、小さい島。〔スマトラ島の面積は日本の本州島の二倍以上〕

ハルモニはスマトラに行くことを、知らなかったのですか？ 
知らなかった。船酔いで昼夜吐いて、大変だった。

行かれる時、戸籍謄本とか、取った覚えはないですか？ 
そんなのない。「何か取って来い」なんて言われたら、疑問に思ってついて行
かなかっただろう。でもそんな言葉も何もなかった。「良い所に就職させてあ
げる」と、ただそれだけで、ついて行った。

ハルモニの住所を聞かれたりしなかったですか？ 

ない。団成社の後の旅館にいた時、「現住所はどこで、○○に親がいる」と話した。
その当時、変には変だった。女が就職するのに、10人も行くのかと思った。全員ど

うやって就職させるのか。でもただ、工場に連れて行く、とだけ考えた。

女に何か悪い病気があるかと、
一ヵ月に一度ずつ検診する

スマトラに初めて着いた時、どうでしたか？ 
女たち、皆25人で、ある二階建ての家に入った。一日、二日寝たら、女たちがず

らりといる所に、主人が何か紙切れを持って上って来た。その票は、軍人たちが

聞こえてる？ 12人の少女の物語

210 

事務室で買って、上がって来て女を選ぶもの。スマトラに着いて、「軍人を受け
入れろ」と言われた時、何人も女たちが泣いた。二人の主人のうち、どちらか分
からないが喧嘩して飛びかかった女もいた。二年はいなかったが一年半位いて、
鳥肌が立つほど嫌で「妊娠した」と嘘をついた。それで、票を受け取る事務をし
た。

就職しに行ったらスマトラでとんでもない目に合って、逃げようと思いませ
んでしたか？ 
逃げられない。もし車に乗って逃げても、船の切符を買わなければならないの
に、どうやって逃げる。誰も逃げることはできない。そこから逃げることは思い

もつかない。逃げても島だから、行くところがない。

ハルモニがいた町の名前思い出しますか？ 
いや、分からない。スマトラに到着してしばらく、汽車でなく車に乗ってある家
で降ろされた。町の名前は分からない。港の名前がスマトラ。ああ、分からな
い。その時、そうした、ああした、みな嫌なことばかり。関心があるのは、どう

したら早く韓国に帰れるのかということだけ。

ハルモニがいた家は、どんな家でしたか？ 
ただ木で建てた家。もともとそこらにある下と上、二階建ての家。ところが部
屋が、下にも上にも多い。20人位一軒に一緒にいる、大きい家。

周囲にも同じような家がありましたか？ 
他に家はなかったようだ。後は知らないが、初めは私たちだけだった。後に別
の日本の女を連れて来て、ずっとその家にいた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

211 

ハルモニがいた家は街の中ですか？ 
いいや。街から少し離れた所。

他の朝鮮の女とは朝鮮語で話すのですか？ 
そう、朝鮮語。

一緒にいた女たちと話をする時間が、少しはありますか？ 

ご飯食べる時とか、少しある。

ご飯は誰が作るのですか？ 
ご飯を朝鮮人が作ったのか、インドネシア人が作ったのか知らない。食堂に入っ
て、一列に並んで食べる。食堂は別にある。

その家に、何人いたのですか？ 
上下の階全部で一軒に20数人いた。

初めに一緒に行った20数人が、そのまま一緒にいたのですか？ 
はい。

後に来た人はいなかったのですか？ 
後に主人が連れてきた女は、3、4名しかいなかった。後で来た女は姉妹と、少

し口が曲った女ともう一人、4名連れて来た。

ハルモニのように国民学校を終えた人もいましたか？ 
あまりいなかった。後に主人が連れて来た姉妹が、少し学校に通ったようだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

212 

学校行った人は余りいなかった。

近くに部隊がありましたか？ 
部隊は少し、遠くに離れていた。だから色々な部隊が交代で、休暇を取って
車で来る。日本人は会社や、一般の人たちもくる。近くで事務仕事している人

も。私が、運が良かったのは、その会社に通う事務をする日本人が私を買って
くれたから。票を半月とか10日買うと、他の人を受け入れなくて済む。

それなら、その期間は。
 はい、その人だけ来る。

その人の名前や会社を思い出しますか？ 
分からない。日本人だから分からない。

軍人が来る日が、別にあるのですか？ 
そうではない。休暇を取った人だけ、出てくる。交代で、休暇を二日取った人

もいて、一日取った人もいる。 昼間取る人も、夜取る人もいて、みな違う。平
日は休暇を取った人だけ来るが、週末にたくさん来る。休暇を取った人はしば
しば長い夜を過ごす。

長く留まる人もいますか？ 
そう、多い。将校のような人もくる。

将校だけ長く留まるのですか？ 
いや。将校だけではなく、自分が選んだ女と一緒に過ごす。さっき話しただろ

う。票をたくさん切ってくれると、別の人は一切受け入れずその男だけ取る。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

213 

居間のような所に写真を貼ったりするのですか？ 
いや、それはない。本人が直接、朝を食べて服を着替えたら、廊下に座る。

廊下に座るのですか？ 
座っていると男たちが来て、自分の好きな女を選ぶ。

ハルモニがいた家で、病気にかからないようにと何かしましたか？ 
女たちは一月に一度調査する。病気にかかると休ませるが、病気で休む女はい
なかった。女に何か病気があるか、悪い病気があるかと、日本の医者が来て検
診する。ところが私は事務室で票受付けして男を受け入れていなかったから、
二年近く検診から抜けた。その時までは皆と一緒に検査しなくてはならなかっ
た。

ハルモニたちがいる所に来て検診するのですか？ 
そう、来て検診する。

病院の医者ですか？

はい、病院の医者。軍服着ていたから、軍人でしょう。

なぜ軍人と判るのですか？ 
軍服を着ていたから。階級章がある。

調査後に、注射しますか？ 
する。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

214 

ハルモニも注射しましたか？ 
はい、した。

何の注射か、聞いたことありますか？ 
それは知らない。何の注射なのかも知らず、ただ健康のため、病気にならない

ようにと、考えた。

注射される時、何か特徴がありましたか？ 
いいや。

一緒にいた人の中に、妊娠をした人いましたか？ 
いなかった。当時、そのまま入れることはない。「サック」をかぶせる。

>>> 

慰安所から性病検診を終えて出て来た軍医と看護婦。 

東北アジア歴史財団、『日本軍「慰安婦」とナチスドイツ収容所の強制性労働』、
2007年、25頁収録の写真.

日本軍「慰安婦」 口述記録集

215 

それは主人がくれるのですか？ 軍人が持って来ますか？ 
軍人が持って来る。

主人がくれることはありませんか？ 
なければ、事務室で票切る時、自分でお金出して買う。それは必ずないと、い
けない。女が受け入れない。だから妊娠は余りしない。

使わない軍人はいなかったですか？ 

ええ、そんな人もたまにいる。胸倉つかんで喧嘩するのも見た。

ハルモニはそんな経験はなかったですか？ 
甘えないと。よく甘えると聞いてくれる。それでも強力に拒否したり、その人の
心を何か傷つけると、喧嘩になる。扉をバシャンと開けて出て行って、胸倉つ
かんで殴り合う、そんなこともあった。

そこに連れて行った費用と服を買ってくれた分、
皆返すまでお金を貰えない。

朝鮮の女は、ハルモニがおられた所にしかいませんでしたか？ 
ええ、そこだけ。シンガポールでは、生活しなかったから分からない。でもそこ
には朝鮮の女が少しいたようだ。

スマトラで、軍属や捕虜監視員に来た朝鮮の男を見たことありますか？ 
朝鮮人の男は見なかった。日本の兵隊、憲兵と軍人しか見なかった。朝鮮人は

聞こえてる？ 12人の少女の物語

216 

いない。

ご飯はよく召し上がりましたか？ 
ええ、三食きちんと。おかずが何だったかは、忘れた。でも、ご飯は食べさせ
てくれた。食堂があって、ご飯を大きな釜で炊いたから、お腹は飢えなかっ
た。代わりに、時間はきちんと守らされた。時間を破ると一食抜かされる。

ハルモニがおられた近所は、日本人がいた所ですか？ 
現地人、インドネシア人。

ハルモニを連れて行った男たち、二人とも両方が主人なのですか？ 
一人の男は朝鮮に戻ってから、妻を連れて来た。

主人に家族がいたのですか？ 
いや、いなかったようだ。一人の男だけ朝鮮に行って、妻を連れて来たことは
分かる。妻を連れてくる時に、女を何人か連れて来た。姉妹で連れてこられた
女がいた。ところが解放後、その二人の姉妹は日本に行く船に並んだ、日本に
行ったみたい。

一緒にいた主人の名前、憶えていませんか？ 二人とも朝鮮人ですか？ 
名前は分からない。二人とも朝鮮人で、一人は仁川に家があると話していた。

どこの出身なのか分かりますか？ 
ふたりとも、ソウルの方言を使っていたようだ。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

217 

主人のことを何と呼びましたか？ 
ただ「おじさん」と、そのまま主人の「おじさん」。李氏か朴氏か金氏か、なか
なか思い出せない。でも痩せた方の人は、李氏のようだ。痩せた主人と太った
主人と二人いたから。

外出はできましたか？ 

自由にできた。

街を見物したことありますか？ 
主に私は自転車に乗って散歩した。自転車を覚えて、あちこち2kmは乗り廻した。

自転車で通うと、周辺に何が見えますか？ 

何もない。そのままずっと、村もなく木があるだけ。ポプラのような木が、ずっ

とある。最後の端まで4kmか8kmずっとあるが、家はない。

原っぱですか？ 
ええ、原野で道端にずっと植えてある。そこには自動車はなかった。そこの住
民で金持ちでも、自家用車を見たことはない。

ハルモニ一人で、自転車で通ったのですか？ 
そうだよ。一人で通った。「ハナコ」という子と練習して、二人で通ったりし
た。主に昼間は、自転車に乗って出かけた。

家は若干、街から離れているといったでしょう？ 街には行きませんでしたか？ 
街には行かなかった。服は、主人に「服が欲しい」と言うと、主人がインドネシ

聞こえてる？ 12人の少女の物語

218 

アの人を呼んで計る。私たちが出かけて合わせることはない。

服は日本式でしたか？ 
いや、洋服。ワンピース、ツーピース。

そういう服を作って着たのですか？ 
ええ。その人たちに作らせる。女たちは、初めは服二着だけで、数年も着られ
ない。主人に「服を合わせて欲しい」と言うと、主人がそこで仮払いするよう
になっていた。

スマトラから家に手紙を送ったことはありませんか？ 
手紙はできない。何を書いて送るか分からないから、手紙は一切、駄目。

一月に一度、月給のような物貰いましたか？ 
貰った。その票を集めて、朝鮮から来た時の船賃、旅費、到着してから服を二
着ずつ合わせた費用、貰った票の中からそれらをみな差し引かれる。

お金を主人と何対何で分けたりしましたか？ 
そうだよ。何対何とか。よく憶えていないが、何対何というのがあった。

票を上げると一枚いくら、そんなことがあったんですか？ 

そう。票をお金に替える時、例えばそこに連れて行った費用と服を作った費用、み
な返すまで、私たちはお金を受け取れない。主人が仮払いしたお金も、また借金
になる。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

219 

スマトラで貯金できなかったのですか？ 
ない。貯金をどうやってするの？ 先ず一年間は、連れて行った交通費、船賃、
あつらえた服代、みな差し引けばお金はもうない。貯められない。

スマトラで特に病気にかかったことないですか？ 
ええ、でも盲腸を手術した。19歳の時、行って少しして手術をした。

近所の病院で盲腸の手術をしたのですか？ 

はい。車に乗せられ日本の病院で。

入院したのですか？ 
はい。3日入院して、経過が良くて4日で退院した。

スマトラで日本の女を見ましたか？ 

日本の軍人が「あれは日本の女だ」と言っていた。朝鮮の女を無視したと、随

分喧嘩した。

朝鮮人と日本人が、ですか？ 
ええ、日本の女と。例えば劇場が一つあって、見物する。劇場ではインドネシ
アの映画しか上映しない。一つを一年中する。昼間に家にいても退屈なので、

自転車に乗って散歩を兼ねて、劇場に良く行った。劇場の席で、「私たちも日

本人だから、そこに座る」と言うと、ああだ、こうだと喧嘩するのを見た。

何語で喧嘩するのですか？ 

自分の国の言葉でする。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

220 

朝鮮人は朝鮮語で喧嘩する？ 
そう。自分の国の言葉で喧嘩する。

ハルモニではなく、他の人が喧嘩するのを見たという話ですか？ 
ええ。私は他の20人とみな親しかった。私が、事務をやって票を売るのだか

ら、私に喧嘩を売る子はいない。事務をしていて解放になったので、シンガポ

ールに移った。そこで何日か朝鮮に行く船を待った。半月か20日間か、団体で
生活した。

そこで親しかった友だちはいなかったですか？ 
そこでは親しくなかったが、顔が本当に美しい子がいた。名前は分からない。
ただ「ハナコ」とだけ呼んだ。そこでは皆、創氏したので日本語で呼んだ。で
も「韓国に戻っても行くところがない。家族が誰もいない。」と言うので、釜山
で降りてから私の家に連れて来て、何日か泊めた。

「ハナコ」は、どこの出身ですか？ 

ソウル方言だったよ。

ハルモニは何と呼ばれていましたか？ 
私は「ヨシコ」。

「ハナコ」はどんな友だちでしたか、話をたくさんしましたか？ 

話はあまりしなかったが、その子は母親を早く亡くした。兄弟もいなくて、新し
い継母の家に行ったら、芸妓をさせられたと。暫く私の家にいた時、芸妓のこ

とを話してくれた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

221 

芸妓をしていて、どうして入って来たのですか？ 
芸妓をしていて、連れら来られたようだ。綺麗だった。解放後、行くところがな

く、私の家に連れて来て、何日か休んで出て行った。

日本に連れて行かれて、
またあの仕事をするかと思うと

恐ろしくて、私は「朝鮮に帰る」と言った。

スマトラに2年余りいて、帰ったのですか？ 
そう。 2年間いた。

解放を知ったのはいつだったか、憶えていますか？ 
思い出せない。わざと「妊娠した」とウソをついて、事務室にいたら解放にな

った。それがいつか、よく分からない。それからシンガポールに連れて行かれ
て、朝鮮に行く船を待ち、そこにしばらくいた。

シンガポールには、誰がどうやって移したのですか？ 
主人の男二人が引率して、シンガポールまで行き、朝鮮へ行く船を待った。船
が来なくて、一ヶ月以上待ったが、その時、食糧が本当になかった。それでそ

こに食べられる木があって、花も食べられる花がある。それを拾って食べた。
そこに「ハナコ」や朝鮮人があちこちから集まった。男も多かった。演劇をす
るからと人を選んだが、「ハナコ」と私が選ばれた。その子と「アリラン」とい
う演劇をして、私はアリランを歌った。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

222 

歌が上手なようですね？ 
いや、違う。(笑い) その子がそれに合わせて、アリランの演劇をしたのを思い
出す。

シンガポールでの一ヶ月間は、どんな所で暮しましたか？ 
建物はただの箱部屋(板張りの小家)のように一の字にずらりと並んだ。そこは
軍人が寝る所で、兵舎のようだった。

そんな建物がたくさんありましたか？ 
多いかどうかは思い出さない。私たちの側にずらりと一列あり、向い側にもあ
る。船に乗るまで皆で、そこに寝た。テントが一つか二つか、たくさんあった。

シンガポールでいた場所を、人々は何と呼びましたか？ 
ただ、軍人たちが今の兵舎のように。木造の家がずらりと並び、そこで毛布を一
枚ずつ貰った。

誰かご飯作る人いましたか？ 
いない。金がある人は、内緒で、裏に来るインドネシア人と取引きする。金が
なければ服等と交換して食べる。

食糧の配給はなかったのですか？ 
配給が少ししかなくて、腹が空く。金や服も余りない子たちは、とても飢えた。

そこにいた時、演劇以外で思い出すことありますか？ 
演劇したことと、服と食べものを交換したことを思い出す。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

223 

何と換えて食べたのですか？ 
食べられる花、木の背があまり高くて上がれないから、揺すって落とす。その

白い花を皆急いで拾う。長くいると呼ばれるから。

朝起きると起床点呼をしますか？ 

しない。点呼はしないが、主人が遠出させなかった。主人が引率して連れて来

たのだから、また引率して朝鮮に帰す責任があると。

自由に放任して置いた方ですか？ 
ええ、ただどこにも遠くへは行けない。

>>> 

捕虜収容所の韓国人慰安婦。

東北アジア歴史財団、『日本軍「慰安婦」とナチスドイツ収容所の強制性労働』、
2007年、94頁収録の写真。解放後、連合軍が占領した地域に残された慰安婦たちで
連合軍の収容施設に収容されたものもいた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

224 

何か仕事しましたか。

しない。ただ一日中、そこにいた。

同じ部屋に何人の女が一緒にいたのですか？建物は大きいですか？
 大きいよ。軍人の兵舎みたいに、上に箱部屋がずらりと並んでいる。ずっとそ

こで寝ていた。

軍人の兵舎のように、中に廊下があって、両側にずらりと部屋があったので
すか？ 
そう。そこで朝起きて、顔洗ってご飯食べる。少し出ては、花を拾う。インドネ
シア人が何か売りに来たら、こっそり裏に出て買う。

シンガポールの収容所に小さい子どもが一緒にいたのを思い出しませんか？ 
いない。子どもはいなかった。

外でも子どもたちを見ませんでしたか？ 
ああ。子どもを見たことはない。

周辺は塀で囲われていましたか？ 
その中にいただけだから、よく分からない。トイレ行って、顔洗って。

同じ兵舎に何人いましたか？ 
私たちと行った人たちは皆、片側の部屋にずらりと横になって寝た。そこで顔
洗ってトイレ行って、広場に出て花拾う以外、どこにも行かなかった。兵舎か

ら出ると庭に大きい白い花の木があって、その花を拾って食べた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

225 

男と女が、一緒にいなかったのですか。
いなかった。 女は女同士で寝た。船に乗る時だけ、集まった。

兵舎のようなところには、他からもたくさん来ていましたか？ 
よく分からないが、朝鮮や日本の慰安婦もいた。シンガポールから船がもう出
ると連絡がくると、主人が皆を引率した。

そこで日本へ行く人と朝鮮へ行く人に分けられたのですか？ 
朝鮮に行く人と日本へ行く人に分けられた。日本を望む人は日本に連れていく
が、日本でまた同じ仕事をさせられるかと思うと、恐ろしく日本には行かなか
った。主人が妻を連れてくる時に、姉妹で連れてきた女たちは日本に行く側に
並んだ。日本に行ったようだ。

そこに一緒にいた女たちも皆、分けられたのですか？ 
船に乗る時、二つに分けられた。

ハルモニ、船に乗る時、名前や住所を書きませんでしたか？ 
なかった。

ただ並んでいて、「乗れ」と言われて乗ったのですか？ 
そう。

シンガポールで分かれたのではなく？ 
違うかな。そこはよく憶えてない。シンガポールで分かれたのか、とにかく分
かれたのは確実だが、そこはよく思い出せない。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

226 

季節はどうでしたか？
季節？シンガポールは四季が夏。その時も夏。だから長袖は着なかった、家に
帰る時も。

船に乗った人はみな、釜山に一緒に来たのですか？ 
そう、一緒に来た。

どれくらいかかったのか、記憶ありますか？ 
帰る時はシンガポールで長く待って、船に乗ってから1ヶ月ほどで着いた。

釜山港に降りたら寒くなかったですか？ 
ああ、寒くはなかった。

服代や仮払いしたお金を差し引かれたと言いましたが、解放されて出てくる
時、借金はもうなかったですか？ 
わからない。私が帳場で働いていた時、無くなったと思う。

借金をすべて返したから、いくらか貰ったということはなかったですか？ 
ない、ありません。

釜山に降りる前に押収されたそうですが、どこかに預けるという話はなかっ
たですか？ 
ない。

貰えなかったお金もありますね？ 
お金貰えなかった女も多いだろう。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

227 

日本へ行く人も初め釜山に立ち寄って、その船が日本へ行ったのですか？
たぶん、そう。一緒に乗って、釜山で分かれた。船に乗る時、シンガポールの
お金はみな押収された。

交通費は誰がくれたのですか？ 
その主人。朝鮮に行く人と、日本に行く人に主人が分けた。船は一緒に乗って

も、釜山で日本へ行く女は船に留まった。釜山で、大田行の汽車の切符をくれ
た。

釜山で降りた時、お金少しはありましたか？ 
釜山で降りる時、みな押収されて、家へ行く切符だけくれた。みなそれぞれ別
れて、自分の故郷へ帰る人は帰って、日本へ行く人は主人と一緒に行った。

主人は降りなかったのですか？ 
いや、よくわからない。私は家に帰る喜びで、そのことを考える余裕がなかっ
た。降りたような気がする。 

主人がその釜山で交通費だけくれて、自分は日本へ行く側に乗ったのです
か？ 
私はそのまま家に帰ることだけ考えて汽車にすぐに乗ったから、後のことは分
からない。これがわたしの物語。

帰ったら家にご両親はおられましたか？ 
はい、みないた。私がどこで死んだのか、拉致されたのか、母はまったく知ら
なかった。昔はどこか、調べるところもなく、警察署や派出所に行っても分か

らない。生きて帰って来ることを願っていたそうだ。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

228 

するとご両親は真相を知らないのですか？ 
知らない。

帰って来て、どこで何をしていたと話したのですか？ 
工場へ行ったと。

どこの工場に行ったと言ったのですか？ 
そんなに詳しく聞かれなかった。そのまま詳しく聞かなかった「工場」に行っ
たと思っていたのでは。

「ハナコ」がハルモニの家まで一緒に来たのですね？ 

初めは行くところがなくて、家で連れてきた。わが家に何日かいて、母が交通
費をあげて送ったが、その後の消息は知らない。

連絡しても、状況が悪ければつらいかもしれません。
そう。それもある。初めの頃、寂しかったが、少し経ったら考えなくなった。

「ハナコ」以外に、一緒に来た人はいなかったですか？ 

ええ、いない。釜山でみな別れた。

面談日 : 2006年 2月 20日 / 2006年 4月 20日
面談者 : 姜貞淑、尹明淑

録音文入力 : 禹栄頌
録音文編集 : 金明煥
録音文校正・校閲 : 李宣姈・尹智炫

H○○  1925年生れ

1942年頃、

慶尚南道から動員される。 釜山で船に乗って日本に移動
長崎県で2年間、日本軍の慰安婦生活

1944年頃、

満州に移動して1年間、日本軍慰安婦生活

1945年10月頃、 麗水に帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

231 

女を何人も捕まえて来たようだ。
あいつら、刃物で刺し殺しても、恨みは解けない

ハルモニの家族は何人ですか？ 
6人兄弟で私は５番目。長女、兄三人、妹の6人だが、今は皆死んでしまった。

ハルモニは工場に通う前、学校に通っていましたか？ 
学校に通った後、工場で働いた。3年生で日本語を習った。私は4年まで通った
が、学校を辞めてしまった。

H○○  1925年生れ

1942年頃、

慶尚南道から動員される。 釜山で船に乗って日本に移動
長崎県で2年間、日本軍の慰安婦生活

1944年頃、

満州に移動して1年間、日本軍慰安婦生活

1945年10月頃、 麗水に帰国

第 9 話

こんな話、誰にもせずに死のうと思った。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

232 

学校はなぜ辞めたのですか？ 
その頃は、無条件で捕まるから道も歩けなかった。最後まで捕まりたくなく
て、紡績工場に入った。

紡績工場にどうやって入ったのですか？
仕事を探していたら、バスの車掌が工場を紹介してくれた。その時、齢が15歳
位だった。満州に行ったのは16か17歳。

紡績工場で給料は貰えましたか？ 
その頃のお金で、いくら貰ったのか、よく分からない。給料はたくさんくれなか

ったが、妹にスリッパや下駄を買ってあげた。そこにいた時は、妹の好きなも
のも買って来た。

工場の名前、憶えていませんか？ 
毛布を編む工場というのは分かるが、名前は分からない。日本人の経営だっ
た。姉さんくらいの人が監督して、寄宿舎に女がたくさんいた。その原っぱに
は、その工場しかない。

工場に作業服がありましたか？ 
韓国服を着て行ったが、中でガウンや運動靴をくれた。手で機を使って織る。

作業監督はいましたか？ 
小さな女の監督が1号、2号室の責任者で、機械が故障すると直す。日本人だ
が、朝鮮語も話した。私たちが、日本語がよくできないので、「こうして直す」

と教えてくれる。糸屑も落として、「お疲れさん」と言ってくれた。晩ご飯を食

日本軍「慰安婦」 口述記録集

233 

べると、夜学のような勉強時間があった。時間があると座談もした。

職員が皆、夜学に通うのですか？ 
皆かどうかよく分からないが、教室があった。日本の国歌「君が代」歌って、勉
強時間終わったら友だち同士座談会して、夜は自由。お風呂で洗ったり、髪を
洗う人もいる。歯を磨いて、寝る人は寝る。だれも親に会いたくて、泣く人もい
た。

日本になぜ、行くことになったのですか？ 

毛布を編む紡績工場に入ったのが秋だった。陽が早く沈んで7時頃、表に出たら
捕ってしまった。歩いていたら車があって、やたら「こちらに来い」と言う。私は
そのまま行こうとしたのに、趙(チョ)さんという友だちが「あなた、こちらに来て」

と呼ぶので、「どうして」と聞くと、男が一人車から飛び出して来て、3人捕って
しまった。

どんな車でした？ 

トラック。荷台にテント張ってある。3人とも疲れて出て来たのに、捕って乗せ

られた。私が「上がらない」と言っても、「上がれ」とやたらに足で蹴って乗せ
られた。

ハルモニと一緒に捕った二人の名前は思い出しますか？ 
女の子？ 日本語で「ゆみ子」と呼んだ。姓も名前も知らない。

工場にいた残りの人は捕まらなかったのですか？ 
よく分らない。トラックに何人か乗っていて、話をしたら「喋るな」と怒鳴られ
た。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

234 

トラックに他の人もいたのですか？ 

乗ったら朝鮮人もいて、年取ったおばさんもいた。「家に帰る」と声を出すと、

「馬鹿やろう」と背中を殴る。後に腕章をつけた日本の軍人がいた。

ハルモニを捕えた人は警察ですか? 軍人ですか？ 
軍人だよ。軍人と警察は黒い服を着ているが、赤いのを着ていた。警察か軍人
かは、夜だからよく見えなかった。

「降ろして」と泣き叫ばなかったのですか？

 やたら殴られて、みな鼻血を流した。目茶苦茶に殴って、足で蹴る。

車の中で食べ物、貰えましたか？ 
何も食べられなかった。ここは釜山かと考えたが、おばさんたちとは口も利か
せない。

工場からトラックで釜山へ行く途中で、他の女も乗せましたか？ 
私が乗る前、既に乗せおえていたようだ。釜山に行く時は大きい道を通り、途
中では捕まえなかった。前から乗っていたおばさんたち、後ろにはもう乗れな
かったみたい。

トラックには女たちが何人乗っていましたか？ 

15人いた。おばさんもいて、私より幼い子もいた。軍人二人と、民間人に見え
る朝鮮の男が1人と運転手がいた。本社で「女を何人捕まえて来い」と命令さ

れたようで、朝鮮ではみな捕まえられた。脇目も振らず、みな捕まえて行った
時だ。捕まったおばさんは、子どもに会いたくて泣いていた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

235 

釜山から船に乗る時、何か手続しましたか？ 
チケット出すとか、そんなのなく、「前から乗れ」と言うので、そのまま乗っ
た。トラックでは名前を聞かれたが、船では何も聞かれなかった。

「日本へ行く」と話してくれましたか？ 

いいえ、話もせず、捕まったことだけは分かった。朝の何時か分からないが、

日本語で「埠頭」と言うのだが、乞食のように扱われた。私たちはそこで、「日

本に行くらしい」と知った。

釜山に行って、すぐ日本に行く船に乗ったのですか？ 
直ぐに行った。夜に出た。連絡がついていたようで、人が多く乗っていた。他
から連れて来られた人も、私たちを乗せた人もいた。

ハルモニが乗られたトラックと別に、他のトラックに乗って来た人もいたの
ですか？ 
ええ、私たちと同じ歳や年上の人。働いていて捕まって来た人も多かった。男

もいた。

日本に行く船で食べものくれましたか？ 

乾パンみたいの、二人に一袋くれた。日本の子たちが食べるの。水筒の水飲ん
で、死にたくないから、食べる。

船の中で殴られなかったですか？ 
船内では殴られなかった。私たちは「もう死んだもの」と諦めていた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

236 

日本まで何日かかかりましたか？ 
まる一日。夜乗って、朝降りた。大きい日本の連絡船に乗せられた。お母さん
に言葉一言いえず、捕まって夜通し、日本へ渡る。本当によく泣いた。(涙声で)

日本のどこへ行かれましたか？ 

朝、鶏が鳴いて、どこかで「中山」とか「中島」とか、「着いた」と日本人の声
がした。再び車に乗せられ、大きいテントのある家に連れて行かれた。

そこは何をする所でした？ 
工場と言われたが、入ったら工場ではなく、片方で機を織っていた。私は機を織

る技術者だったが、「名前が何か」と聞かれたので、○○と答えると、「こっち
に来い」と言われた。私と三人で行くと、「機を織れる」かと聞く。それで「でき

>>> 

『責任者を処罰せよ』、日本軍慰安婦

被害者姜徳景の作品、ナヌムの家/

日本軍'慰安婦'歴史館資料提供

日本軍「慰安婦」 口述記録集

237 

る」と言って、機を織った。それだけで済めば、本当に助かるのだが、自分の身
がどうなるか心配だった。

女は何人いましたか？ 
私と一緒に行った人だけで、15人くらいになった。その話だけで心臓が震える。そ

こにご飯をくれる所があって、体洗って、足も洗い、みな洗う。行く時は手ぶらだっ

たから、くれた服を着た。その時は、命があって生きて帰れた、生きて来ただけで

奇跡のようだった。いっそ来なければ良かったが、私たちが圧迫と苦痛を味わった

ことを思うと、あいつらを刃物で刺し殺しても、恨みが解けない。

「横になれ」と言われたら横になり、
「座れ」と言われたら座る。

そうしなければすぐ、命が奪われる、殺される。

日本に行ってどんな仕事しましたか？

 働いた。あちこち掃除して、服作る所で一緒に働いた。洗濯もして、何でもす

る。モンペを穿いて、タスキで縛って、ハチマキする。水を貰って足で踏んで
洗濯する人、取り入れる人、畳む人、アイロンかける人、日本人の履く脚絆を

巻く人、色々いた。
そして人を選んで、数ヶ月後にトラックに乗せられた。15人か16人程で行った

ら、部隊で「軍人の接待をしろ」と言う。

女と軍人が踊る所ですか？ 
いいえ、違う。踊ったり、酒飲む所ではなく、「軍人の接待をしろ」と言われ

聞こえてる？ 12人の少女の物語

238 

た。女たちが泣き喚いて大騒ぎだった。いくら泣き叫んでも、外には声が届か
ない。

昼間働かされて、夜は軍人を相手にするのですか？ 
軍人たち昼間は出歩かないでしょう。昼は戦争している頃で、来る日がある。
水曜なら水曜、火曜なら火曜と、責任者が連れて来る日にちが決まっていた。

近くに部隊が多いのですか？ 
車に乗って行くと、部隊が多い。歩いて行くには遠かった。ホロを張った軍の

トラックが行き来した。軍人が運転して通訳が乗り、「降りろ」と言われた。

軍人を受け入れる曜日に乗って行くトラックは一台でしたか？ 
一台だけで20人にはなる。

20人なら、誰でも連れて行くのですか？ 
選んで送る。年が行った30代や高齢の人は送らず、若い子だけ選ぶ。

部隊に行くと、どれくらいいて帰って来るのですか? 部隊に女がいる所があ
るのですか？ 
部隊の中には入らない。部隊の隣りに家がある。そこでご飯も食べて、そうい

う場所がある。寝て帰る時もよくあった。

工場から軍人がいる所へ、曜日別に行くのですか？ 
軍人が多くて、話をよく聞けば、命がもつが、寄宿舎で泣き喚くと、「なぜ泣く
か」と殴られた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

239 

なぜ殴られたのですか？ 
言うこと聞かなかったから。軍人を「受け入れろ」と言われて、逃げ出したから
足で蹴る。頬を殴って、ここ触ってみな。(頭を指して)今でもここにアザがあって
治らない。脚や関節が痛いのは、足でやたら蹴って腕も刃で刺されたから。

日本の軍人を初めて相手にした所は日本でしたか？ 
うん、私は処女だったから。それで逃げて、たくさん殴られた。

日本へ行く前にメンスありましたか？ 
メンスはあったよ。16からあった。

メンスの日に軍人を相手にする時、どうしますか？ 
メンスの人とは接触できなくなっている。血が出るのにやれるのか。

誰に話すのですか？ 

日本人に話す。私たちを連れて行く人。「私、今メンスだ」と話す。

医者が女たちを検診しますか？ 
行って来る人を検査する。工場にいる時はきれいに洗うから、検査しない。部
隊に行く人は、検査してから送る。

軍人を初めて受け入れた時、検査してから受け入れたのですか？ 
初めて行った時、処女だったから、「あいつ、生娘だった」と皆知っている。そ

こに一度行くと、みな検査する。保健所かどこかへ、車に乗せて行く。検査し
て大丈夫な人は、印鑑バンバン押して送り出す。悪い人は病院に送った。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

240 

日本の工場で働いて、軍人の相手もさせられたのですね？ 

土曜と日曜は軍隊の接待に送られることが多い。初めは処女だったから、そん
なこと知らずに騙されて行った。初めて行って、次に軍人を相手にする時は、
検査した。なぜなら「お前たちは一度、男を相手にしたから検査する」と。

病気にかかった人は入院させるのですか？ 
病気がある人は治療を受けろと病院に送り、でない人は検査を受けて工場に戻

る。次は軍艦に乗って満州に行ったが、満州では徹底的に検査した。

ハルモニのいた所に日本の軍人が多かったですか？軍人でなく働く人もいま

したか？ 

そこには朝鮮人もたくさんいた。

ハルモニがおられた所に、軍人でない他の人も来ましたか？ 
他の一般人はいないが、軍人はたくさんいた。部隊で働く人もいて、一般人も
時間があれば、部隊に入って働いた。

工場でどれくらい働いて、軍人の相手をさせられたのですか？ 
工場で6ヶ月くらい働いて、その後あちこちで軍人を受け入れる仕事だけし
た。爆撃がひどくて服は作れない。軍人とだけ、一年はいた。

夜、軍人が入って来ると、どうするのですか？ 
体を奪われる。仕方ないだろう。後で銃を持って、部屋一つずつ与えられ押し
込まれるのに、どうする。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

241 

部屋がどんなだったか、思い出せますか？ 
部屋は全部畳が敷いてあった。各階に三畳半や五畳半の部屋があった。三畳
半の部屋はとても狭い。

部屋を一人に一つずつ与えられるのですか？ 
与えられるのでなく、水曜とか土曜とかと、私たちが行く日がある。

軍人の所に行かない日は、どこで生活しましたか？ 
生活するところは別にある。そこは完全に工場で。襟切ったり、詰めたり、ミシ
ンする人もいた。

曜日を定めておき、何日は行って軍人受けいれる？ 
水曜日なら一団が行って、そこの人を補充しないと。土曜日の午前には、また
一団が行く。帰ると、また別の一団が来る。

ハルモニが働いていた工場の女たちは全部慰安婦にされたのですか？ 

こっちに行けと言われたらこっち行って、あっち行けと言われたらあっちに行
く境遇だから、その場に完全に縛られていた。

工場ではハルモニ4人一部屋で寝ましたか？ 何人一緒に寝ますか？ 
軍人が来ない時は、一部屋で寝られて楽だった。班長と15人、20人寝たようだっ
た。

お金は一銭も貰えなかったのですか？ 
ええ。お金は貰えなかった。服はそこで作ったのを着て、好きに買って着るこ

聞こえてる？ 12人の少女の物語

242 

とはできない。服がなくて。紙を切って作って着る人もいた。

工場に朝鮮の男はいませんでしたか？ 
いたけれど、何の仕事をしているかは、男たちは車に荷物を乗せて運ぶ人たちで、
工場には監督だけ行き来する。

働く所には、女しかいなかったのですか？ 
いや、男も多くいた。日本人、中国人、朝鮮人。おばさんもいて、私たちのよう
な若い子もいた。私たちが一番幼かった。

工場では一日、何時間働きましたか？ 
朝の八時から夕方七時まで。終わると体洗って、友だちと話した。軍隊に行か
ない日は解放された日。

一緒に暮していた女の中で妊娠した人はなかったですか？ 
そんな人は保健所にすぐ入院させた。

日本の工場の名前や周辺に他の工場があったのか思い出しますか？ 

分からない。日本の工場は目茶苦茶大きくて、布織ったものを捲いて、車に乗
せて運んでいた。工場は多かったが、何の仕事をする工場か、私には分からな
い。自由に歩き廻れないし。

頭の傷はいつのですか？ 
頭は日本で殴られた。逃げて、(手で頭を示し) ここを。それで体が不自由にな

った。「逃げた」と、殴られた。死んでも良いと逃げたのに。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

243 

誰に捕ったのですか？ 
軍人に捕まった。階級は付けてないが、軍服を着ていた。

つらいでしょうが、日本軍人に初めて侵された時のこと思い出しますか？ 
出血して裂けたよ。ああ、私は幼かったから子宮が裂けて、血がダクダク流れ
出た。そんなこと、どこで誰に話す。私はそんな行為も知らなかったが、軍人
は自分だけ、その時間で「サック」の中に出したら、そのまま起きて出て行っ
た。(激昂した声で)横にもならず、終ったら、自分だけ靴履いて出て行った。私
は出血して。血が凄く出た。それでサックをトイレに捨てた。捨てる箱があっ
た。

出血しているのに、またその次の男が入って来ましたか？ 
いや、できない。「痛い」と話した。ケガしたから、治療を受けないと。

初めの日は、その一人だけだったのですね？ 
その日は一人だけだった。ところが出血して歩けない。朝鮮の女があいつらに
屈辱を受け、「入れ」と言われたら入り、「出ろ」と言われたら出る。そうしな
ければ殺される。命のためには、「横になれ」と言われたら横になり、「座れ」

と言われたら座る。何でも言われるままにするしかない。そうしなければ、す
ぐ命を奪われる。殺される。私たちには国がないから、誰にも言えない。話も

できず、「死ね」と言われたら死に、「生きろ」と言ったら生きる、「うつ伏せ
になれ」と言われたらうつ伏せになって、「立て」と言われたら立つ。日帝時
は、そうしないと生きられなかった。

ハルモニ、初めは逃げなくかったのに、なぜ後には逃げたのですか？ 
初めは子宮が裂けて、驚いて逃げた。恐ろしくて、部屋に入らないと。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

244 

子宮が裂けて出血して行った病院に、軍人もいるのですか？ 
誰でも来たら治療する、大きい病院だった。

ハルモニ一人で病院に行ったのではないでしょう？処女が出血したでしょうに。
そんなこと、私になぜ分かる。(大声で)本当に。ふぅ(長いため息)。他の人が裂
けて行ったのか、それは分からない。私が行くと医者が治療してくれて、「何

日間したら大丈夫」と言われた。半月経ったら治った。

体を捧げる所。そこに連れて行かれた

(昔の写真を見て)満州で撮ったのですか？ 
いや、これは長崎で、写真館に行って撮った。写真館に団体で行ったが、爆撃
が激しくて、撮ったらみな出て来てしまった。写真館のおじさんが朝鮮人かど

うか知らないが、私に「持っていけ」と言うので、満州に行く時、持ち出した。

写真館に、いつ行ったのですか？
昼間、時間がある時に。近いから「ヨミコ」に「写真館、一度行ってみよう」と
言われて、一緒に行った。

写真館は工場の近くにあったのですか？ 
名前は分からないが、工場からいくらも行かないで、看板があった。市場もあ
った。私のいた所が長崎で、広島も近いとか。でもみな忘れてしまって分から
ない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

245 

>>> 

日本九州の昔の慰安所の建物。 委員会が現地調査時に撮影。

ハルモニ、写真代は誰が出しましたか？ その時金がありましたか？ 
私たちが払った。払わないといけない。

満州でも写真撮りましたか？ 
満州では撮らなかった。撮る時間がない。

日本でなぜ突然、写真を撮ることになったのですか？ 

一度撮ってみた。その日が何の日だったのか、何人かで行った。そこに可愛い

「着物」がかかっていて、足袋もあった。女主人が服を着せてくれ、私と「ヨ

ミコ」、二人で一度撮ってみた。「ヨミコ」と二人の写真もあったが、なくなっ
た。化粧もせずに行ったが、唇に可愛く口紅塗ってくれた。でも折角の写真、

みななくなった。全部みな捨てた。必要なくなって。持っていても写真見ると、
腹が立ってみな捨てた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

246 

満州にはいつ移動されましたか？ 
大東亜戦争で爆撃が激しくなり、四方にドンドン落ちるから、「これでは駄目
だ」と他に移動した。

工場で働いていた人を、他の朝鮮の女たちも、みな連れて移動したのですか？
ええ、私一人でなく、機械もいくつか載せて。朝鮮の女も多かった。

ハルモニ日本から満州へは軍艦に乗って行ったのですか？ 

うん。(軍艦が)大きくて早い。

どこへ行くのか知って船に乗ったのですか？ただ「乗れ」と言われたのです
か？ 

知らなかった。どこへ行くのか、何一つも知らず。尋ねると「なぜ、尋ねる必要
がある?」と、殴られる。齢が幼くて、何も分からない。

工場にいた女をみな乗せたのですか、何人か選んだのですか？ 
何人か選んで行った。15人か20人。私は皆行くのかと思ったが、行かない人も
いたようだ。年取った人はいない。みな若い、10代の人たちだけ。

日本から満州へも、軍人が連れて行くのですか？ 
軍人。みな日本人。朝鮮人の通訳もいた。今思うと、目がぎらぎらした慶尚道の男

二人が通訳だった。

逃げる人々はいなかったですか？ 
爆撃が激しいから、その時は銃で警備していて逃げることはできなかった。私

日本軍「慰安婦」 口述記録集

247 

と金○○という女は、そこで会ってから逃げた。でも捕まって殴られた。

船内で食事どうされました？ 

ご飯はおにぎりくれた。船でどうやって飯作る？おにぎり一つ、一日に二回く

れるだけ。

殴られなかったですか？ 
ええ、殴られなかった。周囲に上官がいて、新米は口も利けない。軍人はそれ
ほど多くなく、何か灰色の服を着た人が多くて、片方に集まっていた。罪人な
のか何なのか、私には分らない。

戦争の最中で、飛行機が来たら船内でどうしますか？ 
船は夜しか動かない。爆撃が激しいから、夜は灯りも点けず、黒いカーテンで
覆って、火も使わないようにした。

軍艦に乗ってどこで降りましたか？ 
満州〔大連か?〕で降りた。日本に2年以上いたが、今度は全然違う所に送られた。

日本から満州まで、船でどれくらいかかりましたか？ 
時間など私には分からない。でもまる一日半か、二日位かかったようだ。夜通
し行った。夜、みな降りた。

満州には、違う所から来た船も多かったですか？ 
降りたら避難したのか、逃げて来た人が多かった。人が多く集まった。爆撃で
来たのか、よく分からなかった。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

248 

満州に着いて、どこに送られましたか？ 
私たち10何人、いや20人の女を悪い所(慰安所の意)に連れて行った。純粋に軍
人だけ受け入れる、体を完全に捧げる所だった。

建物の構造はどうでしたか？
大きい家だった。どこへ行っても部隊が多かった。「着物を着ろ」と言われた。

満州でも軍人の相手させられたのですか？ 
軍人が毎日入って来て、体を奪う。嫌がると刃を抜いて脅す。後では、私が逃
げないように歩哨が立っている。

軍人を相手にすると知って、逃げた人はいなかったですか？ 
多かった。たくさん殴られて、半分ぐらい殺された。捕えて殺すのは見なかっ
たが、殴られるのはたくさん見た。私も逃亡して、一緒に逃げた三人がみな埠
頭で捕った。それで責任者に殴られた。

軍人が来る時、常に「サック」を持って来ますか？ 
持って来る奴もいて、責任者がくれたりする。軍人がはめて、する。

戦争中で「サック」が不足したりしませんでしたか？ 
不足しなかった。配給等、関係なくたくさんくれた。

「サック」を使わない人もいましたか？ 

軍人は自分の身を考え、病気になるからと、使わない人はいなかった。保健所
へ一週間に一度は検査に行く。病気になるかと思って、軍人もこちらも互いに
行こうとする。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

249 

ハルモニは病気にかかったことありませんか？ 
なかった。私とは「サック」しなければ、絶対、関係持たなかった。

保健所での検査はどのようにしますか？ 
子宮の検査をするには、検査台に上る。病気になると、病院に送る。検査しな
ければ、その家にいることもできない。

慰安所の責任者は女ですか、男ですか？ 殴られませんでしたか？ 
女もいて、男もいた。人が多いから、一人ではできない。 殴ることも多い。

主人は朝鮮人でした？ 

日本人だった。でも朝鮮人が多いから、通訳は朝鮮人。通訳は軍服を着て「帳

場」で働く。

朝鮮の女は何人いましたか？ 
多かったよ。中国人もいた。

そこにいた人たちとは親しかったですか？ 

うん。「船に乗って逃げよう」とか、「私たち、いつ故郷に帰れるか」とか、ため

息をついて互いに相談した。

親しく過ごした友だちはいましたか？ 
北の人だが、死んだだろう。「ハナマル」と「ゆみ子」。

その人の朝鮮名は分かりませんか？ 
本の名前だけで呼んだから、朝鮮名は全く知らない。私たちの間では朝鮮語使

聞こえてる？ 12人の少女の物語

250 

っていたが、そこにいると自然に日本語を覚える。

自由時間はありましたか？ 

少しはあった。洗濯は自分でしなければならないし、そんな時間はあった。日
本の支配時で、化粧は余りしなかった。頭はパーマをして、ピンを挿した。

それでもパーマはしてくれたようですね？ 
パーマをする人が来た。中国人なのか、日本人なのか来てした。でもパーマは、
私たちの所より、他の所の方が上手だった。家でするのと、似たようなもの。

ハルモニのいた慰安所に、日本の女もいましたか？ 

日本の女はその慰安所でなく、違う所にいた。私たちの慰安所には日本の女が

いなくて、日本の主人だけいて、韓国人の通訳がいた。

寝て行く軍人もいますか？ 

自分の家のように気楽に来て、寝て行く人もいる。女に手を触れないで、本見
て遊んだり、主人と碁を打ったりして。女たちを煩わせるのが嫌で、保養に来
た人たち。

チップくれる人はいなかったですか？ 
軍人は日本人でも、お金はない。私はまた別に、主人の家の仕事もたくさんし
た。朝鮮から来た人が多いから、中国人の市場で大根買うと、それを私が漬け
てあげた。それで主人に可愛いがられた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

251 

自分の言う通りにしないと、

刀を胸に突きつけて、「殺す」と

満州の慰安所の看板や建物に書かれた名前等見ませんでしたか？ 
名前はあるだろう。二階建ての建物だが、部屋がとても多かった。そのまま一
の字の形に。

部屋ごとに表示がありましたか？ 
みな自分の客がいて、自分を訪ねて来ると、管理者が呼ぶ。名前や写真を書い
て貼ったりしなかった。

病院ではなく、保健所に行って検査受けたのですか？ 
保健所のようだ。白いガウン着たおばさんが、娘さんたちを見て消毒してくれ

る。性病にかかった人は慰安所に戻れず、他の病院に送られる。

ハルモニも注射打ちましたか？ 
私もたくさん打った。具合が悪いと打つ。一週間に一回は病院に行って、検査
受ける。大丈夫とハンコ貰ってから、軍人受け入れられる。軍人も受けられな
いと追い出される。日本人が自分の体だけ、どれだけ大事なのか知らない。

誰でも行ける病院ですか、ハルモニのような女だけ検査を受けるのですか？ 
男は検査する必要ない。慰安所にいる女が、軍人に病気移さないように、国で
する。個人病院でなく、国の病院。

満州で暮らして、ご飯はきちんと出してくれましたか？ 

ご飯は中国人が作り、一日に二食は必ずくれた。私が「フミコ」、「ヨシコ」、

聞こえてる？ 12人の少女の物語

252 

「ヒデコ」の三人使って、キムチも漬けた。私たち間では朝鮮語を使うが、朝

鮮名では呼ばなかった。「姓は何?」と尋ねた憶えはない。

近所に中国の遊郭もありましたか？ 
話だけ聞いたが、歩き回れないから見てない。少し出かけると酒を売る所もあ

り、日本人もいるとか。

ハルモニの所は、酒は売らず、軍人の相手だけするのですか？ 
酒や食べ物は売らない。ちかくには妓生のような、家がいくつかあった。

軍人相手の家にずっといたのですか？ 歩哨もいますか？ 
部隊の中に歩哨がいるが、一般地域に歩哨は必要ない。私たちが逃げて、捕まっ
たら殺される。

部隊の名前を憶えていますか？

「688」部隊とか呼んでいた。聞いていたがハッキリしない。何部隊とか書いて

ないから、分からない。

部隊は港から近かったですか？ 
いや、少し離れていた。そこが境界とか言っていた。部隊は平地にあって、近
いのは大連と奉天(現在の瀋陽)。大連は部隊からそう遠くないようだ。

軍人はみな黄色い服の陸軍でしたか？ 
全部、黄色服着た陸軍。帽子かぶって脚には「包帯(脚絆)」巻き、軍靴を履い
ていた。もう私の知っているは、みな話した。これ以上は知らない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

253 

満州にいた時、特に思い出すことありますか？ 
軍人が嫌で逃げた。雪がたくさん降って滑り易く、日本のスリッパ、下駄が地
面にくっついて必死に走った。捕まったら、ひどい目にあって殺される。口では
到底言えない。どうやって生き残ったのかも分からない。軍人相手に、自分の
言う通りにしないと、刃を胸に突きつけて、「殺す」と脅された。慰安婦に行っ
て、私ほど苦労した人いないだろう。

そこによく来た人とか、思い出す軍人の名前ありますか？ 
ああ! その人、思い出したら捜してくれるかい？「吉村」といったか、ケガした
腕に薬を塗って、靴の紐を解いて血を止めてくれた。それだけ思い出す。

軍人がハルモニに票をくれるのですか？ 
そんなのない。あいつらも「すみません」と言いながら入って来た。私たちが
隈で泣いていると、「大丈夫だ」と慰めたり、殺そうとする奴もいた。

日本軍は一日に何人来ましたか？ 

二人か三人。車にたくさん乗せて来た。私は体がひどく悪くて、手が腫れて病
院によく行ったが、女の主人「ヒデコサン」が随分助けてくれた。「何号室に」

と配分する責任者だが、配分しない時もある。

軍人を連れてくる時もあるますか？ 
よく思い出さない。軍人で部隊から出て、慰安所に行きたい人は、土曜日に多

く送りだす。「他に行きたい」と部隊で言うと、票を責任者にあげるようだ。

軍人を一番多く相手にした日は、何人ぐらい来ましたか？ 
やたら押し寄せて、あまりにつらくて「殺すなら殺せ、これ以上は無理だ」と叫

聞こえてる？ 12人の少女の物語

254 

んだ程だ。一晩に少なくても5、6人は来た。人がすることじゃない。

一度来ると、どれくらいの時間いるのですか？ 
時間がぴったり決まっていて、長居できない。出て行くと、また次の人が入っ
て来る。正確には分からないが、大体30分位か。長くなると責任者が来て、

「早く出ろ」と催促する。時間が来るとベルが鳴るから、好きにいられない。

来てただ休むだけの人もいて、日本人には良い人もいる。吉村はただ座ってい
て、タバコ吸って出て行った。

腕をケガした時、見てくれた人が吉村ですか？  
ええ、「故郷離れて、苦労多い」と、私が泣くと、「泣くな、いつかは良い日が
来る」と言ってくれた。お金の代りに軍で貰う毛布もくれた。来ると必ず、私を
尋ねた。

一人済むと、すぐ次の人を受け入れるのですか？ 
いや、違う。洗面場に行って洗う。消毒しないと大変なことになる。ひとり受
け入れて、直ぐに他の人は受け入れない。それは徹底している。準備できない

と、病気にかかって死ぬから次の人は絶対受けない。

満州での慰安婦生活は、他の建物に移ったのですか？ 

うん。私たち一行はおよそ10人で、新しい所にまた10人ほどいたから、全部で

20人になった。

移った家は大きかったですか？ どんな家でした？ 
2階まであった。臨時に建てた家なのか、変な家で、倉庫のように大きい。部屋

ごとに幕があって、風呂もあった。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

255 

ハルモニの部屋は別にありましたか？ 

うん。みな自分の部屋がある。でも合宿だから、がやがやと賑やかで、同じこ
と。人が多くて、部屋を一人占めできない。

管理者は何をするのですか？ 
逃げるのを監視して警備する。責任者は日本語が上手で案内する人、「帳場」

とも呼ぶ。

責任者のおばさんは、なぜ満州まで来たのですか？ 
その人も私と捕えられた人。私より位が高かった。軍人は取らないで、主人の代
行をした。齢は50位で、人柄が本当に良かった。齢の幼い私たちをつかんで、泣
いたりした。

高齢の人もいたのですか？ 
50歳の人もいた。 解放までは出て来られなかったが、年寄りの人がなぜいる
のか、よく分からない。捕えられたのか、なぜ来たのか分からない、私たちより
位が高い。私たちに、「服はこれを着ろ」、「消毒はどうして、子宮の管理はど

うしろ」と教えてくれた。

満州では他に移動しませんでしたか？ 

うん。満州では、その家にずっといた。

中には酒飲んで乱暴する人いませんでしたか？ 
そんな人もいた。でもそんな時は、管理者が何とかする。

何時が、一番苦しかったですか？ 

聞こえてる？ 12人の少女の物語

256 

日本の工場で、曜日を定めて軍人を相手にした時は、それでもまだマシだっ
た。だが、軍人だけ受け入れるのは、本当に大変だった。軍人は平日あまり来

ないが、土日に最も多く来る。昼間来た。夜は外出禁止があって、警備があり、
ほとんど来ない。

軍人の相手した部屋の構造憶えてますか？ 
ベッドがあって鏡が一つあった。「畳」部屋だったか、ベッドがあったか。(考える)

窓はなかったですか？ 
窓が後に一つあって。入って来る扉が一つある。

二階でしたか、一階でしたか？ 
二階にいた。入口があって、窓からは隣りも見えた。遠くに部隊も見えて。

満州で軍人の相手した時、一日の日課はどうでしたか？ 
軍人が来ない時は、家でお米から石を除く。机に並べて、小麦があれば、それ

もきれいにする。今はそんなことしないが、その頃は機械がないから。また違
う仕事をさせられたり、洗濯する人はする。誰の服か知らないが、洗濯物をた
たむ人はたたむ。

何時頃に起きましたか？ 
食事を8時か9時にする。

食堂が別にあるのですか？ 
台所に入ると、こう並んでいる。窯もずらっとかかっていた。入口に空間があっ

て、テーブルを置く。15人、20人集まって、ご飯を器に盛って分けてくれる。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

257 

朝ご飯の中味は何でしたか？ 

ご飯をくれて、おかずもある。食べる人は食べて、食べない人は食べない。軍

人が来て乾パンくれたら食べる。 乾パンやパンもくれる。

普通、夕方は何時に食べますか？ 
8時を過ぎて、夕食を食べる。客がいる人は食べられずに、置いてある。軍人が持

って来てパンを、食べる人もいる。最後にはおかずがなくなって、たくあん等で食

べるから、味噌汁とか水に混ぜて食べた。部隊でそんなのたくさん食べるだろ？毎

日、そんなのしかなかった。

軍人受け入れて、次の軍人が来るまで何をしますか？
風呂に洗面器や水道の蛇口があった。消毒薬(瓶の中に入った薬)少し取って、み
な洗い流す。女たちがずっと座って洗い水した。配給でくれたガーゼがあれば、
洗って干して、また使う。「サック」を使ったのも別に洗う。話にならない。

メンスの時は、どうしましたか？ 
軍人の相手はできないから遊ぶ。責任者も皆知っているから、お米から石を除
去していた。

メンスが終るまで休めましたか？ 
一月に一度休める、だから23日は相手させられる。

メンスしながら軍人受け入れる女もいましたか？ 
受け入れられない。なぜなら人の服についてしまうから。服を脱ぐと思っているの。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

258 

服は脱がないのですか？ 
軍隊式だから、そのまま下してする。服、脱いでする時間ない。軍人も脱がない。

一日に何人も来ないし、時間も充分なのに、何故そうしたのでしょう？ 
その人たちは非常がかかるから、服を脱げない。平和な時代なら脱ぐだろう
が。ウ～とサイレンが鳴ると、みな飛び出て行く。だから「服は脱げない」と言

っていたよ。飛行機が来たらすぐ行く。それが軍隊式よ。軍隊式で相手して、

軍隊式で行くのよ。「サック」はめて、すぐに抜いて行ってしまう。メンスがあ
れば、管理人に言う。「メンスだから、どうする」と話すと、「あっちに行って
違う仕事していろ」と言われる。

責任者が嫌がるでしょう？ 
米から石を選りわけるのは、大変だった。軍人の相手しない時は、そんな仕事
させる。とても大変で。目玉が抜け落ちそう、首が抜けそう。遊べないし、出て
行けない。逃げると人が追って来る。

一番多く聞いた日本語は何でしたか？ 

日本人が言う悪口。言うこと聞かないと、「朝鮮ピー」1)、「本当にしょうがない」
とか。「朝鮮人はどうしようもない」という意味。そう言って怒鳴られる。「しょう

がない、朝鮮ピー」だと罵声を浴びる。「朝鮮人は使い物にならない」と言われ
る。私はそう言われないように、必死に働いたけど、よくそう言われた。

1)「チョセンピー」の「ピー」は中国語で、女性の性器を意味する言葉。 日本軍は「慰安

婦」を民族別に「日本ピー」、「朝鮮ピー」、「支那ピー」と呼んだ。余舜珠(ヨスンジュ)

「日本軍『慰安婦』生活に関する研究」、『日本軍「慰安婦」問題の真相』、歴史批評

社、1997、121頁。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

259 

軍人が入って来て罵声を浴びせるのですか？ 
刀で殺そうとしたりする。みな刀を身につけて入って来る。

たくさん殴られたでしょう？ 
刀を身に着けて殴る、軍人たちは。命が賭かっているから、無理はできない。
何か言われても、じっとしていないと。

刀で殺された女性もいたのですか？ 
わき腹に刺さって。その女は話が下手な女で、平壌の女だった。口が下手で、何
か言ったら、腹が立ったのか、思いのままにならなかったのか。グサッ! わき腹を
刺された。出血して物凄かった。死んだらどうすると、恐くて憲兵を呼んだ。小

さなジープに乗せて行ったが、私がケガした時も、来た。病院で薬塗る時も、そ
の車で運んだ。

病院で女に病気があるのか検査するのですか？ 
注射をみな打った。検査の時、みな打つ。病気があってもなくても、お尻に打つ。病
気を予防する注射だと。

注射の名前分かりますか？ 
知らない。〔病気で〕病院に入ると10日くらいいた。行けばみな、注射打つ。慰
安所から行くと注射する。悪い菌がいないか、検査は徹底的にする。本当に世
の中でこんなことあるのか、完全に子宮から、あの穴の中まで見てくれる。病
原菌が移ったか、どうか。

軍人の相手をしても、お金くれないのですか？ 
お金は貰えない。お金って、何のお金くれるの。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

260 

労賃を後で計算してくれるという話も聞きませんでしたか？ 
そんな話一切なかった。後に朝鮮へ戻る時くれるとかいう、話もなかった。ご飯
だけは食べさせてくれる。出て行く期限だけは決まっていた。解放される年に、
送り出すと言っていた。出る日は決めていた。「お前ら、仕事したら、その時送っ
てやる。」そう言っていたが、そのうちに、やつらが降伏して、出て来た。

国がない時に生まれて、そんな辛い目に遭い、

自分の体までみな捨てて

　
ハルモニ、仕事しながら、具合の悪い所なかったですか？ 
股のつけ根を手術して、大変だった。こぶが（手で描いて）二つあった。脚が今

も痛む。手術をしてから私は、女を一生捨てた。そんな生活を始めて、直ぐ病気
にかかって手術して、子どもは産めない。そこにいて、出てから子ども産んだ人
も多いのだが。国を奪われ、私の体を捨てて、お金一銭も貰えず、半身不随にな
って帰って来て、本当に辛くて、佗びしい。私たちが国のない世に生まれて、悲
しみの中で自分の体まで捨てて。そんな体で、誰が結婚する、自分の良心がある
だろう。誰かと結婚する気、起きるかい？

こぶができたのはどうして知ったのですか？ 

痛くて、病院に行って発見した。「痛い」と訴えたら、責任者が連れて行った。病院
の人が北朝鮮の人なのか、韓国の人なのか。私が「痛い、痛い」と言うと、「少しだ

け我慢しろ」と。一日、二日ではなく、とても苦労した。夏の暑い時で、その辛さは
口では言えない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

261 

病院で医者が、ただ「こぶだ」と言ったのですか？ 
横根。今、韓国でも横根と言うじゃない2) 。両側にこんな塊ができて、自分でも
分らない。

子宮からこぶを取り出す手術受けた時、病院費は誰が出しましたか？ 
それは責任者が、みな出した。

責任者から後で、「金返せ」と言われませんでしたか？ 
私が体で働いているのに、それがみなお金だよ。

日本の医者が言う言葉を聞き取れましたか？ 
うん。できなければ、韓国人が一人いるし。一緒にいたから、日本語を早く覚
えた方だ。自分たちの使う言葉は、早く覚えた。体が痛ければ「ここ、痛いで

す」と言うと、「そうか、病院に行こう」と言われる。雪が降ると、「今日は雪
が降りますね」、「雪が降るから気を付けろ。」そして早く覚えた。

他の病気にかかったことはありませんか？ 
なかった。消毒して病気を予防するから。サックせず、そのまました女は、病
気にかかる。私は少しでも変なら、病院に行く。「病院に行く」といえば、大歓
迎だ。自分の所に来る客に、病気を移さなくするから。

軍人と日本語で話したことありますか？ 

自分の知っている単語だけ話す。「私は捕って来た」とか、そんな話をする。

2) 横根 :上腿のリンパ腺が腫れる症状。性病と同時に現れる症状。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

262 

「ああ、そうか、可哀想だな」と言ってくれる。

ハルモニが憶えている吉村はどんな人でした？ 
お父さんが学校の先生だとか。軍人だが、完全に紳士だった。軍隊の合羽脱い
で、「可哀想だ」と、私に被せてくれた。

誰が殴るのですか？ 
他の人だ。私が体悪くして、「もう、あんなことしない」と逃げた。捕まって戻って

から、「お前死にたいのか」と、朝鮮語で言われた。頭がこうやって、へこんでしま
い、また殴りつける。私の姿を見て吉村が合羽で覆ってくれ、「病院に行け」と言っ
てくれた。「あなたが軍隊で、もしひどい目にあったらどうするの」と聞いても、「大
丈夫だ」と私を助けてくれた。

吉村はハルモニの所に、しょっちゅう訪ねて来たのですか？ 
はい。私が「可哀想だ」、「早く朝鮮に帰れ」と。

階級は何でしたか？ 
星三つだよ。偉い人のようだった。とても教養があって礼儀正しい。私が病院
から出て来ると、「通院して治療受けているか、どうか」必ず聞かれた。下っ端
に「ケイチャン、どうなったか」と。吉村という人が、私を見て、合羽で覆って

くれ、血を止めてくれ、「病院に早く行け」と送ってくれたことを思い出す。

満州に何数年いて解放になりましたか？ 解放はどうやって知ったのですか？ 

1年半、そこにいたよ。ラジオも放送したから、解放は直ぐに分かった。市内が突然さ
っと静かになって、日本人が往き来しない。日本人はソ連人に捕まるから隠れてしまっ

た。私たちは捕まらないようにと、帽子かぶって「コリア」と書いて貼った。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

263 

管理していた日本人はどこへ行ったのですか？ 
その人たちは皆、一緒にいたよ。船に乗る日まで待っていた。私たちは恐ろし

くて一ヵ所に固まって出られなかった。すると寄宿舎で、ある姉さんが、「埠

頭に行けば朝鮮に行く船がある」と言う。それで目がパッと開いた。「あなた
は南に行くのでしょう。私は北に行かなければならないが、一緒に行くか。一
旦、乗ってみよう。北へ行く船があるかも知れない」と言われた。

その姉さんと一緒に船を探したのですか？ 
夜、帽子を被り、頭にピンをして男の恰好で行動した。太極旗を付けていないと日本
の奴と間違われて、捕まるから。中国人の人力車から降りると、どこかから朝鮮語が聞

こえた。私が「私たちを連れて行ってくれ、お金を上げる」と言うと、

「お金は考えなく

て良い。出て来られるのなら、乗れ」と言われた。そうやって朝鮮人と知り合った。

>>> 

1944年9月、中国雲南省拉孟(ラモウ)で尋問を受け朝鮮人慰安婦、VAWW-NET 

Japan、『「慰安婦」、戦時性暴力の実態Ⅰ-日本・台湾・朝鮮編』、緑風出版、2000、
285頁収録の写真。日本軍の占領地を再び占領した連合軍や中国軍が、日本軍に捨
てられた慰安婦を発見したりした。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

264 

人々が服に太極旗を付けていたのですか？ 
服にコリアと書いて。「親元に帰りたいのに、行く方法がなくて行けない。どう
か助けて下さい」と言った。するとおばさんが「明日の何時になれば、ここに
塩を積みに来る船がある。お金を準備しろ」と言った。それで一緒に行って船
長と話した。

そのおばさんが船に乗れるように斡旋してくれたのですか？ 
晋州から来たというおばさんは、お金をたくさん持っていた。「お金は一銭も
無い」と言うと、おばさんが切符2枚分のお金をくれた。

そのお金で韓国へ行く船に乗ったのですか？ 
船長が「女は乗せない」と言う。「塩を積んで行くから乗せないと」。行く所
がなくてどうしたらよいか分からず、ソ連の奴は行き来するし、目の前が真っ
暗になった。船長にひざまずいて、事情を話したら、「絶対に女の恰好をする
な。帽子を被って、スカート穿くな」と言われた。

船に何人乗りましたか？ 
私たち女３人と船長、船員の男３、４人、だから皆で8、9人。小さい船だった
が、途中で、船がひっくり返った。皆で水汲み出して、船酔いして嘔吐して、や

っと麗水まで着いた。

満州から麗水まで何日かかりましたか？

10日はかかったようだが、ハッキリ憶えてない。船酔いで飯も食べられないし、水
しか飲むものがなく、フラフラだった。麗水に来ると警察が乗って来て、「みな調

査する」と言われ、一部始終みな話した。警官がたくさん来て、一人ずつカバンの

中までみな調べた。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

265 

麗水からすぐに故郷へ戻りましたか？ 
出て来て、やたら「万歳」を叫んで。あれほど殴られて病気にもなって、朝鮮
に戻って来て、誰かに話せた。すぐ母の所に行った。
家に1年数ヶ月いたら、「顔がきれいだ」と、見合いの話が入って来た。私は

「あんなひどいことして来て、なぜ嫁入りできるか」と、一切、行かなかった。

帰って来た時は、21か22歳になっていただろう。

数年間便りもなくて、家族はどう思っていましたか？ 
連行されて「死んでいた」と思ったようだ。日本人が捕まえて行ったことは、工場

で聞いて知っていたから。当時、どれくらい悲惨な目に遭ったか、兄が日本に連行
された時も、日章旗振って行ったとか。「死ね」と言われたら、死んで。「弾丸を作
るから」と茶碗や洗面器までみな奪って行くので、柿の木の下に埋めて隠した。

村の人たちに、「どこへ行って来た」と聞かれなかったですか？ 
みな、聞くよ。だけど「そんな所に行って来た」と言えないから、ただ「工場に
行って来た」と言ったよ。

お母さんにも話さなかったのですか？ 
母にどうやって話す。母も知らないうちに捕まって、私のために病気になり、たく

さん泣いたのに。(辛さがこみ上げ、しばらくの間、むせび泣く)　どちらにせよ、私
が口を閉じて何も話さなかった。病気になって具合が悪くて、嫁にも行けず、他の

人のように堂々と生きられず、常に他人に面倒になって暮すのが、あまりに辛い。
私はなぜ、こんな時代に生きて、こうなったのか。誰にも弟にも、この話はしなかっ

た。この傷も、私が「誤ってケガをした」と、「焜炉で火傷した」とウソをついた。で
も今も後遺症で痛む。こんな話、誰にもせずに死のうと思ったが、今度、自分でも

分らないが、勇気が出て区役所に行って聞いてみた。絶句するような話で、とても

聞こえてる？ 12人の少女の物語

266 

面談日 : 2005年3月21日/ 2005年3月24日
面談者 : 金ミジョン、朴勝美

録音文入力・編集 : 禹栄頌
録音文校正・校閲 : 李宣姈・尹智炫

腹が立つ。全身みな痛い、痛くない所がない。

ハルモニ、次に生き還ったら、良い所に生まれて下さい。
マリア様、私はあまりにも哀れで孤独な人だから、この世の終わりには少し良
い所に連れて行ってください(と祈る)。

I ○○  1923年生れ

1940年頃、

慶尚南道から動員される。釜山で船に乗り、台湾に移動。
台湾の基隆(キールン)(台湾北部の港湾都市)所在の日本軍部隊の
近辺へ 5年間、日本軍慰安婦生活

1945年8月
解放後、

帰国

動員経路

日本軍「慰安婦」 口述記録集

269 

母が「なぜ、娘を連れて行くのか」

とつかみかかっても無駄。

無理矢理、連れて行かれた。

ハルモニ、思い出すままにお話されれば良いですよ。
そこで苦しみ味わったこと…今、話そうと思う。家では、子どもたちが供出さ
せられるという話を聞いて、うちの母は嫁がせようと思ったのに、無理矢理、
連れて行かれた。「嫁に行く」と言われても、「嫁が何なのか」知らなかったの
に、連行された。母は私がどうなったのか分からず、病気になった。

I ○○  1923年生れ

1940年頃、 慶尚南道から動員される。釜山で船に乗り、台湾に移動。

台湾の基隆(キールン)(台湾北部の港湾都市)所在の日本軍部隊の
近辺へ 5年間、日本軍慰安婦生活

1945年8月
解放後、

帰国

第10話

再び女に生まれて、恨を晴らしたい。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

270 

行く前は、家でどう過ごしていましたか？ 

田舎娘が何かすることある? ヨモギや草むしっていて、強制的に連れて行かれた。

両親は何をされていましたか？ 
野良仕事！ 農業で、やっと食いつないで…。農業していても日本人がみな奪って

しまって、まともに食えない。戦争する飛行機に補充すると、茶碗や真鍮の器、

スプーン等、みな奪い取る。

その時、何歳でした？ 

18歳。

どのように連れて行かれたのか、もう少し詳しく話してください。 

家にいたら人が来て、強制的に連れて行くのよ。

その人とは、誰ですか？ 

日本から来た人なのか、何か言っても日本語だから聞き取れなかった。

服はどんなでしたか？ 
洋服を着ていた。

何人ですか？ 
二人。

その日本人はハルモニの家をどうやって知ったのでしょう？ 
みな供出しようと、郡ごと探して娘たちを連れて行く。部落を尋ね廻り、息子

日本軍「慰安婦」 口述記録集

271 

や娘がいると皆、連れて行く。助かる道がない。

ハルモニの家に娘さんがいることが、なぜ判ったのですか？ 
あちこち回って話を聞くのよ。どこに行ったら娘がいる、とか。その頃は、里長
(村長)を通して来る。ただ探しても、分からないから。

里長にハルモニの家のこと、密告されたのですか？ 
昔は、里長でなく、区長といった。密告しなくても、「どこそこに娘がいる」と、無
条件に来るのよ。

何といって連れて行くのですか？ 

「良い所に連れて行く」と言って連行するのに、どうする。

ハルモニのお母さんは、その時いなかったのですか？ 
母は台所仕事をしていて、私は牛の尻尾切って、ただ家の用事をしていたら、
見知らぬ人が二人ズカズカと入って来た。母も「なぜ娘を連れて行くのか」と
つかみかかっても無駄で、強制的に連れて行かれた。男と女が来た。男は洋服
着ていた。二人が日本語で話すから、田舎育ちの私たちは分からなかった。

二人はどんな関係のようでしたか？ 
あいつらだけで日本語で話すのに、分かるかい。

ハルモニその時、日本語を少しはできましたか？ 

日本語、少し使ったが、みな忘れた。「ご飯、食べたか。来い、行こう。」こん

な言葉は使った。ああ、話にならない、あんな苦しみ、どこにある。通り過ぎた

聞こえてる？ 12人の少女の物語

272 

歴史だ。

その人たちの齢はどれくらいでしたか？ 
分からない。その時、私は幼くて、あいつらの齢がどうなのか判らない…。あ
いつら同士、「ああだ、こうだ」と言いながら、私を連れて行こうとする。私は

「行かない」と泣いて駄々をこねたが、「良い所に行かなければならない」と

連れ出した。

その時、他の兄弟はいなかったのですか？ 
姉はもう嫁に行っていた。私も嫁がせようと考えていて、そうなった。腕をや
たら引っ張って行く。なので、うちの母が「どこへ連れて行くのか」と止めた
が、「工場へ、良い所に入れてあげる。そこでは人が足りないから、連れて行

くと。」と言う。

何の工場ですが？ 
何の工場なのか、知らない。二人が連れて行くという口実だけだよ。そんな

「むさくるしい所に行く」なんて言えるかい。それだけだよ、他にない。

突然、家に来て、「工場に就職させてやるから行こう」と言うのですか？ 

「良い工場に入れてやるから、行こう」と言う。

「行かない」と言いませんでしたか？ 

私が「行かない」と言うと、「田舎の片隅なんかにいないで、良い所に行け」と
連れて行く。どうするつもりか、ああだ、こうだと、強制的に連れて行かれた。
それだけで、他にない。

日本軍「慰安婦」 口述記録集

273 

何月頃か思い出しますか？ 
何月かは分からないが、暖かな服は着ていなかった。薄着で行った。だから春
だったのか…。今も分からない。服は厚着でなかった。

どこへ連れて行かれたのですか？ 

車に乗せられた。昔、ジープと呼んだ黒い車だった。車が来て、手を挙げて乗

った。

周囲に助けを求めませんでしたか？ 
人がいてくれたら、「助けてくれ」と言うが、運転手とそいつらだけしかいな
い。

乗ってどこへ行きましたか？ 
乗って、晋州に行った。

晋州になぜ寄ったのですか？ 
晋州の子たちも強制的に連れて来たようだ。4人が連行された。山清郡(サンチ

ョングン)の子と晋州の子、私と統営(トンヨン)の子。埠頭に釜山水上警察署が

あり、連絡船に乗った。

晋州の子を連れて来たのは、他の人ですか？ 
みな、同じ人たち。

晋州の子は、どんな子か思い出しますか？ 

どんな子か知らない。田舎娘なので聞くこともできず、泣いてばかりいた。

聞こえてる？ 12人の少女の物語

274 

ハルモニより年上？年下？ 
同じ年頃だろう。山清の子は不細工だった。それでも連れて行く。

山清の子には、いつ会いましたか？ 
みな、同じ車で行った。その人たちが釜山で、旅館かどこかに一日眠らせた。

晋州や統営の子たちの名前は思い出せませんか？ 
昔のことで分からない。日本の名前も分からない。

その子たちは最後まで一緒にいましたか？ 
途中で具合が悪くなって、どこかへ送った。死んだだろう、あんな苦しみを…。

旅館で一日寝たのですか？ 
4人で寝た。私たちは「死に場所に行くのか、生きられる所に行くのか」、互い
に見つめて合って泣いた。

旅館の名前、思い出しますか？ 
何も分からない。田舎から出て何が分かる？最近ならテレビもあるが…。昔の田舎
娘は、村で飯食って、ヨモギ採って、牛の尻尾切って、他には何も知らない。

ハルモニ連れて行った人たちは、どこで寝ましたか？ 
その人たちは小さい部屋で寝ただろう。

逃げたらどうするつもりだったのでしょう？ 
女は私たちと一緒に寝た。